植木のドンと来い!ラジオ

「おーっす。視聴者の皆さん、元気か? 今日も植木のドンと来い!ラジオが始まったぞ。司会はこの俺、植木耕介だ。」
「ちょっと待ちなさい、植木。どうして、そんなに今日はノリノリなのかしら?」
「(無視)尚、もう一人司会の森あいさんは…」
「ねぇ? 無視? 私のこと、軽やかに無視?」
「…うっ…昨晩、お亡くなりに…」
「いるでしょうがッ!? 勝手に殺すなッ!!」
ゴスッ!
「グハッ!! はっ!? 森!? お前、生きてたのか!」
「…何、その今の今まで『私がいることすら知りませんでした』といわんばかりの態度は」
「だって、森は昨日亡くなったって…」
「まだ言うか!? 誰よ! そんなことを言ったのは!」
「姉ちゃん」
「あんた、覚悟は…って、翔子さんかい!?」
「だって、昨日姉ちゃんが家に帰ってきて早々『耕ちゃん、あいちゃんが亡くなったんだって。原因は鼻づまりで、どうやら鼻のかみすぎで、そこから破傷風になったんだって! でも、あいちゃんも、鼻づまりで死んじゃうなんて不憫よね。噂によると、あいちゃんの最後の一言は『鼻が…鼻が…』なんだって!!』って、大声で言ったからさ」
「鼻づまりで人が死ぬか!? っていうか、何よ!? 鼻のかみすぎで、破傷風になるわけがないでしょうが! しかも、最後の一言が『鼻が…鼻が…』って最悪じゃないのよ!? あんたも、信じるな!」
「だって、姉ちゃんすごい必死だったし」
「それは、あんたを騙すための偽装工作に決まってるでしょうが!!」
「いや、ひょっとしたら、今ここにいる森は…幽霊かッ!? そうか! それなら納得がいく」
「……」
 ドカッ!
 バキッ!
 ゴスッ!
 大変お見苦しい映像のため、しばらくお待ちください。
「はっ! ここは天国か? そして、お前は閻魔大王!?」
「誰が閻魔大王ですって? っていうか、どうして、天国に閻魔大王がいるのよ! そんなことよりも、今日もゲストが来てるんだから、シャキッとしなさいよ!」
「お、おう」
「さてと…今日のゲストは…」
「どんな奴なんだ? …って、死神!? だとしたら、やっぱりお前は閻魔大王だったのかッ!?」
「ふふふふふふふふふふふ…。植木、閻魔大王よりも恐ろしいものがよっぽど見たいようね…」
 ドカッ!
 バキッ!
 ゴスッ!
再び大変お見苦しい映像のため、しばらくお待ちください。
「それでは、本日のゲスト、スタンプデッドから『昇神 彗さんと死之神 円花さん』です。」
「こんばんは…」
「こんばんは…って、な、何だ!? この惨状は!」
「う、うわぁ…。彗さん、私たち、何だかすごいところに来てしまったんでしょうか?」
「そんなことないわよ。ここは”いたって”普通のラジオスタジオだから」
「そうだぞ」
「は、はい…」
「そんなボコボコの顔で肯定されても、説得力がない…」
「さてさて、そんなことは置いておいて…。今回の招待も、編集長が大金を出したそうじゃない」
「そうだったのか?」
「あれは、大金…なんでしょうか?」
「あぁ、あれは間違いなく大金だ。少なくとも、俺にとっては数年間は遊んで暮らせるほどの…」
「へぇ。どれぐらい貰ったのか、少し教えてくれない?」
「どれぐらいって…えっと、彗さん、これぐらいでしたっけ?」
「…あぁ、まぁ、大体それぐらいだな」
「どれどれ…。……ッ!?」
「ん? どうした? 森。……ッ!?」
「あ、あの…どうかしましたか?」
「後で、編集長にどうやってこんな大金を持ってるのか問い詰めましょうか。植木」
「あぁ、あと、昇給もな」
「いや、普通ギャラって言ったら、これぐらいだろ」
「「普通じゃない!!」」
「植木さんと森さんが揃うと、何だか怖いですね…」
「あぁ、安心して。きっと怖いのは、”ここだけ”だから」
「それよりも、時間がないんじゃないのか? この番組、確かかなり短いんだろ?」
「それもそうね。んじゃ、えっと質問するわ」
「あ、森。今回は、俺のほうが先に質問していいか?」
「…珍しいわね。別にいいわよ」
「おう、センキュ。それじゃあ、二人に聞くけど…」
「はい」
「何だ」
「二人は…もう抱き合ったのか?」
「……ッ!?」
「な……ッ!?」
「…植木、それ、直球すぎるわよ」
「…そうか。それなら、夜の営みを…」
「変わってない! というか、さっきより直球すぎるわッ!!」
「え、えっと、それは…」
「夜の営みは……」
「そっちも真面目に答えようとするなッ! 一応、公共放送だから!!」
「そ、そうですよね…」
「こ、答えなくてよかったのか…」
「…この二人、レギュラーだったら、本当にからかいがいがありそうよね」
「森、お前…実はSだろ」
「だから、この作品だけね…。じゃあ、私からも質問させてもらおうかしら」
「いいですよ」
「ほどほどの物にしてくれよ」
「ほどほど…ね。じゃあ、お互いのことがどれぐらい好きか、教えてもらおうかしら? これなら、まだマシでしょ?」
「ま、マシじゃないですよ…」
「絶対にそういう質問が来ると思ってた…」
「さてと、答えてもらおうかしら?」
「…うぅ。ど、どれぐらいって…本当に彗さんのことは大好きです。特に…彗さんとキスしてるときは、すごく幸せな気分になって…」
「…ま、まさかそんなことまで言ってくれるとは思ってなかったわ…。彗さんはどうなの?」
「…俺だって、円花のことは好きだ。最初のうちは変な奴だって思ってたけど、少しずつ自分の中での存在が大きくなってて、気付いてたら好きになってた」
「…ラブラブって奴だな」
「まったくね…。もう、それは死語だけど。そこらへんのギスギスカップルに見せ付けてやりたいぐらいだわ」
(そろそろ時間です)
「あ、編集長だわ。…それじゃあ、そろそろ切り上げましょうか」
「おう。今日も聞いてくれてありがとうな」
「ありがとうございました。来週からも聞いてくださいね」
「聞くのはいいが、スタジオには来るな。絶対に後悔するぞ」
「最後に彗さんは余計なことを言わないほうがいいわよ? …それじゃあ、今度の放送もお楽しみに」

終了