あれからライルは、町の人々に薙刃を見ていないかと聞いて回っていた。
 助かったことは、薙刃はパン屋で働いているせいか、結構顔が知れ渡っていて、たくさんの人たちが「薙刃を見かけた」と言った。
 そして、彼らが揃って指を指す方向。
 それは薙刃が走って向かっていった場所。
 …そこはライルが一人悩んだことのある神社だった。

「薙刃…」
 薙刃は比較的簡単に発見することが出来た。
 神社への長い石段の途中で、薙刃は一人ポツンとそこに座っていた。
 ライルは薙刃に声をかける。
 薙刃はチラリとライルを見たが、すぐに視線を外してしまった。
 思いっきり、避けられてるな…。
 と、ライルは薙刃の様子からすぐにそれを感じ取った。
 仕方ないな…とライルは一人思う。
 例えば、幼い頃、自分だけを置いて親がどこかへ行ってしまったとする。
 ライルに両輪はすでにいない。
 だが…きっと分かる。
 子供は、きっと泣いて止めようとする。
 行ってほしくないと本気で願って、親にしがみつく。
 今の薙刃の状況はそんなものなのかもしれない。
「薙刃、暗くなってきたし…とりあえず帰るぞ」
「……」
 薙刃は何も答えない。
 薙刃を説得できるのは、ライルくんだけ…。
 などと、鎮紅たちは言っていたが…。
「……」
「……」
 互いに沈黙が流れる。
 どういう話題で話せばいいのか、分からない。
 …ライルは悩む。
 と、そんな中、薙刃が口を開いた。

続く


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