「ライルくん…」
 ただ一点にライルを見つめる鎮紅。
 おかしい。いつもの鎮紅はこんなんじゃない…。
 いつもどこか抜けていて、時には大人らしくキリッとした態度を取る女性。
 しかし、そんな大人らしい態度を取っているときの鎮紅とは、違った姿だった。
「ど、どうしたんだ? 鎮紅?」
 射抜かれるような視線に、ライルも動揺してしまう。
 だが、次の瞬間の言葉に…ライルの思考は停止する。
「好きよ。ライルくんのこと…」
「え?」
 呆然としてしまうライルに、鎮紅は言う。
「ごめんなさい。こんなこと言っても、困るだけだと思うんだけど…」
 鎮紅は、申し訳なさそうに言い、顔を伏せた。
「い、いや、そうじゃない! そうじゃないんだが…」
 慰めようと言葉を考えるが、案の定ライルはこういう状況は初体験だった。
 そのせいか、言葉がうまく続かない。
「ライルくん」
 どうすればいいんだ。と、考えているうちに鎮紅がライルに近づく。
 そして、そのままポスンッとライルの胸へともたれかかる。
「……し、し、し…」
 いきなりのことで、ライルは口をパクパクと動かすことしか出来ない。
 そんなうちに、ライルの背中に鎮紅の腕が回される。
 ライルの顔は真っ赤に染まり、もはや冷静でいることは不可能に近かった。
 鎮紅から伝わってくる様々なものが、ライルの理性を少しずつ削っていく。
「し、鎮紅。と、とりあえず離れてくれ。頼む…」
 ライルは頼むが、鎮紅は弱々しく言った。
「…ごめんなさい。でも、少しの間…こうさせて」
「ッ……」
 鎮紅の言葉を聞いて、ライルは何も言うことが出来なくなった。

続く