不思議な気持ち
「植木!」
教室でボーっとしているおれは、ある声を聞いた。
「ちょっと、つぎ体育でしょ。あんたまだ着替えてないのに、どうするのよ。このままじゃ、授業間に合わないわよ」
おれに唯一はなしかけてくる女子。森あいだった。
「む、やばいな」
言われてみて、初めて気がついた。
とはいっても、授業に行ったところでまたバカにされるがオチ。
はっきり言ってめんどくさい気持ちもあったが、森にこんなに注意されてるのに、行かないわけには行かない。
「いま、やばいって言ったのに、着替えようともしてないじゃない」
再び森からの怒声が飛んでくる。
でも、誰にも相手をされないよりはかなりまし。
事実、こいつがいてくれたおかげで何回も、学校に来ようとやる気が出たときがあった。
(まあ、こいつに感謝しないとな)
自分は、かなりの無表情だが、礼を言えないわけではない。
「ん。センキュ」
この“センキュ”には、今までのことも入れて、言った。
実質、体育をやってみたのだが、はっきり言って全部だめ。
去年は、たしかに何でもできたのだが、今年はてんでだめ。
(まあ、いいか)
おれは、マイペースだからそんなことは気にしない。
まあ、一生をのんびり生きてりゃいいんじゃねえのか。
そんな考えがいまは、おれの頭には回っている。
でも、あの闘いになったらそんな考えは通用しない。
一歩間違えれば、誰かが死ぬかもしれない闘いだ。
闘いの中で得た、仲間たちが死ぬのはいやだ。
とくに、おれを救ってくれる森には特に死んでほしくない。
べつに特別なわけじゃない。でも、あいつが死ぬのは一番いやなことだ。
おれにはそのことがなにか、わからない。
(なんで、いつもあいつのこと考えるのかな?)
いつも闘いのときは、あいつを一番にかばう。
それも無意識のうちに。
そんなことを考えていると、自然に目線が、離れたところで走っている女子のほうに向いた。
とはいっても、目線で追っているのは、森だけだが。
(なんで、おれはあいつのいる場所がわかるのかな)
最近は特にそうだった。
話しかけられるだけで、自分は幸せな気分になる。
笑ってもらえるだけでも、幸せな気分になる。
でも、泣いてるところを見ると、とっても心配になる。
それは、森だけを対象にして起こっている現象なのだ。
かすかに森が、こっちを向いて笑った感じがした。
その瞬間、おれは顔が赤く染まった。
(なんでかな?)
おれのこの気持ちがなんだかはわからない。
でも、これだけはいえる。
おれにとってあいつは、ふつうの人間よりも、気になる存在ということが・・・。
終了
あとがき
配布小説第一作目です。どうでしたでしょうか。
まだ、恋にきづかない、植木を書いてみました。
こう書いたら、次の作品はどういうものか、わかりますね。
まあ、次の作品もお楽しみにしていてください。
以上、朔夜でしたー。