「ライルは変わった」
「あぁ。自覚してる」
 リタとライルは隣り合って話す。
 昔はよく一緒にいたけど、そんなに話さなかった。
 そして、こっちに来てからは二人の間には気まずい雰囲気が流れて、会話どころか目を合わせることすらあまりなかった。
 最近は、少しずつ改善されてきたが、こうやって二人だけで話すことなんて滅多になかった。
 だからこそ、二人は古き思い出を語る。
 意識をして話しているわけじゃなく、自然と思い出が浮かんでくる。
「昔は、本当に誰とも接しようとしなかった」
「そうだな。俺はガルシアに会うまでは、誰一人友達はいなかった」
「アルドや私もいたのに」
「何ていうか、そのときはアルドもリタも他の奴らと一緒に見えてたのかもしれないな」
「失礼ね」
「反省してる」
 嫌だったこととか…
「でも、ずっとライルは私の目標だった」
「…あえて言われると、恥ずかしいな」
「いくら勉強しても追いつけなかった」
「でも、リタはがんばってただろ?」
「追いつけなきゃ意味がない!!」
「わ、悪い」
 大切だったこととか…。
 色々なことが二人の頭に思い出されていく。
 薙刃にも、鎮紅にも、迅伐にも、マリエッタにも話すことが出来ないこと。
 同じ時、同じ場所で学習をしてきた二人だからこそ、言いたいことはいくらでもあった。
「でも、やっぱりまだ追いつけてない」
「? 情報処理だったら、お前の方が優秀なんじゃ」
「それはライルがこっちに進まなかっただけ。こっちに来ていたら、私はきっと追いつけていない」
「うっ…。リタは、自分を過小評価しすぎだと思うんだが」
「…ライルに言われたくない」
 そして、それは現在にも受け継がれる。
「だから、ライルには負けない。負けたくない」
「…変わってないんだな。リタは」
「そんなことない。ここに来て、私も変わった」
「そりゃ、よかった」
「ライルは変わりすぎ」
「…後悔はしていない」
「うん。分かってる。見れば分かるもの」
「うっ…」

終了