世の中は実力主義…。

それは、テストの結果にも言えるし、仕事による収益の結果にも言える。

結果さえよければ、全てよし…ともいう。

それじゃあ、大して結果を出せない人間は…役立たずなのだろうか。

世の中、結果ばかりで人生が決まってしまったら…つまんないと思わないか?


「んじゃ、テスト返すぞー」

「うえっ…。この点数だとちょっとやばいかなぁ…。植木はどうだった?」

「ん? 見たいのか? ほれ」

「…って、31点!? 赤点ギリギリじゃないのよ!?」

「へぇ。そうだったのか…」

「そうだったのか…ってあんたねぇ、…赤点になったら夏休みも消えちゃうし、成績も悪くなっちゃうし、挙句の果てには進級できないこともあるのよ?」

「ふーん…」

「ふーん…って、あんた、ちゃんと分かってる?」

「ん? 要はテストであまり悪い点を取るな…ってことだろう」

「あまり…というか、取っちゃダメなのよ」

「…でもさ、例え赤点だったとしても、俺は別に構わないけどな…」

「へ?」

「だってさ、どんな結果でも、ちゃんと努力してれば『自分ではがんばった』って思えるじゃん…。それだけでも、達成感はあるし…それに失敗を生かして、次に繋げることもできるしな」

「…植木」

「結果、結果、結果とか言うけど…。それじゃあ、テストの結果さえよければ、毎日だらけた生活をしていい。…ってわけじゃないだろう? 毎日の積み重ねとそれにプラス結果が加わることで、本当にその人のことがわかると思うんだよな…」

「…それは…そうね」

「好きな奴のことだってさ…」

「す、好きな奴!?」

「…どうした?」

「…な、なんでもない。続けて…」

「お、おう。…ほら。先に顔だけで人を決める人間っているじゃん。…でもさ、結局最後は相手の人柄とか性格の相性とかで決めるわけだろう? 偶然、そういう人に当たったならいいけど、顔とかだけでそんなことってわかんねぇじゃん。その人と喋りだして、初めて相手のことが分かるようになるわけだろ?」

「う、うん…」

「確かに結果は大事だと思う…。でも、結果ばかり大切にしていたら、大切な何かを見失う…。そんな気がするんだ…」

「…」

「…森もそうなのか?」

「…まぁ、…そうかもね」

「…? 何でこっちを見るんだ?」

「な、何でもない!」

「…変な奴…」

(…私だって最初は見た目から植木は変な奴って決め付けてたけど…話し出したら…全然変な奴じゃない。仲間思いのいい奴って…分かったのよね)