植木のドンと来い!ラジオ

「さて、今日も始まりました。植木のドンと来い!ラジオ。司会は私、森あいと…」
「……」
「…って、植木いないじゃない!?」
(カンペ)
「え? 何?」
(要望に従うために、ただいま準備中です)
「事前準備…って、そんなのが必要な要望なの?」
(はい。とっても必要です)
「というか、普通司会者の一人が席を外してるのに、番組を始めないでよ…」
(あっ、来ましたよ)
「って、それはカンペに出さなくてもいいんじゃない!?」
「よーっす。森。悪いな、遅れちまって」
「まったくよ、うえ……」
「ん? どうした?」
「……」
「森?」
「…なっ、なっ、なっ…」
「ななな? 何だそれ? 新しい食べ物か?」
「違う! って、そんなことじゃない!」
「じゃあ、何だよ」
「…いい? 植木。私の質問にきちんと答えなさいよ?」
「…? おう…」
「まず、その格好は視聴者の要望…よね」
「あぁ、そうだ」
「じゃあ、どうして、あんたは嫌そうな顔をしてないのかしら?」
「どうして…って、リクエストにちゃんと答えるのは当たり前だろ?」
「きちんと答えるのにも限界があるわっ!!」
「そうなのか?」
「そうよ!! …いくら要望といえども、『女装』するっていうのはさすがに限界でしょうが!?」
「…確かに、少し動きにくいな」
「って、そういう意味じゃない!! あんた、スカート履くとか、紅を塗るとか、化粧をするとか、そういうことに抵抗はないの?」
「それは、あるぞ」
「あるのなら、するなッ!!」
(まぁまぁ、それぐらいに…)
「うるさい! 編集長! だいたい、あんたが、『女装』っていうのを取り入れるからでしょうが!」
(まぁまぁ、それぐらいにしてください。それよりもですね…実は、森さんにも)
「私に…何よ?」
(視聴者から…)
「視聴者から?」
(男装してくれという要望が…)
「はっ!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? そんなこと絶対嫌よ!? 絶対に私は…」
(来てないんです)
「って、来てないんかい!? 紛らわしいことをするな!!」
「森、今、放送中だぞ」
「うるさい! っていうか、あんたの格好が視聴者は見れないっていうのが痛いところだわ。きっと…凄まじいものが見れるわよ」
「見てみたいな。森の男装…」
「そこは黙ってなさい!! 本当にそういう要望が来ちゃうから!!」
「それを狙って…」
「狙うな! …それにしても、あんたには、女子の服はあまり似合わないけど、性格は少し…いじめたくなるような性格よね」
「…は?」
「ふふふ…。何でもない。ただの独り言」
「…今、何か寒気が走ったんだが…気のせいか?」
「気のせいよ、あっ、もうこんな時刻ね。今日の放送はこれでお終い」
「おう。視聴者の皆様、ありがとうございました…」
「…本当にいじめがいがありそうよね」
「…また寒気が走ったぞ」

終了