アンラッキー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

植木たちは、修学旅行で、京都・奈良に来ていた。

 

小学校のときに、一度来たというのに、植木たちの中学は、2年生がそうなっていた。

 

植木は、京都と奈良が好きだったため、楽しみにしていたのだが、森は違っていた。

 

「森、なにため息ついてんだ?」

 

「だって、また京都と、奈良に行くなんていやに決まってるじゃない」

 

「そっか?おれは楽しみだけどな・・・」

 

「あんたは、そういうのが趣味でしょ」

 

植木は、歴史物などが好きだった。

 

そのため、京都とかは好きだった。

 

「じゃあさ、3日目の自由行動、おれと回るか?」

 

「え?な、なんであたしが」

 

「いやだったら、別に、いいんだぞ」

 

「いやじゃないわよ。あ、あたしだって、いっしょに回る人を探してたの」

 

顔を真っ赤にさせながら、植木のほうを見る。

 

「そっか・・・じゃあ、楽しみにしてるからな」

 

すると、植木は去っていった。

 

植木が去ったのを確認して、森はガッツポーズをした。

 

(やったー!あたしも植木と回りたかったけど・・・植木から誘ってくれるなんて思ってなかった!)

 

森も本当は植木とまわりたかったのだが、恥ずかしくていうことができなかったのだ。

 

まさか、植木から誘ってくれるとは思っていなかったようだ。

 

いままでつまらなそうだと思っていた、京都・奈良も一瞬で、楽しみになった。

 

(植木とまわれるなんて最高!京都・奈良も悪くないわね)

 

修学旅行までの日が有意義に過ごせたのは、そのせいかもしれない。

 

修学旅行1日目。

 

植木と同じクラスのため、同じバスに乗っていたのだが、植木は一人席だった。

 

植木は、酔いやすいので、窓のほうに座っていたのだが、やっぱりつらそうだ。

 

(植木、大丈夫かな?)

 

植木の酔いやすさを森は知っていたので、よけい心配になった。

 

すでに、植木が吐きそうになっていたので、森は急いで、植木のとなりに座った。

 

「森?どうしたんだ?うっ!」

 

「ほら、無理しないの。気持ち悪いんでしょ」

 

植木の背中をさすりながら、森は話しかけた。

 

「森。サンキュ。だいぶ楽になった。」

 

「そう。よかった」

 

といって、席を離れようとするが、それは無理だった。

 

植木が肩に寄り添って寝てきたから。

 

しかも、肩を抱かれながら。

 

「ちょ、ちょっと、植木!?」

 

バスの中だということを知っているのだろうか?森は恥ずかしさのあまり、顔を俯けた。

 

視線が妙に気になってしまう。

 

「やっぱり、こっちのほうが楽だな」

 

植木は、そんな気も知らずに、寝息を立てだした。

 

(ちょ、ちょっとあたしはどうすればいいのよ?)

 

できれば、はやく自分の席に戻りたい。

 

しかし、こんな状態で、植木からはなれるわけにはいかなかった。

 

しばらく立っても、まったく植木が起きない。

 

結局、植木が起きたのは、奈良についたときだった。

 

奈良についてからは、東大寺や、法隆寺などといった小学校のときにもいったところに、よった。

 

1日目はなにも起こらずに、終了した。

 

2日目、京都に移ったのだが、やはりいったことがあるものばかりだった。

 

金閣寺、銀閣寺、清水寺。

 

いろいろとまわったのだが、やはりつまらない。

 

しかし、植木の様子を見ているととっても楽しそうだ。

 

植木の顔を見ていると、つまらないこともなにやら面白くなってくる。

 

やがて、2日目に回るすべての建築物をまわった。

 

そして、京都の旅館に戻った。

 

食事が終わって、部屋に戻った。そんなとき部屋の前のチャイムがなった。

 

この部屋は森ともう一人の女子がいた。

 

「あいちゃん。ちょっと、出てくるね」

 

「うん」

 

だれだろうかと思って、友達を待っていたが、だれかすぐにわかった。

 

なぜなら、友達が叫んだからだ。植菌と

 

そう、そこにいたのは、植木と、その部屋の男子だった。

 

その男子が、森の部屋の女子と仲がよかったので、合いに来たようだ。

 

植木は、いやそうだったが、森の顔を見て、顔色が変わった。

 

「森は、この部屋だったのか・・・」

 

「う、うん。そうだけど、どうかしたの?」

 

「いや、べつに・・・」

 

なにやら、不成立な会話になっている。

 

すると、後ろから、先生の声がした。

 

この修学旅行では、全部の部屋を一度入って、寝ているかどうかを確認することになっている。

 

「やばっ」

 

消灯時間はとっくに過ぎている。

 

それに男子が、女子の部屋の近くにいるとなれば、問題が大きくなる。

 

男子は、女子の助けを借りて、すぐに逃げたのだが、植木は違った。

 

少し遅れてしまったのだ。

 

そのとき、そこにいた女子も、どうやら植木の部屋のほうに向かったようだ。

 

植木は急いで、森の部屋の布団に包まった。

 

しかし、そこでは、アクシデントが起きていた。

 

部屋を真っ暗にしたため、布団の中に誰かがいるかを確かめずに布団の中に入ってしまったのだ。

 

案の定、植木が包まった布団にはすでに、森がいた。

 

森は、植木が自分の布団に入ってきたことに驚いて声を出そうとした。

 

植木も、まさか森がいるとは思わず、声を出そうとした。

 

しかし、部屋のなかに寝ているか確認のために、先生が入ってきたので、声を出すこともできない。

 

ただでさえ、狭い布団。

 

そこに二人が入っているのだから、二人の肌は少しだが触れ合っている。

 

少しでも動いたら、完全にくっついてしまうだろう。

 

そうなれば、二人は、動くことも恥ずかしくなってしまうかもしれない。

 

先生が近づいてきたので、植木は隠れようとして転がったのだが、すでに、そこには森がいる。

 

案の定、二人は完全にくっついてしまった。

 

恥ずかしさのあまり、声を出すことも動くこともできない二人。

 

すでに先生は去っているのに、まったく気がつかず、動かない。

 

しかも、電気は消されたままなので、むやみに動けば、相手のどこに触れるかわからない。

 

(ちょ、ちょっと、植木。どうするのよ、この状況)

 

こんな状態を他の人に見られたら、完全に勘違いされる。

 

しかも、手が頬にあるため、妙に緊張する。

 

本当だったら、このままキスされてもおかしくない状況だ。

 

すると、頬にあった手が背中に回り、植木のほうにグイッと、引き寄せられた。

 

(え?ちょ、ちょっとまって!)

 

真っ暗のなか、植木に完全に抱きしめられている状況になった森。

 

抵抗しようとするが、植木の手が強くなるばかりだ。

 

「ちょっと、植木。そろそろ、部屋に戻らないといけないんじゃない?」

 

真っ暗な部屋。布団のなか。二人きり。抱きしめられている。

 

この4つの状況がそろっているいま、植木に何をされても文句が言えない。

 

「・・・」

 

植木からの返事がない。

 

「植木?」

 

すると、急に自分の視界が上に変わった。

 

(え?な、なに?)

 

驚いているうちに、自分の唇にやわらかい感触がする。

 

「んっ」

 

自分の視界には、植木しか写っていない。

 

つまり、自分はキスをされていると、森は気づいた。

 

「んっ、う、うえ、んっ」

 

たしかに、いままで、キスされたことはあった。

 

しかし、こんなにもキスされたことはなかった。

 

「植木、そろそろやめ、んっ」

 

キスが止まる気配がない。それどころか、徐々に、深くなっていく。

 

「んっ、ふっ、んんっ」

 

なんども、自分の口のなかに舌を入れられる。

 

植木の体が、自分の体にのしかかっているため、抵抗することもできない。

 

「はー、んっ」

 

わずかのあいだに、唇を離されても、少し呼吸をしただけで、すぐに口付けされる。

 

「う、植木ってば、やめてよ。んっ」

 

言葉を発しても、返事は返ってこない。

 

帰ってくるのは、口付けの嵐だけ・・・

 

しばらくすると、首元にキスをされた。

 

「あっ。う、植木、やめて」

 

初めて味わう感触に、寒気が走る。

 

そして、また唇にキスされる。

 

「んっ。う、植木ってば、本当に、やめ。んっ」

 

森の声など、耳に届くわけがない。

 

(あ、あたしどうなっちゃうのかな?このままだと、あんなことされるのかな?)

 

口付けされながらも、森はどこかで、読んだことがある本の内容を思い出していた。

 

すると、そのときドアが開いた。

 

「おい。植木、そろそろ戻ってこいよ」

 

それは、あの男子生徒だった。

 

すると、植木は起き上がって、男子生徒とともに帰っていった。

 

残された森は、急いで歯を磨きに行った。

 

さすがに、何度もディープキスされていると、そんなことが気になったのだろう。

 

歯を磨きながら、森は考えていた。

 

(植木のやつ、あれって本気だったのかな?なんか、もうちょっとしてほしかったな。

って、なに言ってんの、あたし・・・)

 

いそいで、自分の思想のなかから、消した。

 

結局その日は、あまり眠れなかった。

 

3日目。修学旅行、最後の日。

 

植木といっしょに自由行動することになっていたので、植木をまっていた。

 

「悪い。寝坊した」

 

「本当に遅いわね。集合時間から30分もたってるわよ」

 

とはいっても、森は眠れなかったので、集合時間よりかなり前にいたが・・・

 

「でも、あんた。よく眠れたわね」

 

「そうか?」

 

植木は、昨日のことを覚えているのだろうか?と森は思った。

 

「はやく、出発しましょ」

 

「ああ、そうだな」

 

二人だけで、行動するのは初めてかもしれない。

 

いつも、めったに笑わない植木も楽しそうにしていた。

 

森は、心から嬉しかった。

 

(よかった。植木が楽しんでくれてる)

 

おなかが減ったので、和菓子屋によることにした。

 

二人は、京都名物のきんつばを頼んだ。

 

いっしょに食べている姿を他から見たら、完璧な恋人同士だろう。

 

やがて、いろいろなところをめぐって、クラス全員の集合場所に向かうことにした。

 

「植木、楽しかったね」

 

「ああ」

 

すると、植木がおもむろに話しはじめた。

 

「あの、昨日はゴメンな」

 

「え?」

 

「昨日、あんなことしちまって・・・」

 

「覚えてたの?」

 

「当たり前だろ。いきなり、あんなことするなんて、最悪だよな・・・」

 

そんなことないよ

 

「え?」

 

森の小さな声があまり聞き取れなかったが、どういうことを言ったのかはわかった。

 

「あたし、どこか期待してたところあったし、それに、植木だったらいいよ。」

 

「いやじゃなかったのか?」

 

「うん」

 

すると、植木は森を抱きしめた。

 

「森、やっぱりおれ。おまえが大好きだ」

 

なんども聞いたことば。

 

でも、いつ聞いても嬉しいことばだった。

 

「うん。あたしも・・・」

 

 

 

2日目にされたことはアンラッキーな出来事だったのかもしれない。

でも、森にとっても、植木にとっても、思いがより強く深まった。

いい思い出なのかもしれない。

たとえ、アンラッキーなことが起きても、二人でなら、ラッキーにかえられる。

 

終了

 

 

 

あとがき

よっしゃー!やっと、終わった修学旅行ネタ。

仁菜さんからのリクエストを書き終えましたよ。

これは、いままでの作品のなかで、一番ハードなものだと思います。

書いてて、やばいとすぐにわかりました。

以上、朔夜でした。

仁菜さん、リクエストありがとうございます。

2004年11月29日