初めての・・・
植木たちは、鈴子の豪邸で、休日を過ごしていた。
「あ、鈴子ちゃん。そろそろ帰らなきゃ」
森が、そういったのは、もうすでに、時間が7時くらいだったのだ。
この時間だと、夕食を食べている人もいるはず。
森は、それで帰ろうとしたのだ。
すると、鈴子が
「まってください。今日は、みなさんのために、世界三大珍味を持ってきたのですわ」
「せ、世界三大珍味!?」
植木たちは、驚愕した。
テレビで見たことがある世界三大珍味。キャビア、トリュフ、フォアグラの三つである。
テレビを見ていると、とても豪華な料理で、一皿2万円はくだらない。
おそらく、一生のうちに一回、食べれればいいところだろう。
「ホンマかいな!?鈴子!」
佐野は、一度は食べてみたいものだったので、鈴子が言った言葉を聞いて、夢ではないかと思った。
「ええ。みなさんのために、5万円もかけて、買ってきましたわ」
「ご、5万円!?」
またまた、植木たちは、驚いた。
特に植木。自分の家の食卓は一日何円だろう。
おそらく、2000円くらいではないだろうか。
5万円といったら、その25倍。
はっきりいって、けた違いである。
(どんな味がするんだろうな。世界三大珍味)
あまり表情には出さないが、植木も期待はしていた。
「では、料理の準備ができるまで、少々お待ちくださいませ」
そういうと、鈴子は、部屋を出て行った。
残った部屋で、植木たちは、世界三大珍味を楽しみに待っていた。
「あの、いつもテレビでみとるもんが、今日食べれるんか。たのしみやのう」
佐野とヒデヨシは、かなり喜んでいる。
「ちょっと、あんたら、喜びすぎよ。世界三大珍味って言っても、たかが食材なんだから。一番大事なのは、それでできる料理よ」
森の言っていることは、確かに正論であるが、そんなことはどうでもいい。
「なんや、森。おまえは、世界三大珍味が食べたくないんか?」
「そ、そんなことはいってないでしょ」
森もやはり、期待はしているようだった。
「ところで、植木はどうなのよ?」
「へ?なにが?」
植木は、テレビでやっているバラエティーを見ていたので、話を聞いていなかった。
「だから。世界三大珍味が食べれてうれしいかって聞いてるの」
しかし、植木は、答えようとしない。
「ちょっと、植木!無視してないで、答えたらどうなの?」
「楽しみだ」
それだけを言うと、また植木はテレビのほうに顔を向けた。
「ちょっと、嬉しいのなら、嬉しいっていいなさいよ」
「いいじゃん。別に。食べれるから」
相変わらず、植木はマイペースである。
(はぁー、こいつは。佐野たちみたいに興奮しないのかなー?)
それから1時間ぐらいたち、8時をちょっとすぎたころ、鈴子が入ってきた。
「みなさん。食事の用意ができましたから、来てください」
1番最初に、食堂に向かったのは、佐野だった。
「ちょ、ちょっと。佐野くん。廊下は走らないでください」
「いいやんか。別に。世界三大珍味が待ってるんやで」
いま、佐野の頭の中を支配しているのは、まちがいなく、世界三大珍味である。
「はぁー。まったくあの人は・・・」
とはいっても、鈴子は、佐野たちと食事をできることが楽しそうに見える。
「じゃ、植木。あたしたちも行きましょ!」
「ん。ああ、わかった」
植木は森に、手をにぎられ、食堂へと向かった。
先に行っていた、佐野たちが入り口で止まっていた。
「どうしたの?」
「あれ、見てみい」
佐野が指差す方向を見ると、それは見事に鮮やかな料理があった。
「すっごーい。なにあの料理」
「あれが今日のメインディッシュ。世界三大珍味のマリネですわ」
世界三大珍味を惜しみもなく使った、まさしくごちそうである。
植木たちは、しばらくその料理を眺めていた。
「さ、料理も冷めてしまいますし、はやくいただいてください」
「お、おう。そうやな」
佐野は、正気に戻り、席に座る。
植木たちも、料理のほうを見ながら、席に座る。
「ごゆっくりお楽しみください」
おそらくこの家の執事であろう人物が、部屋を出て行った。
植木たちはさっそく食べ始める。
「うめー。なんだこれ」
「こんなん。初めて食べたで」
「おいしーい。鈴子ちゃん、おいしいよ」
「そうですか。よかったですわ」
みんなの様子を見て、鈴子はとっても嬉しそうだ。
問題はというと、あのマリネである。
先ほどから、佐野とヒデヨシがねらっているのだが、植木がちょうど欲しいところばっかりもらっていく。
植木にとっては、食べたいところを食べるでいいのだが、佐野たちはだまっていない。
「こら、植木!おれらの食べたいところばっかり食べんなや」
「いいじゃん別に。食べたいところを食べたっていいだろ」
この緊迫した空気にも、植木はマイペースである。
森は、他のものばっかり食べているので、話には関係ないのだが、あまりにも、佐野たちがくどいので、
「あー、もう。そんなこと言ってるくらいだったら、さっさと食べればいいじゃない」
これには、植木たちも沈黙。何にももめることなく、食べだした。
「すごいですわ。あいちゃん」
「まあね。これ位ガツンといってやらないと聞かないしね。こいつら」
女子たちは、かなりふんわりムードである。
男子たちはというと
「おい、佐野のせいで怒られたじゃねえか」
「なんでや。だいたい、植木が取るからあかんのや」
「おれが取ったって、いいじゃねえか」
「うるさい!」
またまた、森の一言で、黙る男子たちだった。(笑)
結局残ったのは、マリネだけだったが、最後はわけが違う。
(なぜか)フォアグラがたくさん乗っているところと、キャビアがたくさん乗っているところだけが残っている。
これには、森たちも参戦している(笑)
「わいは、フォアグラがほしいんや」
「おれだって、フォアグラがほしい」
「おれ、キャビア食べてねえから、キャビアがくいてえ」
「あたしだって、食べてないわよ。植木は、トリュフとかフォアグラとか食べたからいいでしょ」
この戦闘の状態は、フォアグラ・・・佐野VSヒデヨシ キャビア・・・植木VS森である。
フォアグラのほうは、佐野が先手必勝とばかりに、仕掛けたのだが、ヒデヨシによまれており、逆に食べられてしまった。
そのときの佐野の顔といったら、バトルで負けたときよりも、悲惨だった。
一方のキャビアをめぐる闘いでは、植木と森がキャビアをスプーンですくって、食べあっていた。
そこに、さっき、フォアグラを食べ損ねた、佐野が入ってきた。
するとその瞬間。
「入ってくるんじゃないわよ!!!!!!!」
「邪魔すんな!!!!!!!!!」
二人の怒声が、鳴り響いた。
これには、佐野も恐れて引いた。
結局は、どっちもちょうどいいくらいに食べ終わった。
それから、すぐに帰ることになった。
時刻は、すでに、9時になっていた。
「あぶないですから、お気をつけてお帰りください」
「じゃあね。鈴子ちゃん」
「うまかったで」
「ありがとうございます」
そういって、鈴子の家を出た。
帰り道に、植木と森が話しながら、帰っていた。
「ねえ。あたしたち、すっごいくだらないことでもめてたんじゃない」
「ああ、そうかもな」
今日の、自分たちが争っていたことを思い出して、森は笑っていた。
植木は、森のその笑顔を見ていた。
「森!」
「何?うえ・・・」
その後の言葉は出なかった。
唇が唇でふさがれてしまったから。
「んっ。う、植木!?」
森は、植木の舌が自分の口の中に入ってくる感触に驚いた。
「んんっ。んっ・・・」
深く、甘ったるいキス。
森は、初めてのことに、動揺を抑えきれなかった。
(う、植木!?どうしてこんなことするの?たしかに、いままで、キスされたことはあったけど、こんなキスなんて・・・)
植木の舌が、森の舌を絡めとった。
「ふっ。んっ・・・」
抵抗する力もなくなり、植木の成すがままになっていた。
しばらくして、植木がやっと唇を離した。
「ぷ・・・ぷはー」
いままで、呼吸があまりできなかったので、森は思い切り息を吸った。
「植木、なんで・・・」
森が言葉を言い終わる前に植木は謝った。
「ごめん」
「え?」
植木が謝ったことに驚いた。
「おれ、どうかしてた。森の笑顔を見たら、いきなり、こんなことしちまって・・・おれは、こんな風にして、森に想いを伝えたかったわけじゃないのに。それなのに、お前の笑顔を見たら、他のやつにおまえを渡したくなくなって」
植木は、森が、自分以外の人間と結ばれることを恐れていた。
「森だって、嫌だっただろ」
すると、森は植木に飛びついた。
「森!?」
いきなりの出来事に、動揺を隠せない植木。
「べ、別に、嫌じゃないわよ。それに、あ、あたしはあんた以外は興味ないし、植木を置いてどこかにいけるわけないじゃない。でも、植木がそんな風に思ってくれてたなんて」
「嫌じゃなかったのか?」
「そ、そうよ。それに、あたしはいつか、こういうことを待ってたのかもしれないし、植木が、あたしだけを思っててくれたなんてとっても、嬉しいし」
すると、植木が森を抱きしめ返した。
「森、好きだ!」
「う、うん。あたしも・・・」
やっと、自分の気持ちを伝え合った二人。
やがて、静かに二人の影が重なった。
終了
あとがき
言いますが、かなり書いてるとき恥ずかしかったです。
中学3年生なのに、こんなことを書くなんてだめですね。
タイトルは、初めてのだったので、初めての世界三大珍味とディープキスということでした。
これを企画以外で乗せるのは、いくらなんでもやばいです。
だって、植木のキャラかわってんじゃん(笑)
こういうのは、たまにかくことにします。
以上、朔夜でした!!!
2004年11月29日