ホワイトクリスマス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
12月24日。
 
クリスマスイブ。
 
この日、いろいろなカップルはプレゼントを交換し合う。
 
そのプレゼントをもらうだけで、思いがつながっていると確信するのだ。
 
あの二人もそれは例外ではなかった。
 
12月23日。
 
クリスマスイブ前日。
 
「ね。明日、いっしょに過ごそうよ」
 
「ああ、いいぞ」
 
植木と、森はクリスマスイブを、いっしょに過ごすことを約束した。
 
「じゃあ、明日、あたしの家の前でね」
 
「ああ、わかった」
 
この二人は付き合いだして、始めてのクリスマスだ。
 
最近は、クリスマスよりも、クリスマスイブのほうがカップルたちにとってはメインになる場合が多い。
 
森は、この日までの間に、マフラーをがんばって編んでいた。
 
(明日は、クリスマスイブだから、がんばらなきゃ)
 
もう少しで、マフラーは完成する。
 
ラストスパートとばかりに、森はがんばっていた。
 
植木も、明日に森に渡すプレゼントを考えていた。
 
(森は、なんだったら喜んでくれるかな?)
 
植木も、一日中森へのプレゼントを考えていた。
 
大事な日の前日というものは、長く感じるものだ。
 
12月24日。
 
クリスマスイブ当日。
 
この日は学校がある。
 
当然、こんな日の学校はめんどくさいの一言なので、やる気が出なかった。
 
(はやく、学校終わってくれないかしら?)
 
(学校、終わったら森へのプレゼントを買いに行かなきゃな)
 
二人の思考のなかには、勉強ではなく、今日のクリスマスイブのことしか入っていない。
 
余談だがこの日、二人が授業中に名指しで注意を受けたのは、言うまでもない。
 
 
やがて、学校が終わると、二人は急いで学校を出た。
 
(急いで、マフラーを完成させなきゃ・・・)
 
(あれ・・・どこに売ってるのかな?)
 
久しぶりに、二人で帰らなかった。
 
それぞれの目的を果たすために、二人は急いで家に戻った。
 
森は家に着くと同時に、マフラーを編み出し、
 
植木は、家に着くと、急いで服を着替え、森へのプレゼントを買いに行った。
 
約束の時間まで、あと2時間・・・
 
 
「できた!」
 
森がマフラーを完成させたのは、待ち合わせ時間まであと30分を切ったときだった。
 
(あたしにしては上出来ね)
 
植木に似合う、紺色のマフラー。
 
ところどころ、ちょっとだめになっているところもあるが、必死にがんばった。
 
(植木、喜んでくれるかな?)
 
森は、植木が来てくれるのを待っていた。
 
 
一方の植木も・・・
 
「あ!あった」
 
森が喜ぶと思うものをやっと発見した植木。
 
発見したときには、待ち合わせ時間まで20分を切っていたときだった。
 
「やべ!急がないと・・・」
 
植木は、電光石火をつかって、急いで森の家に向かった。
 
(森、喜んでくれるかな・・・)
 
手作りではないが、森に喜んで欲しい。
 
二人の思いは、離れていても、つながっている。
 
 
(遅いなー。植木・・・)
 
すでに集合時刻から10分たっている。
 
(もしかして、寝てるのかな?)
 
家の中に戻って、電話をしてみようと思ったとき。
 
(あ!)
 
見えた姿は、愛しい人だった。
 
電光石火で、こっちに向かってきた。
 
「森、ごめん!遅れた・・・」
 
別に少し遅れても、植木が忘れてなかったことが嬉しかった。
 
(あたしは、植木が来てくれただけで嬉しいよ・・・)
 
そう思って、植木のほうに視線を落とす。
 
植木の手には、ひとつの紙袋。
 
(もしかして、プレゼントかな・・・)
 
「いいよ、別に。早く行こう!」
 
「ああ!」
 
二人は、いそいで大通りに向かった。
 
 
植木は、森といっしょに過ごせることが嬉しかった。
 
(森、待っててくれたんだよな・・・それに、かわいい・・・)
 
自分のそばに森がいてくれることが、幸せなのだ。
 
(森には、ずっと、そばにいてもらいたい・・・)
 
急いで向かったのは、そのせいかもしれない。
 
森の顔が早く見たいから。
 
森と早くいろんなところを回りたいから。
 
自分にとって、きみは――森は、なによりも大切な存在。
 
 
森も、植木といっしょにすごせることが、嬉しかった。
 
いつもとはちがう、植木のコート姿。
 
(植木って、やっぱりかっこいいよね)
 
自分を守ってくれる姿は当然、かっこよかった。
 
でも、こうやって見てみると、やっぱり植木はかっこいいのだ。
 
(植木じゃなかったら、マフラー、がんばって作らなかったかも・・・)
 
植木に渡すからこそ、最後まできちんと作ろうとしたのかもしれない。
 
作っているとき、一度も無理と、考えなかった。
 
(やっぱり、植木はわたしにとって、大切な人なんだなー)
 
植木のことは何よりも好きで、信頼している。
 
植木は決してうそをつかない。
 
だから、植木を完全に信じることができるのだ。
 
植木が少し遅れたって、来ないと思ったことはない。
 
私にとっても、あなたは――植木はなににおいても、大切な存在になっている。
 
 
二人で手を繋いで、大通りに出ると、いろいろなカップルが道を歩いていた。
 
木には、イルミネーションの光が点灯しており、大通りを明るく照らす。
 
いつもは、車のライトで照らされる大通りも、今日ばかりは、違うようだ。
 
「うわー。きれい」
 
「そうだな・・・」
 
しばらく、その景色に見とれていた。
 
「ねえ。ここらへんで、一番大きなクリスマスツリー見に行かない?」
 
「あ、ああ。いいぞ」
 
大通りを少し進むと、大きな木が見えた。
 
「すげえ」
 
「すごい」
 
素直な感想をいだかずにはいられなかった。
 
幻想的な光が町を映し出し、行きかう人びとを照らしている。
 
ふたたび、その景色に見とれていた二人。
 
 
「じゃあ、そろそろ帰るか・・・」
 
「うん」
 
やがて、大通りから遠ざかり、にぎやかな雰囲気はなくなった。
 
すると、空から白く、冷たいものが降ってきた。
 
「あ!雪」
 
「雪か・・・」
 
今日は、いろいろな景色を知ることができた。
 
「一日早いけど、ホワイトクリスマスだね」
 
「ああ」
 
すると、森はかばんから、マフラーを取り出した。
 
「これ。クリスマスプレゼント・・・」
 
植木は、首にかけた。
 
「あったけえ」
 
「がんばって、編んだんだからね・・・大切にしなさいよ・・・」
 
森の顔が、かすかに朱に染まっている。
 
「森が編んでくれたものだから、絶対に大切にするよ・・・」
 
自分の編んだマフラーをつけた植木は、優しく笑ってくれた。
 
それが、とっても嬉しかった。
 
イルミネーションの光が消える。
 
不意に植木が話し出した。
 
「なあ、森、目、瞑ってくれるか?」
 
「え?」
 
「おれも、おまえにクリスマスプレゼントがあるんだ・・・」
 
「う、うん。いいよ」
 
森は目を瞑った。
 
少し心の奥でドキドキしながら、植木からのプレゼントを待つ。
 
すると、首のまわりが暖かくなった。
 
「目、開けていいぞ」
 
森が目を開けてみると、自分の肩には、マフラーがかけられていた。
 
「森に似合うのを買ってきたんだ・・・」
 
「植木、ありがと・・・」
 
「もうひとつ、プレゼントがあるんだ」
 
「え?」
 
不意に、植木の顔が近づいてくる。
 
森は再び目を瞑った。
 
再びイルミネーションが点灯し、重なる二人を照らし出す。
 
幻想的な光の中、植木と森の唇は重なった。
 
「来年も、再来年も、いつまでもいっしょにクリスマスイブを過ごそうな・・・」
 
「うん。植木とは、ずっといっしょにいようね」
 
サンタクロースが願い事をかなえてくれるという、クリスマス。
でも、わたしたちには、サンタはいらない。
だって、わたしにとってのサンタは、あなただから・・・
あなたなら、わたしの願いをかなえてくれる。
 
そして、VERY MERRY CHRISTMAS!
 
終了
 
 
 
あとがき
よっしゃー。クリスマスネタ終了って、クリスマスイブネタになってますが・・・
まあ、気にしないでください。
最後の終わり方は甘くしました。
気にいっていただけたでしょうか?
以上、朔夜でしたー!
 

2004年11月6日