長い時間が経ってしまったが、俺たちはようやくガルシアたちを抑えることが出来た。
ガルシアは捕まった後、相当の処罰を受ける予定だったが、そこは俺やアルド、マリエッタたちが来る日も来る日も上層部を説得して、何とか謹慎処分にまで処分を軽くすることが出来た。
『ありがとう。ライル』
謹慎処分を受けたガルシアは、俺にそう言って教会を去っていった。
ガルシアがどこに行ったかは分からないが、恐らく今も元気に暮らしているだろう。
ガルシアと一緒にいた神無は、薙刃たち三人集(特に迅伐が)、俺たちと同じように必死に説得していて、それが実ったのか、神無は『一緒に同行してはいたが、ガルシアが利用していただけで、自分からこのようなことを行ったとは考えにくい』という上層部の判断で、神無はほぼ無罪になった。
俺となっては、ガルシアのことを悪く言う判断だったため、あまり嬉しくないものだったが…薙刃たちの喜び様を見ていたら、仕方ないことだと俺は割り切ることにした。
そんなある日、教会から俺に召集がかかった。
(何の用だろう?)
ガルシアの行動は阻止できた…。
だとしたら、何で呼ばれるんだ?
疑問を持ちながらも、俺は教会へと向かった。
その途中で、アルドの姿を見たので、俺はアルドに声をかけた。
「アルド、久しぶりだな。」
しかし、アルドの反応はいつものようなからかいの入ったものではなかった。
「先輩…」
アルドは信じられないものを見たかのような目で、こちらを見た。
しかし、何故アルドがそんなに驚いているのか俺には分からない。
「どうしたんだ? 人の顔を見るなり…」
失礼な奴だな…とアルドに言いかけた次の瞬間だった。
俺の声を遮るように、アルドは言った。
「どうして、ここに来たんですか」
アルドは怒ったような、はたまた何かに絶望したかのような声で、俺に言った。
「…どういう意味だ?」
分からない。
どうして、アルドの視線、そして声がそんなに冷めているのか。
「分からないんですか? 先輩はここに来たら…」
と、アルドが言いかけたとき、もう一人の声が俺にかかった。
「ガルシアの件、ご苦労だった。ライル・エルウッド」
俺は声のした方を振り向く。
そこには大柄な男、風貌からして偉い立場の人間だということがすぐに理解できる。
「いや…、実際は時間がかかりすぎたし…」
「いやいや、気にすることはない。ガルシアの罪を止めることが出来たのは、素晴らしいことだよ」
大柄な男は俺にそういうが、正直あまり嬉しくなかった。
ガルシアにだって、ちゃんと目的があったからこそ、あのような神殺しをしていたのだ。
それを何も知らない第三者が、ガルシアのことを侮辱するのはさすがに許せなかった。
「ところで、ライルくん」
大柄な男は、まだ俺に話しかけてくる。
そろそろ終わりにしたかったので、適当に流そうと思った。
「ここに来たということは、そろそろ、戻ってくるということだね?」
「え?」
話を流すことなんて出来なかった。
(あ……)
そして俺は、気付いてしまった。
俺は、ガルシアを捕まえるために派遣され…薙刃たちと一緒に暮らすことになった。
そして、ガルシアは捕まった。
つまり…俺は、もはや薙刃たちと一緒に暮らす必要性はまったく無くなってしまったということになる。
考えてみれば、当たり前の話。
なのに…今まで俺が気付かなかったのは。
(この生活が当たり前すぎて…手放したくなかったんだ)
しかし、俺は気づいてしまった。
そして、気付く。
彼女たちとの別れのときが、刻々と近づいてきてしまっていることに。
続く
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