年中無休


「熱い…」

「…そうか?」

 植木の反応にため息をつきながらも私は言った。

「…あんたがくっついてるからよ…」

「…俺は熱くないけどな」

 植木はニカリと笑いながら言う。

 何だか…やっぱり、騙されてるのよね。私。

 こんなことを堂々とされてると、やっぱり恥ずかしいとか思うのが普通。

 でも、何だか…植木の笑顔を見てると、恥ずかしがっている自分が馬鹿みたいに思えてくる。

 愛情表現は、いっつも正直で…やっている植木よりも、やられてる私のほうが恥ずかしくなっちゃうものばっかり…。

 はぁ…。何でこんな奴のことを好きになっちゃったんだろ…

「ん? どうかしたのか? ため息なんかついて…」

 思っていただけなのに、現にため息ついちゃってるし…。

「なんでもないわよ…」

 と、言いつつ私は視線を植木から逸らす。

 とはいっても、植木は後ろにいるから…ほとんど意味がないけど…。

「森…。寒いか?」

「…熱いわよ。今、何月だと思ってるのよ」

「8月…」

「…あんたは8月が寒いって思うわけ?」

「いや…俺も熱い…」

「じゃあ、何で聞くのよ」

「…森が寒かったら、俺が暖めてやろうかなぁ…って思って」

 …馬鹿だ。きっと、こいつ…。

 ううん。馬鹿ってレベルじゃない。大馬鹿だ…。きっと。

「べ、別にいいわよ! そんなことしなくて!」

 でも、そんな彼の気持ちを嬉しく感じる私は…もっと馬鹿なんだろうなぁ。

 彼の心の温かさは…いつでも年中無休…なんだよね。