植木のドンと来い!ラジオ



「ラジオをお聴きの皆さん、こんばんは」
「こんばんは」
「この番組は植木の」
「植木の?」
「ドンと」
「ドンと?」
「こ・・・って、さっきから何なのよあんたはっ!?」
「ん? 何かあったのか?」
「あんた、さっきから私の言ったことを繰り返してるでしょ!!」
「そういう気分なんだ」
「どういう気分なのよっ!? 私の調子が狂うのよ!」
「いや、よく言うだろ。人は真似をして育つって」
「それをここで実践しなくてもいいわッ!! というか、タイトルコールを真似して何が育つのよ!
?」
「うーん……番組?」
「……何、そのドヤ顔」
「俺、上手いこと言っただろ?」
「この番組は植木のドンと来い!ラジオです。司会は私、森あいと目の前の馬鹿がお送りします」
「無視かよッ!? というか、俺の扱い酷くないか……?」
「事実でしょ?」
「……真顔で言うなよ」
「では、今日のお手紙を早速紹介しようと思います」
「おー」
「でも、その前に」
「……お?」
「……あんたに、言わなきゃいけないことがあるの」
「え? 何かあったのか?」
「私ね」
「おぅ」
「……佐野と、付き合うことにしたの」
「え……?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ってことを植木に本当の話っぽく言うのが、今回のお手紙のリクエストだったのよ。どう? 
本当の話だと思った?」
「…………」
「いやぁ、あたしの演技力にかかれば、さすがのあんたも顔面蒼白になるのね。どうやって切り出す
のが一番いいか、ずっと悩んでた甲斐があったわ」
「…………」
「……って、植木?」
「…………」
「植木? おーい。聞こえてないの?」
「…………」
「冗談だってば! あたしが佐野なんかとホントに付き合うわけがないじゃん!」
「…………」
「第一、本当はあんたと……」
「……森」
「な、何よ。き、聞こえてたんなら早く反応しなさ……」
「佐野は、今どこにいたっけ?」
「え、佐野……? 佐野がいる場所なら、あんたも知ってるじゃない」
「東西南北だと、どれだ?」
「え……? えっと、西、じゃない?」
「そうか、西か」
「……? 植木……? いきなり西を向いて、どうしたのよ?」
「大丈夫だ。すぐに終わる」
「え? あんた、何を言って……」
「魔王オオオオオオォォォォォォォォォ!!」
「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


数秒後、ある男の家が跡形もなく消し飛んだという


「あ、あんた、何をやってるのよ!?」
「何って。魔王?」
「見れば分かるわっ!? こんなところで魔王を使うなんて、街を消し飛ばすつもりッ!?」
「いや、佐野だけを消すつもりだったんだ」
「……あ、それなら問題ないわね」
「あぁ。……って、え?」
「何?」
「……今、何かおかしな言葉を聞いた気がするぞ。俺が言うのも何だけど」
「いや、わたしも正直邪魔だと思ってたのよね」
「……この番組での佐野の扱いは本当に酷いな」
「まぁ、それは別にいいのよ。植木、あんたの天界力は確か、前の戦いでなくなってたはずよね?」
「おぅ」
「おぅ、じゃないわよ!? 何でさっき、魔王が使えたのよっ!!」
「犬のおっさんから貰ったからな」
「え? い、いつそんなのを貰ったのよ!?」
「ついさっき貰った。テレパシーで」
「テレパシー!?」
「というか、天界からダウンロードした」
「ダウンロード!? ちょ、ちょっと待って。そんな設定、まったく知らないんだけど・・・」
「さっき犬のおっさんに頼んで、作ってもらった」
「勝手な設定を作らないでよっ!? いくら神だからって、できることとできないことがあるでしょ
!?」
「あ、確かに犬のおっさんにもできないことはあるって言ってたな」
「例えば?」
「森の胸の成長は、どんなに頑張っても無理って言ってた」
「…………何、ですって?」
「もう絶望的です、とか。植木くんも大変ですね、とか……」
「おい、植木」
「ヒィッ……!? な、何だ、森。そんな満面の笑みを浮かべて……」
「天界力のダウンロード、私もできるようにしてくれない? というか、しろ」
「い、いや、待て森。お、落ち着け。第一、お前は人間なんだから天界力を手に入れても、神器が使
えるどころか、そのコントロールだって……」
「じゃあ、その設定も作ればいいのよオオオオオオッ!! いいから、やれ。……やらないっていう
なら、私があんたを殺る」
「ヒィッ!? わ、分かった。せ、説得してみる」
「は・や・く・ね?」
「……というか、自分を殺ろうとしてる相手に力を渡す訳がないと思うんだけどな」
「何か言った?」
「イイエ、ナニモイッテオリマセン」


(植木、説得中)


「……説得、終わったぞ」
「ご・く・ろ・う・さ・ま。で、私にはどんな設定がつくの?」
「えっと『人間だけど、天界力が俺以上にコントロールできる/10ツ星神器までを使える/魔王を1発
だけ打てるだけの天界力を持っている』だ」
「……魔王、1発、だけ?」
「お、おぅ」
「……まぁ、いいわ」
「(……あれ?)」
「何?」
「い、いや。何でもない」
「……ところで、植木。私、あんたに一つ聞きたいことがあるんだけど」
「な、何だ?」
「……植木は、私の胸……好き?」
「は……?」
「は? じゃないわよ。す、好きか、嫌いか、聞いてるんだけど……」
「え、・・・あ、いや」
「…………」
「・・・お、俺は好きだぞ」
「・・・本当?」
「お、おぅ。だって、綺麗な形をしてるし、も、揉みやすいからな」
「な、何言ってるのよッ!? ば、馬鹿……ッ!」
「い、いや、本当だ。そ、それと小さくて可愛いと思うし」
「…………」
「あと小さいから後ろから抱きつかれても、そんなに胸が当たらなくてドキドキしなくて済むし、そ
れに小さいから……」
「植木」
「え? な、なんだ、も」
「ま・お・う☆」


数秒後、あるラジオ放送局が跡形もなく消し飛んだという


終われ


あとがき
「森が佐野と付き合う、と本気っぽく言わせる」というネタで書いてみました。
植木は絶対に呆然とするはずです、というか、この世の終わりだとか思うかもしれません。
さすがに魔王を発動するかどうかはわかりませんがw

森が天界力を使える、っていうのはいいかもしれませんが、花鳥風月は使えませんね。
理由は・・・わかるな?
では、あとがきはこれにて。