風邪にご注意を

 

「ゴホッゴホッ!! だる……」

 ピピピピと体温計の音がうっとおしいほどうるさく鳴り響く。

 画面に表示された体温は、38.6。

 完全な風邪であった。

 今、植木の家には誰もいない。

 姉は、植木にちょっとした手当てをしてから大学に向かったし、父親も朝から今日は出かけていた。

 まぁ、幸いだったことは休日だったということだけだった。

(どうすっかな……)

 体は確かにだるいのだが、おかげで何もすることがなく植木にとっては物凄く暇だった。

 そんなとき。

 ブーブーブー 突如、近くに置いておいた携帯のバイブが振動を始めた。

「……。誰だ?」

 重たい体を動かしながら、植木はゆっくりと電話をとった。

 そして、めんどくさそうに通話ボタンを押す。

「もしもし……」

「植木!! あんた、今どこにいるのよ!!」

 頭にキーンと鳴り響く大きな声で話しかけてくる電話の主は、同じクラスメイトの森あいだった。

 ついでにこの二人、付き合っていたりする。

「何だ。森か」

「何だじゃないわよ!! あんたが一向に来ないから電話したんじゃない!!」

 一向に来ないから電話した? そういえば、何か約束してたっけ……。

 熱でボーっと浮かされた頭で、植木は必死に考えてみる。

(あっ……)

 そういえば今日、森と一緒に出かけるという約束をした覚えが……。

 あったような、なかったような。

「森、今日何かあったっけ?」

 確認のつもりで、植木は森に聞いてみる。

 だが、その言葉が森の怒りに触れたようだ。

「って、あんたから誘ったんでしょ!! 遊園地に行こうって!!」

 森のその言葉に、植木はやっと思い出した。

(そういえば……)

 そういえば、自分から誘ったのははじめてだったような気がする。

 森も、とっても嬉しそうな顔をしてたことを覚えている。

(悪いことしたなぁ……)

 そんな思いを込めて、植木は言った。

「わりぃ、森。今日は俺、ちょっと忙しくてさ」

 そんな悪い思いをさせたのに、まさか自分が風邪だなんて、森に余計な心配をかけさせるようで言えなかった。

「って、あんたが言い出したんじゃない!! そんなに大切な用事なの?」

「あぁ……」

 このまま嘘を貫き通せると植木は確信していた。

 だが、その瞬間、植木の喉元に何かがこみ上げてきた。

(まずい!!)

 植木はとっさに我慢しようとするが、それを許してくれるほど甘い代物ではなかった。

 そして、次の瞬間。

「ゴホッゴホッ!!」

 電話越しに植木は大きな咳をしてしまった。

「植木……。あんた、ひょっとして風邪?」

 植木はとっさにごまかそうとした。

 だが、そんな彼の喉に第二波が押し寄せてくる。

「ゴホッゴホッ!!」

「あんた、ひょっとして酷いの?」

 もう、森を誤魔化せなかった。

 仕方なく、植木は、「ああ」と答えた。

 だが、その言葉を聞いた森はすぐに大きな声で言った。

「待ってて!! すぐに行くから!!」

「へっ?」

 信じられないような言葉を聞いた植木が答えようとしたときには、すでに電話は切られていた。

 思わず植木は切られた電話を見ながら、呆然としていた。

 

 それから数分後、バタンと大きな音を立てて、森は植木の家のドアを開けた。

 そしてバタバタと走りながら、植木のいる部屋へと近づく。

 そして何の抵抗もなく、植木の部屋へと森は侵入した。

 上着は長袖、下はスカートという服装だった。

「植木、大丈夫?」

 辛そうに寝転がっている植木を見て、思わず森は心配する。

「だいじょ……。ゴホッゴホッ!!」

「全然大丈夫じゃないじゃない!! ちょっと待ってて! おかゆ作ってくるから」

「あ、ああ」

 森の有無を言わせぬ迫力に、植木は思わず押されぎみで答えた。

 そういうと、森はすぐさま植木の部屋を出て行った。

 そんな森の後姿を見つめながら、植木は思った。

(でも……、心配してくれてんだよな)

 森がいてくれる。それだけで嬉しかったし、暇だと思っていた時間も全然暇に思えなかった。

 植木の顔は、先ほどよりも生気を浴びた顔に戻っていた。

 

 それからしばらくして、森はエプロン姿のまま植木の部屋に戻ってきた。

 その手元には、小さな土鍋があった。きっと、それがおかゆなのだろう。

 思わず森のエプロン姿がかわいく思えて、植木はゴクリと喉を鳴らした。

 しかし、森はまったくそんな植木の心情など知る由もなく、植木のすぐ近くに腰を下ろす。

「植木。食べれる?」

「……ああ」

 森の問いに、植木はコクリと頷く。

 すると、森は持っていたレンゲでおかゆを一掬いすると、植木に差し出した。

「はい。植木、あーん……」

「はっ?」

 思わず植木は声を上げた。

 だが、森は特に気にすることなく、まだレンゲを植木に向けたままだった。

「食べないの? 植木」

「いや、そうじゃなくて、何で森がそうする必要があるんだ?」

 すると、森は嬉しそうに笑った。

「だって、植木、だるいんでしょ? それなら、食べさせてあげたほうが食べやすいじゃない」

 そういうと、森は再びあーん。と言った。

 しばらく植木は考えたが、ふと何かを思いついたのか、ニヤリと小さく笑って言った。

「食べさせてくれるなら、こっちのほうがいい……」

 そういい、植木はゆっくりと手を伸ばす。

 そして植木の指が触れたところは、森の柔らかな唇だった。

「く、口移し?」

 思わず森はすぐに意味を理解して、顔を赤くした。

「食べさせてくれねぇのか?」

 そんな森に、植木は寂しそうな顔をして森を見つめた。

 そんな植木を見ていて、思わず森の心の中には罪悪感が芽生えた。

(相手は病人なのに、わがまま言ったらいけないわよね……。でも、やっぱり口移しっていうのは……)

 まさしく形勢逆転である。

 しばらく真剣に考えていた森であったが、決心したかのように顔を上げる。

「きょ、今日だけよ」

 その顔はすでに真っ赤に染まっていた。

 そんな森の様子を見て、植木は嬉しそうに笑った。

 しかし、その顔にはどこか企みがあるようにも見えた。

 森はゆっくりとおかゆを自分の口に含んだ。

 そして、そのままゆっくりと顔を植木へと近づけていく。

 一瞬、戸惑ったかのように森は止まったが、すぐに目を瞑って植木の唇に自分の唇を重ねた。

「んっ……」

 そして自らの舌をすっと植木の口内へと伸ばし、そこから口に含んでおいたおかゆを流し込んでいく。

 植木も流し込まれたおかゆをゆっくりと飲み込んでいく。

(はぁ……。やっと終わったぁ……)

 森はそう考え、唇を離そうとしたときだった。

 突如、植木の手が森の頭へと回り、状態が固定されてしまった。

(なっ!?)

 それだけにとどまることなく、植木の舌が油断していた森の舌を捉える。

「っはぁ……んっ……」

 森は必死に植木から逃れようとするが、植木の力はいくら風邪を引いていても森とは比べ物にならないものだった。

 やがて植木の片手が森の腰元にも回り、ゆっくりと引き寄せられる。

 口移しだけで終わるはずだったのに、こんな濃厚なキスまでされるとはまったく考えてもいなかった森は、動揺を隠せなかった。

 だが、そんな油断も今の森には許されなかった。

 ぐるっと視界が回ったかと思うと、次に視界に写ったのは植木の顔だった。

(えっ!?)

 つまり、森はベッドの上で植木に組み敷かれているわけである。

 とっさに状況を判断した森は、植木に呼びかける。

「あ、あのさ……。」

「ん?」

 植木は森の言葉に答えながらも、ゆっくりと森の着ているエプロンを脱がし始める。

「う、植木も今日は風邪引いてるんだし、今度にしない?」

「運動すれば、風邪も直ると思うけどなぁ。」

 そういって、植木はまったく手を止めることなく、森の着ていたエプロンを完全に脱がしきり、遠くへと放り投げた。

 言い負かす方法がなくなった森が出来ることといえば、わずかな抵抗だけであった。

 エプロンを脱がせたあと、植木はゆっくりと森の上着の中に右手を入れ、服ごと手を上げていった。

 森は思わず植木の手を止めようとするが、植木の左手で森の手は押さえられてしまった。

「う、植木。だ、ダメだってば」

「ダメかどうかは、身体が教えてくれるって」

 植木がそれを言い終えたのと、植木の右手が森の左胸を下着の上から揉み始めたのはほぼ同時だった。

「ん……ゃ…ぁ…」

 思わずビクンと身体が反応する。

 そんな森の反応を楽しみながら、植木はゆっくりと森の下着を脱がしにかかる。

「だ、ダメッ!!」

 思わず植木の行動を止めようとするが、植木の左手がそれを遮った。

 そして森の下着を取り外すと、それを遠くへと放り投げた。

「やっ……」

 植木に見られていることが分かり、森は恥ずかしくなって顔を赤く染めた。

 そんな森の反応を確認してから、植木は再び森の左胸を自らの手で揉み始める。

「ゃぁ…ん。」

 そして揉んでいない反対側の胸の突起を植木は口に含む。

「あっ!!……ゃ…ん」

 そしてゆっくりと自らの舌で、森の胸の突起をコロコロと転がし始める。

 そのたびに森の身体が、ビクビクと反応を示す。

 そんな森の敏感な反応を見て、もっと植木はしたくなっていた。

 そしてもう片方の手で、ゆっくりと森の太股を撫でていく。

「ひゃぅっ……。う、植木」

 嫌がっているようにも見えても、今の植木にはそれは続けて欲しいようにしか思えなかった。

「何だ。ちゃんと感じてるんだな。森」

「!?」

 そんなことを言うと、森は再び顔を真っ赤にする。

「風邪移しても恨むなよ?」

 そう森に一言言ってから、植木は本核的に行為を続けていった。

 

 

「う、植木の馬鹿!! すっかりおかゆ冷めちゃったじゃない!!」

 行為を終えた後、森の怒声が部屋に鳴り響く。

「別にいいじゃん。体は温まったし、風邪だってすっかり直っちまったしな」

「なっ!?」

 シラッととんでもないことを言った植木に、森は思わず顔を赤くさせる。

「今度、風邪引いたときも、よろしくな」

「に、二度と来ないわよ!!」

 それから森は、半年近く植木を看病しなかったという。

 

 

終了

 

 

 

あとがき

 紅さんのキリ番小説が完成いたしましたよー。イエス!!

 しかぁぁぁぁし、もろ年齢制限になってしまいましたね!?

 こんなのだったら、普通に公表できそうもないじゃないか!?

 と、とりあえず植木攻めではあるのは間違いありませんが……。

 要望にお答えすることはできたでしょうか? 不安です。