スイートチョコレート
「さてと」
森あいは、部活を終えて、帰ろうとした。
「おーい。森」
校門の入り口で待っていた男子がいた。
「植木!あんた、今日部活なかったんじゃ・・・」
そう、今日は植木の所属する陸上部は顧問の先生が留守で、部活がなくなっていた。
森を待っていたことはわかるのだが、部活が終わるまで2時間近くはたっていた。
もう、午後7時だ
「だって、こんなに暗いのに森が1人で帰るなんてあぶないだろ。だから・・・」
植木はこういうところが優しい。
「ありがと・・・。心配してくれて」
じつは、森がひそかに想いを寄せていたのは、この植木耕助なのだ。
もともと、植木は女子に人気があったのだが、森がチンピラにからまれていたため、森を守るために「ゴミを木に変える能力」を一般人に使い、「女子に好かれる才」がなくなってしまったのだ。
だからといって、植木は森をせめたりはしない。いつも女子にいじめられているが、森が謝ると、「別に女子に好かれなくてもいいだろ」とか言って、気にも止めない。
森は、そんな植木の優しさに惹かれたのかもしれない。
2人で帰っているときに、森が思い出した。
(そういえば、明日はバレンタインデーよね。植木は知ってるのかな?)
そう思い、森は植木に聞いてみた。
「ねえ。植木。あんたって、甘いのか、苦いのかだったら、どっちが好き?」
「おれは、甘いものが好きだ!!」
植木は、即答した。森は心のなかで決めた。
(こいつには、バレンタインにスイートチョコをつくろうっと)
植木は、なんでそんなことを聞かれたのか、気づくことなく、森と分かれた。
森は、家に帰ってさっそくチョコレートを買ってきて、チョコを作り出した。
(えっと、チョコを溶かして、それで・・・)
「できた!」
何回も失敗したが、やっとうまくできた。せっかく作ったので、父親の分も作った。
植木に渡すチョコレートは、大事に冷蔵庫に冷やしておいた。
(なんかいざとなると、ドキドキするな)
森は、少し寝付けなかったが、やがて、深い眠りに入った。
2月14日 バレンタインの日だ。
「おはよう」
森は、自分の父親にあいさつをして、昨日作ったチョコを渡した。
「ありがとう。森、お父さんはうれしいぞ」
自分の父親には、ちいさなチョコレートを渡した。
「じゃ、いってきまーす」
森は、学校に向かった。
「いよっ。森」
「あ、う、植木。おはよ」
森は、植木がいきなり話しかけてきたので、一瞬でドキドキしだした。
植木は、いつもと違う森の様子に疑問をいだいた。
「どうしたんだ、森?」
「あ、な、なんでもないよ」
「そうか?」
2人は、あまり会話をせずに、学校に着いた。
学校内では、クラスの男子がいろいろな女子から、チョコをもらっていた。
しかし、植木は、女子に嫌われているため、ひとつもチョコがもらえない。
去年は、たくさんもらっていたのに・・・
(植木に、いつ渡そうかな)
森は、それに悩んでいた。
やがて、放課後になった。今日は部活がないので、みんなはそそくさと帰っていく。
森は、植木にチョコを渡そうと、植木を捜した。
捜していると、植木が1番奥のクラスにいるのが、わかった。
「うえ・・・・」
声をかけようと思ったが、森の目に飛び込んできたのは、植木と1人の女子だった。
「植木さん。あの・・・これ、受け取ってください」
植木は、同級生にチョコレートをもらっていた。
森は、女子が出て行くのをみてから、植木のいる教室に入った。
「森!?なんか用か?」
森は、植木が自分以外の人にチョコレートをもらったことが、いやでならなかった。
「よかったじゃない。チョコもらえてさ」
「み、見てたのか?」
「じゃあね。ごめんね。見ちゃって」
すると、森は教室を飛び出した。
「おい、森」
植木は、森を追いかけようとしたが、森はもう、廊下にいなかった。
(森・・・)
森は、いそいで、自分の家に帰り、自分の部屋に閉じこもった。
「バカ植木。女子にチョコなんてもらっちゃって。いつも近くにいたのは、あたしなのに、なんで、ほかの子にもらうのよ。そんなのやだよ。一番近くにいたのはあたしなのに、なんで、他の子のチョコをもらうのよ。あたしだけだと思ったのに」
森は、自分だけがふつうに植木と接することができると思っていた。
しかし、考えても見れば、罰が緩んだのだから、他の女子がいまだに興味を持っていたとしても、ありえない話ではない。
しかし、森は、自分だけが植木を特別に接していると思っていたのだ。
どれくらい時間がたっただろうか。
家に電話がかかってきた。
「もしもし、森ですが」
「あ、森。おれ」
電話の声の主は植木だった。
「植木!?な、何か用なの?」
「あ、あのさ。今日、バレンタインデーだろ。だから・・・」
「なに?」
「チョコをくれ」
「え!?」
なんと、植木からかかってきた電話は、チョコがほしいという電話だった。
「おれ、お前以外のは欲しくないんだ。だから、わがままかもしんないけど・・・」
森は、耳を疑った。
(え!?植木が、あたしのチョコ以外はいらないって言ったの?それって・・・もしかして・・・)
森はだまってしまった。
「無理は、言わないから、あの・・・チョコくれるんだったら、公園に来てくれないか?べ、別に、用事があったり、俺に渡したくないんならいいんだ」
「う、うん。わかった」
「じゃ、じゃあな」
すると、植木は電話を切った。
当然、森は今日、植木に渡すつもりだったチョコを持って、公園に向かった。
(渡さなきゃ。それで、あたしの気持ち、伝えなきゃ・・・)
それだけが、森の頭を支配していた。
公園では、すでに植木がベンチに座って待っていた。
(やっぱり、来ないだろうな)
植木が、諦めらめて、帰ろうとしたとき、公園に森が走ってきた。
「森!?来てくれたのか?」
植木は、森が来てくれたことがうれしくてたまらなかった。
「植木!」
森は、走ってきたので、息を乱していた。
「はい。これ」
森は、植木にスイートチョコレートを渡した。
「あ、サンキュー」
植木は森のチョコを受け取った。
森は、決心して言った。
「ごめん。今日、あんたが他の女子にチョコもらってるところ見たら、いやになって、だから、あのとき逃げたの。あの、それで、その・・・」
「森?どうしたんだ?」
「あ、あたしは、なんとも思ってない人にチョコあげるほどお人よしじゃないわよ」
森は、はっきり好きですとは、恥ずかしくて言えなかったが、自分では、精いっぱいの告白をした。徐々に、森の顔が真っ赤に染まっていく。
「森・・・俺も言いたいことがあるんだ」
「え?」
気づくと、植木が真正面に立っていることに気がついた。
「さっきのことはごめん。おまえが、そんなこと思ってるなんて思わなくて。でも、これだけは言いたい。おれが、電話で言ったことは、すべて本当のことだ。お前以外のチョコが欲しくないっていうのも」
「それって、どういうこと?」
「それは・・・おまえが、好きだからだ!」
「え?」
森は、まさか植木から告白されるとは思っていなかった。
「いつも、お前には、迷惑をかけちまった。それで、お前は、命の危険にさらされたこともあった。それなのに、おまえは、俺のそばにいてくれた。だから・・・」
森は思わず、植木の胸に飛び込んだ。
「わ!も、森?」
森は顔を胸に隠しながら、言った。
「もういいよ。わかったから。でも、これだけは言わせて。あ、あたしも、植木のことが好き!」
「ほ、本当か!森!」
「こんなときに嘘つくわけないでしょ」
「ありがとう、森。大好きだ!!」
「そ、そんなに言わなくてもいいわよ」
森の顔は、もうすでに真っ赤だった。
気づくと、植木の顔が近づいてくる。
森は思わず目を瞑った。しかし、抵抗はしない。
公園のライトで、できた影が二つに重なる。
しばらくたったあと、2人は、自然に離れた。
「これからもずっと一緒にいてくれ」
「うん!」
この2人には、これからたくさんの障害が待ち受けているだろう。
でも、2人なら、きっと乗り越えられる。
それが、きっと運命だから・・・
あとがき
第2作目書いてみました。かなりラブラブですね。少し最初は、シリアスを入れてみました。すこし、甘すぎたかな?でも、僕は、これくらいが一番いいですね。
これからも、植木×森などの小説をたくさん書いていこうと思います。
朔夜でした!!!!!
2004年11月6日