ライルが悩みに悩んでいるころ、鎮紅は自分の部屋でボーっと考え事をしていた。
 いや、考え事というよりは思い出を振り返っている。という表現の方が正しいかもしれない。
 ライルに始めて会ったとき…。
 あの頃は、薙刃たちしか信じることが出来なくて…、ライルくんには酷い振る舞いをしてしまった。
 仕方がなかったといえば、その通りだった。
 あのときの自分は疑心暗鬼の塊みたいなもので、何もかもが信じられなくなっていたから。
「でも、そんな私に、もう一度信じるということを教えてくれたのは…ライルくんなのよね」
 最初は、死んでもいいと思っていた。
 でも、そんな私に対してライルくんが言った一言が今でも心に残ってる。
『死んだら全部終わりなんだぞ!』
 ライルくんは、かなりのおせっかいだった。
 だから、思ったのかもしれない。
 この人を信じてみよう…。って。
 それからは、毎日のように私が迷惑をかけているけど、皆は笑って許してくれる。
 そんな当たり前の日々が楽しくて…楽しくて。
 …きっとライルくんに会っていなかったら、今の私はいない。
 ライルくんは、大したことをしたつもりじゃないのかもしれないけど。
 言葉じゃ伝えきれないほどの感謝の気持ちを私は持っている。
 でも、いつからだったんだろう。
 その気持ちが…感謝以上のものになったのは。
 抑えよう、抑えようとしても…思いは日に日に強まっていくばかりで。
 だから、もう抑えきれなくなって思わずライルくんに伝えてしまった。
 でも、今考えれば…それは間違いだったのかもしれない。
 こんな楽しい日々が…終わってしまうかもしれないという不安があるから。
 ライルくんのことは好き。
 でも…今までと同じ、家族のような関係としても過ごしていきたい。
 …なんて、私は欲張りなんだろう。
 言ったのは私なのに、答えを出すライルくんに無茶なことを求めるなんて…。
 ライルくんの答えを聞くのが…少し怖くなった。

続く