植木のどんと来い! ラジオ


「ラジオをお聴きの皆さん、こんばんは。この時間は植木のドンと来い!ラジオをお送りするぞ」
「司会は私、森あいと」
「森あいがお送りするぞ」
「って、あんたは植木でしょうがッ!? なんで私が二人いることになってるのよ!」
「ごめん、噛んだ」
「どこをどう噛んだら、植木耕助が私の名前になるのよ!? 第一、さっきの発音よかった気がするんだけど!」
「いやぁ、それほどでもないぞ」
「褒めてないわよ」
「……えっ!?」
「何、その騙されたと言わんばかりの顔は」
「……この番組が始まってから、始めて森に褒められたと思ったのに。くそ、騙したな!」
「あんたがいつもおかしなことばっかり言うからでしょうがッ!?」
「そうだっけ?」
「……覚えてない時点で重症だわ」
「で、何の話だっけ?」
「って、数秒前までの会話も覚えてないんかいッ!?」
「最近、物忘れが良いんだ」
「それ、良いって言わないからッ!? ……本気で、時々あんたの頭が心配になるわ」
「大丈夫だ。どれだけ物忘れが良くても、森の顔は忘れない」
「え……?」
「強烈な顔だからな」
「…………(ニッコリ)」
「……お、おぉ。これこそまさしく強烈なか」
ドカッ バキッ ゴスッ

「一時、ラジオの電波が乱れました。申し訳ございません」
「……誰のせいだよ」
「あ。今度から、釘バットでも持ってこようかなぁ」
「モウシワケゴザイマセン」
「……まったく。そもそも、あんたが変なことを言い始めるからいけないのよ」
「でも、森の顔を絶対に忘れないのは事実だぞ」
「……その理由は?」
「……その右手は何だ」
「答え方によっては99%使うだろうから、準備してるのよ」
「俺が殴られない確率はそんなに低いのか!?」
「正確には、99.99999%ぐらいね」
「……いっそ100%って言ってくれた方がすっきりする」
「そんなに殴られたいの? あんた、実はマゾなのね」
「森が、99.9999%とか言うからだろ!?」
「小数点以下が一つ少ないわよ」
「そこは重要なのか!? というか、いつもと立場が逆になってるぞ!?」
「……まぁ、いいわ。で、理由は何よ?」
「何か調子狂うな……」
「いいから、早く言いなさいよ」
「……森はいつもそばにいてくれるからな」
「なっ……」
「今だって、前を向いてればずっと森の色んな顔を見ていられるし」
「あ、あんた……ッ! こ、こんなところで、そんなこと言わないでよ!?」
「何で? だって、本当のことだし」
「ッ……!!」
「森。顔、真っ赤」
「あ、当たり前でしょ!? そ、そんなことをこんな近くで聞いて、は、恥ずかしくならないわけがないじゃないッ!」
「……嫌なのか?」
「え・・・、べ、べつに、い、いやじゃない、け・・・ど」
「そうか。……それならよかった」
「ッ……!(何で、そんなに嬉しそうに笑うのよッ!?)」
「それに俺は、他の誰も知らない森の顔も知ってるからな」
「……な、何よそれ」
「家で2人きりになった時に……」
「ストォォォォォォォォップ!? あ、あんたは、な、何を言おうとしてるのよ!!」
「え? だから、家のベッドで……」
「だ、だから言おうとするなッ!? あ、あんた、さすがに公共の放送で言っていいことと悪いことがあるわよ!?」
「えー。大好きな森の表情の一つなのに……」
「なっ……!?」
「今度はいつ見せてくれるんだ?」
「ッ……!? あ、あんた、な、何を言って……」
「……今日見たい、って言ったらダメか?」
「ッ…!?!? ちょ、ちょっと待ってってば!! そ、そんなこと急に言われても……」
「今日は姉ちゃんも父ちゃんもいないから、何も心配しなくていいぞ」
「な、何を心配しなくていいのよッ!?」
「姉ちゃんがいる時、いつも森が心配してること」
「なッ……!? ……お、お、お、お」
「お?」
「お手紙いくわよ!!」
「あ、話逸らした」
「あ、当たり前でしょ!? これ以上話してたら、この番組を聞いてる子どもたちに悪い影響が出るわっ!」
「俺たちも子どもだけどな」
「尚更、性質が悪いわよっ!?」
「まぁ、編集長がもう大人だからいいんじゃないか?」
「そういう問題じゃない!!」
「難しいんだなー。って、あれ? そういえばこの前の放送で、お手紙は編集長がゼロだって言ってた気がするぞ」
「過去のメールを見ていたら、一枚だけ見つかったらしいわ」
「へぇ。この前はどうして見つけられなかったんだ?」
「ないものだと思って、ほとんど確認してなかったそうよ」
「……メールが見つかった時の、編集長の後悔ぶりが目に浮かぶな」
「……まったくね。まぁ、いいわ。お手紙読むわね」
「おぅ」
「えーっと、植木くんと森さんは……」
「うん」
「…………」
「……森?」
「……どうして、こんなタイミングでこのお手紙が出てくるのよ!?」
「ちゃんと読みあげないと、視聴者の方に伝わらないぞ?」
「分かってるわよッ!? じゃあ、代わりにあんたが読んでよ!」
「おぅ。えー、『植木くんと森さんはベッドの上ではどっちが攻めですか?』」
「なんでこんな質問が」
「攻めは俺だぞ」
「って、即答しないでよ!?」
「ん? 森が攻めだったことってあったっけ?」
「そういう意味じゃないわよ!? こ、こういうのは上手く誤魔化すべきなの!」
「分かった」
「……本当?」
「森が攻めだぞ。って、言えばよかったんだな?」
「ちがぁぁぁぁう!? それ、誤魔化せてない!! どっちか断言しちゃいけないってことよ!」
「難しいなー」
「……あんたは正直者すぎるのよ」
「あ、そうだ。森」
「何よ」
「今日、森は攻めになるのか? 受けになるのか?」
「ぶ……ッ!! だ、だから、そういう話は……」
「たまには森から攻めてほしいな」
「……な、なんでそんな期待するような目をしてるのよっ!?」
「ダメか?」
「ッ……! きょ、今日の放送はここで終わりっ!!」
「え? 勝手に終わってもいいのか?」
「いいのッ! このままだと深夜番組になっちゃいそうだからっ!!」
「俺は別に困らないぞ」
「私が困るのよ!?」
「……それで、森。今日は何時頃に、うちに来るんだ?」
「だから、そんな期待の眼差しを向けるなぁぁぁぁぁあああああ!?」


終われ


あとがき
朔夜です。
kaleidoscope*さんとの相互リンクを記念して書かせていただきました。
甘い話とギャグがお好きなのかな? とメールで感じまして、そのような話で書こうかなと思いましたが……。
……記念だからと言って、ちょっと暴走しすぎました。反省しております・x・;
というか、こう言った話はkaleidoscope*様のサイトには合わないのでは…? と書き終わってから少し後悔。
き、気にいただけると幸いです。
kaleidoscope*様、これからもよろしくお願いいたします〜。
それでは、あとがきはこれにて。