「死之神先輩」
 秋乃が円花の姿を発見して、声をかける。
 円花も顔を上げて、秋乃の姿を視界に捉えた。
「秋乃さん。何ですか? 話したいことって」
 円花の顔に、もう怯えや悲しみの色は覗えない。
 先ほどの彗の行動で、円花の心は完全に安定したようだった。
 それどころか、勇気すら円花には宿っていた。
 秋乃は、そんな円花の様子を見て…全て感じ取ってしまった。
(彗先輩…)
 思わず、自分の想い人のことを思い出す。
 円花が悩んでいたことは、誰の目にも明らかだった。
 …ただ、それを誰も相談することが出来なかったというだけ。
 理由は簡単だ。
 それが、彗本人しか解決することの出来ないものだったから。
 だが、今の円花の目にはすでに悩みというものは感じ取れない。
 悩みがなくなった。
 つまり、彗が円花の悩みを無くすような行動をした…ということになる。
 そして、その行為がどんなものなのか…ということを秋乃は理解していた。
「…いえ、やっぱりいいです。」
 もはや、彼女に嫉妬心を抱くことはあまりない。
 …最初から、二人の様子が違っていたことには気付いていた。
 円花は、彗しか頼る相手がいないわけだし、彗も…自然と円花へと視線を向けてしまうようになっていたからだった。
「え?」
 秋乃の言葉に、思わず円花は驚いた。
「…今の私に言えることはもうありませんし…。その代わり、死之神先輩」
 目を真剣にして、秋乃は円花を見つめる。
 円花も視線を逸らすことなく、秋乃を見つめた。
「何ですか? 秋乃さん」
 …無理だと分かっていても、諦めるなんて出来ない。
 それが女の意地だ。
 惚れた相手には、たとえ彼女がいたとしても…当たって、玉砕覚悟で突っ込んでやる。
「…彗先輩のこと、諦めたつもりはありませんから」
 秋乃の言葉に、円花は言葉を失ったが…すぐに
「私だって、彗さんと一緒にいられるようにがんばります。…彗さんは私のものです。誰にも取らせはしません…」
 バチバチと火花が散りあう。
 …やっぱり、この人とは…こうでなくてはいけない。
 互いに競い合って…一人の男の人に認めてもらうために。

終了

…長かった。うん。とっても長かった。
…今度、一気に日記の作品をサイトに展示しますが…長編がこれほど大変とは…。しかも、終わり方…微妙ですし。
…うむ。努力あるのみだ。…これからもがんばります。ではでは