人って・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日、森に誘われて、森の家に来ていた。
 
用事は、勉強を教えてあげるということだったので、自分だけではあまり勉強がはかどらないので、いつも森に協力してもらっているのだ。
 
だからといって、森の家に来たのは、初めてである。
 
当然、森の部屋に入ったことはない。
 
しかも、今日に限って、親が出かけているというのである。
 
森の部屋にいると、癒される感じがする。
 
「ねえ。植木、聞いてる?」
 
森の声で正気に戻った。
 
「ん。なんだ?」
 
「なんだじゃないでしょ。さっきから、数学教えてるのに、手が進んでないから」
 
すっかり、森の部屋の居心地の良さに酔いしれていた。
 
(ここに、ずっといてえな)
 
なんて、ありえないことを願った。
 
やがて、宿題を終わらせて、帰ろうと外を出た。
 
しかし、帰ることはできなかった。
 
大雨でかみなりがなっていた。
 
さすがに傘を持っていたが、このままでは帰ることができない。
 
「植木、どうしたの?」
 
森が、一行に出て行こうとしない、おれを見て外の様子を見た。
 
「あ、これじゃあ、帰れないわね」
 
外の様子を見て、森はやれやれとため息をついた。
 
「いい。邪魔になるから、帰る」
 
さすがに、こんな時間にお邪魔になっているのは、いけないので帰ろうと思った。
 
「こんなときに帰ったら、風邪引いちゃうかもしれないじゃない」
 
森が、おれを心配してくれることは嬉しかったが、やっぱり、森の家にいることはいけないと思った。
 
「大丈夫だって、風邪ならすぐ治るから」
 
すると、そのあと森がとんでもないことを言った。
 
「うち、今日お父さんでかけてるから、別にいてくれていいよ。お姉さんには説明しておくから」
 
(だから、いやなんだって)
 
自分の悩みを森が知るわけもない。
 
「暖かいものだしとくから、居間にでもいてよ」
 
強引に森に進められたので、断ることもできない。
 
しぶしぶ、居間にいることにした。
 
(あいつ、どんな風に思ってるんだろ)
 
植木は、森のことが好きだったが、森はどんな風に思っているのかしらなかった。
 
今回も、風邪を引くのはかわいそうだから、という優しさで泊めてくれるのかもしれない。
 
しかし、いっこうになっても、森が居間に来ない。
 
一瞬、不安に思って、台所に向かった。
 
すると、そこにはビンが転がっていた。
 
(な、なんだここ。酒くさい)
 
転がっているビンを見てみると、アルコールという言葉が見えた。
 
(げ!あいつ、これ飲んだんか?)
 
そうだとしたら、森はどこにいったんだろうと思い、しばらく探していると、突然後ろから引っ張られた。
 
「植木〜!」
 
それは森だった。とはいっても、かなり酔っ払っているのは、見てわかる。
 
それどころか、森の顔が思い切り、自分の目に映る。
 
(う、森、頼むから、こんな目で見つめないでくれ)
 
くだらないことを考えていると、森が胸に飛び込んでいた。
 
「植木〜。探してたんだよ〜。どこ行ってたの?」
 
「森が居間にいろっていったから、居間にいたけど」
 
植木が答えると、いきなり森が泣き出した。
 
森がなくところをあまり見ない、植木は驚いた。
 
「ど、どうしたんだ?森?」
 
「帰っちゃったかと思った。せっかく二人きりだったのに、あたしのこと嫌いだったのかなって思っちゃったの」
 
(も、森!な、なに言ってるんだ)
 
あまりにも大胆な言葉に、植木は顔が赤くなる。
 
「お、おれがお前に、何も言わずに帰るわけないだろ」
 
「本当〜?」
 
抱きつかれながら、こっちを見てくる森。
 
(お、お願いだから。その目はやめてくれ)
 
すると、森は、さらに抱きついている手を強めた。
 
「嬉しい!あたし、植木のこと好きだから、植木がそんな風に思ってくれてたなんて知らなかった。」
 
(い、今。なんて言ったんだ、こいつ)
 
先ほどから、森の行動に翻弄されっぱなしの植木である。
 
酔っ払っているときの森は、ふつうのときよりもかなり大胆で、泣き上戸だ。
 
こんな状態の森を見ていたら、いつ、理性が切れるかわからない。
 
「ねえ。植木に、お願いがあるんだ」
 
「なんだ?」
 
「キスして!」
 
「え!?」
 
(えーーーーーーーー)
 
言葉でも、心の中でも、森の“キスして”の言葉が回る。
 
なんで、こいつはこんなにも大胆なんだと思う。
 
「な、なんでおれなんだ?」
 
「だって、植木のこと好きだから!好きな人と、ファーストキスをしたいって言うのは、女の子の願いなんだよ」
 
何もいえなくなってしまう。
 
「だめなの・・・?」
 
目元をウルウルさせて、森が近づいてくる。
 
もう、自分を支えていたのは、理性だけだった。
 
だが、いつまで理性を持てるかわからなかった。
 
「植木は、あたしのこと嫌いなの・・・?」
 
この言葉で、おれの理性は完全に切れた。
 
「そんなわけない」
 
おれは、森の唇に、自分の唇を重ねた。
 
何度も、何度も・・・
 
やがて、唇を重ねたまま、深い眠りに入ってしまった。
 
次の朝、森は起きたときの自分の状態にすぐに気づき、恥ずかしさと、どこかに嬉しさで、顔がまっかっかだった。
 
一方の植木も、起きたときの森の反応で、恥ずかしくなったそうだ。
 
おまけ
 
「知っとるか、植木」
 
「なにが?」
 
「よっぱらっとるときに、出る言葉は、本人が思っていることなんだと」
 
「え!?(つまり、森は、おれと二人きりでいることがよかったのか)」
 
「ま、噂なんやけどな。って、植木聞いとるか。おーい」
 
しばらく、植木は、考えていたそうだ。
 
終了
 
 
 
あとがき
ありえねえー。かなり、酒癖の悪い森と、かなり動揺している、植木を書いて見ました。
キャラクターは変わってます。(かなり)
もうちょっと、かきたかったな。
甘さは、まあまあといったところでしょうか
以上、朔夜でした
 

2004年11月6日