「まぁ、それでいいんじゃない?」
 マリエッタの答えはそれだった。
「本当にいいのか? それで」
 マリエッタの答えに、ライルは戸惑いを感じた。
 マリエッタには、きちんと全部を話した。
 鎮紅に告白されたこと。
 家族愛と恋の違いが分からないこと。
 そして、鎮紅に対する何らかの違和感のことも。
 それはマリエッタは…
「それでいいんじゃない?」
 と、簡潔に答えたのだった。
 真剣に悩んでいたライルが、これに戸惑いを覚えないはずがない。
「あのねぇ…、実際は異性になんか相談することじゃないのよ。これは」
 マリエッタは呆れたように言った。
 理由が分からなかったのか、ライルは首を傾げる。
「どうしてだ?」
「あー、はいはい。…じゃあ、例えば、ライルに好きな人がいたとするでしょう?」
「あ、あぁ」
 マリエッタの突然の例え話に戸惑いながらも、ライルは頷く。
「例えば、その子がライルに『〜くんに告白されたから困ってる』なんていわれてみなさい。あんた、いい気分になれる?」
「絶対になれないな」
「つまり、そーいうことよ」
 結論付けたマリエッタに、ふとライルが思いついたことを言う。
「それじゃあ、俺はマリエッタに相談するべきじゃなかったのか?」
 マリエッタはキョトンとした表情に変わったが、即座に意味を判断し答えた。
「大丈夫よ。私があんたに対して持ってる感情は家族愛みたいなもんだから。…そうね、まぁ、薙刃に相談しなかったのは合格かしらね」
「? どういう意味だ?」
「あー、分かんないならそれでいいわよ」
 はぁ…と小さくマリエッタはため息をついた。
「とりあえず、無理に結論付けることじゃないわよ。そんなことしたら、返って鎮紅を傷つけることになるわ」
「……」
 マリエッタの言葉を、ライルは無言で聞く。
「だからね、鎮紅の気持ちをちゃんと受け取って…このままの関係がいいのか、それとも…ゆっくりと関係を作っていきたいのかを決めなさい。仲間か恋人じゃないといけない、わけじゃないんだからね」
「分かった…。ありがとな、マリエッタ」
 ライルがマリエッタにお礼を言うと、彼女は少し照れながら
「れ、礼を言われるほどのことを言ったつもりじゃないわよ!!」
 と、言い返した。
(第3の答え…か)
 ライルの中の迷いが少しずつ…薄れていった。
 答えを出せるまで…もう少し。

続く