空が夕焼け色に染まっていく。
辺りがだんだんと暗く染まっていく中、秋乃は二人を遊園地の中の人気のない場所へと連れて行く。
ガヤガヤと絶え間なく人の声が聞こえていた遊園地の中でも、こんな場所があるのだな…というぐらい、そこは静かで閑散とした場所だった。
と、ピタリと秋乃はそこらで足を止める。
もう、三人以外の気配もなく、声も遠くからしか聞こえてはこなかった。
「…それで、何なんだ? 話したいことって」
彗は、秋乃に問いかける。
こんな場所でも、彗の態度は変わらない。
何故、自分がこんな場所まで連れてこられて…しかも、よりにもよってこんなに静かな場所なのか…。
そう、未だに彗は秋乃の目的を分かってはいなかった。
と、そんな中…
「先輩…」
振り向いた秋乃の表情が真剣味を帯びる。
ゴクリと喉がなった。
…秋乃の表情はいつもと違う…。
そう、何かを決心したような…そんな感じに見て取れた。
「…先輩は、何を悩んでいるんですか?」
「「え?」」
彗だけではない。
隣にいた円花も、同時に声を上げた。
秋乃の口調は…まるで彗の心底を見抜いたかのような言葉だった。
彗はギクリとするが、顔には出さない。
「…別に。気のせいじゃないか?」
秋乃から視線を逸らす。
…だが、その行為は認めたも同然の行為だった。
そして、悩みの対象は…
(…私のことで)
円花はすでに自分で感じ取っていた。
彗が何を考えているのか…何について考えているのかを。
そして、その対象のほとんどは…自分のことであるということも。
「先輩は…死之神先輩のことが好きなんですよね?」
彗と円花、二人の喉がゴクリとなった。
…秋乃は、かなりのことを見透かしている。
そして、それを彗の悩みの解消に向けようとしている。
彗は、ふと円花のほうへと自らの視点を下ろす。
震えていた…。
何かに怯えるように…。
…そんな円花の様子を見て、彗の心は吹っ切れた。
「…あぁ。好きだ」
「…!!」
近くで円花が息を呑むのが分かる。
もう、引けない…。
しかし、嘘をつくことはできない。
今、嘘をつけば…円花が壊れてしまいそうだったから…。
秋乃は…特に反応することもなく、はぁ…と一息つくと言った。
「それじゃあ、何を悩んでいるんですか?」
「…それは」
彗は口ごもる。
だが…ゆっくりとその口を開いた。
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