オムライス

 

 

私にとって、愛情表現というものは…難しいものだと思う。

ほら。例えば…「好き」と、たった二文字の言葉を言うだけでも…これ以上ないほど恥ずかしい。

それに、あの彼のことだ…。

そんなことを言えば、調子に乗るに決まってる…。

前なんて…、その…急に抱きついてきたしさ。

あっ! 決して、自分から言ったんじゃないからね!? 何ていうか…場の雰囲気に流されたっていうか…。

と、とにかく、そんな感じ!!

まぁ、意地っ張りな自分の性質も、きっと関係してると思うんだけどね。

だけどさ……。

ほら。やっぱり、好きな人からの愛情表現がなくなっちゃうと…少し不安になっちゃうよね?

きっと、一番の親友が、一日中話しかけてこないのと同じぐらいだと思うのよね…。

友達からは、「羨ましい」とか「愛されてる」とか言われてるけど…やっぱり不安になっちゃうのよね。

…って、考えてもみれば、彼からの愛情表現なんて毎日…あるわね。

登下校のときに抱きついてきたりとか…、ペアのチケットを渡してくれたりとか…。

後者はまだいいんだけど…、前者だけは、ちょっとやめてほしい気もするのよね…。

あっ! 決して、彼のことが嫌いなわけじゃないよ!?

やっぱり…恥ずかしいじゃない。たくさんの人に見られるとさ。

でも…最初のころの無愛想さに比べれば…、彼は結構、変わったと思う…。

それに…何だか、かっこよくなったしさ。

…そう考えてみると、やっぱり私からも彼に愛情表現が必要なのかな…。

私は…いつも彼の勢いに流されっぱなしで、それで拒絶しちゃうことが多いのよね…。

彼は気にしていないように振舞ってるけど…本当は傷ついてるのかな?

…とはいっても、直接本人に聞くわけにもいかないし…。

第一、本人に聞いても…「気にしてないから」って言うに決まってるわよね…。

…はぁ。こうやって考えてみると、恋人って大変なのね…。

嫌われたくないのに、恥ずかしくて拒絶しちゃう…。

私たち以外のカップルも、やっぱりそういうことで悩んじゃうのかしら?

…今度ぐらい、彼にちょっとした愛情表現をしてあげようかな…。

堂々としたことはできないから…ちょっとしたことでいいのよ。ちょっとしたことで…。

……そうだ。今度、オムライスを作ってあげようかな。

それで、ケチャップでハートマークでも描いてあげたら…喜んでくれるかな。

うぅ…。こうやって、考えてみると…やっぱり恥ずかしいわね…。

……でも、私から出来る精一杯の愛情表現だもん…。

きっと…、彼も喜んでくれるわよね。

 

 

 

終わり

 

 

あとがき

何となく…久しぶりに書いてみました。お題小説…。

今回は、森の一人称…(というか、これは森か?)と思いつつ書きました。

…ついでに私は恋人はいません(←ここ重要)

第一、オムライスというものは自分で作って自分で食べることしかできません

…何故だか、書いてて…羨ましく…いやいや、恥ずかしく思いました。