なにげない日常
「植木!また、あたしの弁当食べようとしないわね!」
植木は、森に誘われて、大きな公園に来ている。
「だから。それは、うまいんだけど、見た目が・・・」
森の料理は、確かにうまいのだが、料理の見た目がかなり悪い。
まるで、たこのような形をしたものだからだ。
「いいわよ!今度、佐野に渡すから」
すると、植木は、その“佐野”ということばを聞くと、弁当を食べだした。
(佐野に、この弁当は渡せねえ)
無心に弁当を食べている植木を見て、森は疑問に思った。
(植木?どうしたの?)
さきほどまで、ずっと拒んでいた植木が、自分が少し怒ったら、バクバクと食べ始めたからだ。
(なんでかな?あ、ひょっとして、あたしをこれ以上怒らせたくないからかな・・・)
まったく違う答えを出した森。
そんな、ことを知る由もない、植木はやっぱり弁当を無心に食べている。
あまりにも、食べているのに、なにも言わないので、森は聞いてみた。
「ねえ、植木!食べてばかりじゃなくて、感想言ってくれない?」
すると、植木は森の弁当の中身を口にくわえたまま
「うめえ」
とだけ言った。
森は、植木に喜ばれたことが嬉しかった。
(作ってきてよかった!)
無心に食べている植木を、嬉しそうな顔で見ている森。
こんなふつうの日常を送れるのは、こんな休日の間だけなのだ。
休日が過ぎれば、またバトルが待っている。
そうなれば、この二人の身には危険が迫る。
植木にとっても、森にとっても、こんな公園で安心して休めるのは、わずかの間だけなのだ。
「ねえ、植木」
「ん、なんだ?」
植木は、まだ弁当を食べていた。
「いつになったら、こんなふつうの日常になるのかな?」
「さあな」
森が聞いたことが、どうでもいいように答える植木。
(なに、こいつ!あたしが本気で聞いてるのに)
すると、植木が言った。
「別にこのままでもいいことがあるじゃん。戦いの前とは違って、たくさんの仲間ができたし、友達もできたから」
「植木・・・」
植木にとっても、森にとっても、たしかに、今までかかわりがなかった、佐野、鈴子、ヒデヨシたちや、いろんな人に逢えた。
それは、なによりも頼りになる仲間ができた証拠だ。
こんな仲間ができたのは、神を決める闘いのおかげなのだ。
「ねえ、植木。あたしね、できたらこのまま時間が止まってほしい」
植木も、森の言ったことに興味を示したのか、森のほうを向いた。
「だって、今なら、植木もいるし、鈴子ちゃん、佐野、ヒデヨシっていう、仲間もいて、楽しい。でも、未来になったら、植木とも、離れちゃうし、鈴子ちゃんや、佐野たちにも会えなくなるかもしれない」
話を聞いていた、植木が口を開いた。
「べつにいいじゃねえか。時間が止まらなくても」
「え!?」
森の考えとは裏腹に、植木はこのままでなくてもいいという。
「だって、佐野たちに会えないんだよ!あたしとだって、離れちゃうんだよ・・・」
「絶対に、会えなくなるわけじゃねえだろ」
「え!?」
「おれらが、出会ったのは、偶然じゃない。運命なんだ。生きてりゃ、いつか、きっとどこかで会える!」
「植木・・・」
植木の言葉は、森を感心させた。
たしかに、戦いが終わったら、関係がなくなる。
だからといって、会えなくなるわけじゃない。
生きているのだから、どこかで会える。
植木は、そう言うのだ。
「植木、あたし、まちがってた」
「でも、森の考えも悪くはないぞ」
ああ、こんななにげない日常が、いつまでも続いて欲しい。いつまでも・・・
終了
あとがき
リュトさんからのリクエストで書いてみました。
だめですね。ほのぼのか、わかりません。
ごめんなさい。駄文で。
今度は、きちんとした小説を書くのでよろしくお願いします。
以上、朔夜でした!
2004年12月14日