二人で手を繋いで石段を降りる。
 その手は、自然と絡み合って、強く結びついていた。
 まるで、二人の心の絆のように。
 そして、石段の下には鎮紅と迅伐の二人の姿が見える。
 迅伐はジーッとライルたちを見ていたが、鎮紅はふふっ。と微笑みながら、ライルたちの様子を見ていた。
「どうだったかしら? ライルくん」
 石段を完全に降りきると、鎮紅はライルに問いかける。
 上であったことが、鎮紅には分かっているような気がした。
「…ありがとな。鎮紅。機会を与えてくれて…」
 ライルのその言葉を聞くと、鎮紅は安心したような笑みを浮かべた。
 ひょっとしたら、鎮紅の中で、予想した何かが確信した何かに変わったのかもしれない。
「私は何もしていないわ。決断をしたのは…ライルくんでしょ?」
「…そうだな」
 ライルは、チラリとすぐ隣の薙刃へ視線を向けた。
 自分に決断するきっかけをくれた。
 そして、手放したくないほど大切な存在。
 しかし、肝心の薙刃は、キョトンとした視線をライルに向けた。
「? ライル?」
 やはりこういうところは、まだ幼い部分が多い。
 でも、それが薙刃のいいところでもある。
 こういう部分があるからこそ、自分は自然と付き合っていられる。
 でも、しっかりとした部分も薙刃には存在する。
 だから、きっと心から信頼できるんだ。
「薙刃、俺に決断する勇気を与えてくれたのはお前だ。ごめんな、5日間、お前に辛い思いをさせて…」
 すると、薙刃は笑顔で言った。
「ううん。もう気にしないでいいよ、ライル。私、さっきのライルの一言で満足だもん」
「…そうか。…ありがとな」
 ライルは小さくフッと微笑んだ。
 薙刃も、それを見て笑う。
 そこに先ほどまでの雰囲気は存在しない。
 不安がなくなった、と言えば、嘘になる。
 決断をするのがあまりにも遅すぎた、と後悔があるといえば、ある。
 でも、そんなことはもう言ってはいられない。
 もはや、時間は限られている。
 だからこそ、ライルたちはそんなことで止まってはいられない。
 前へ、前へと、壁も恐れずに突き進まないといけなかった。
「ライルくん、帰りましょ? 私たちの家に」
 二人の様子をしばらく眺めていた鎮紅が、二人に言った。
「あぁ…。そうだな」
「うん」
 ライルと薙刃は頷く。

 私たちの家…。
 俺は、果たして2日後、そこにいられるのだろうか。
 しかし、もう立ち止まってなんかいられない。
 心強い仲間だってできた。
 もう、逃げない。
 たとえ、無理だと分かっていても、階級の差がどうにもならないとしても…諦めてたまるか。
 …俺は、この大切な場所を、失いたくない。


続く


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