『俺がお前を守る!!』
『私があんたを守る!!』
それは遠い日に交わしあった二人の約束。
危険な目にあっても、ずっとそばにいてくれた彼女。
あの言葉に今も嘘はない……。
彼は、ずっとあの言葉を胸に毎日を過ごしてきた。
そして彼女は……、あの約束を覚えているのだろうか……。
*START―あの日の約束―* そして始まる日々 第一話
ここは、とある町のとある歩道。
季節は夏。蝉の泣く声がそこらじゅうから聞こえ、空からは太陽がサンサンと照りつけてくる。
そして、その道をゆっくりと歩く白い長袖のカッターシャツを着たボッサボサの緑色の髪の少年の姿が一つ。
眠たそうにあくびをしながら歩いているこの少年の名前は、植木耕助。
この付近にある、とある高校の3年生である。
学業は至って普通。容姿も美男子の分類に入ると言ったところだろう。
まぁ、外見からしてみれば、どこにでもいるごく普通の高校生。
だが、実際のところ、彼はごく普通の人間ではない。
その正体は、この世界とは別空間にある天界。いわゆる、神の住む国である。
植木は、そこの住人。いわゆる天界人という分類に入る。
だが、植木は望んでこの世界に来たわけではない。
植木がまだ幼い頃、天界から地上へと親の手によって落とされたのだ。
そして、その後地上で今の父である植木源五郎に拾われたのである。
そして、彼は数年前、中学生同士の神を決める戦いに参加した。
最初のうちは、彼はそんなことには興味を示さなかった。
だが、色々な仲間や好敵手に会い、植木の心は変わっていった。
そして、何度も自らの死の寸前に直面した。
だが、今はまったくそんなことはない。
まるでそんなことすら無かったかのように、静かに平和なときが流れていく。
(はぁ……。ねむっ……)
そして、植木はそんなことを考える。
それは早起きが原因なのか、それとも眠気を感じやすい身体なのかということは定かではない。
ただ分かることは、今現在植木はとても眠気を感じているということだけだ。
そんなこんなで、植木は自然と下りてくる瞼に抵抗しながら、学校へと向かっている。
するとそこへ……。
「植木―!」
声の比較的高い女性の声が、植木の耳へと届く。
植木は何かしら返事をすることなく、ゆっくりと首を後ろへと回す。
そこに写ったのは、走りながら植木のほうへと駆け寄ってくるこちらもカッターシャツを綺麗に着こなす植木より少しばかり身長の低い青い髪の少女の姿。
少女の名前は、森あい。
学力も大体植木と同じぐらいで、容姿はこちらも美人の分類に入るだろう。
森は息を乱しながら、植木のそばまで来ると膝に手を置いて息を整えた。
「よう……」
植木はとりあえず手を出して、軽く挨拶をする。
「おはよう。植木」
森も顔を上げて、そう言い返す。
しばらく息を整えていたからか、森の息の乱れは少しばかり収まっていた。
「植木。ちゃんと数学の課題、やってきたの?」
森が、続けて聞く。
「あぁ……。分かんないところは、ちゃんと先生に聞く」
植木もそう言い返した。
これが二人の一日の始まりだった。
今では当たり前の二人の行為……。
「じゃ、行くわよ。植木」
「あぁ……」
そして、森は植木の手を引っ張り学校へと向かう。
その森の姿は、とても嬉しそうに感じられた。
続 第二話へ
今はこの思いを秘めておこう……。俺には今のままで充分だから……。