あなたが違って見えるとき
今日、森は植木に誘われ、植木の家に向かっていた。
(珍しいわね。植木の家に誘ってくれるなんて・・・)
付き合いだして、3ヶ月。
いままで、植木の部屋にはいったことはなかった。
まず、誘ってもくれなかった。
それが昨日・・・
「なあ、森。おれの家に来ないか?」
「え?うん。別にいいけど・・・」
「じゃあ、昼から来てくれよ」
「わかった」
植木から、誘ってくることといえば、公園の掃除くらいだったのだが・・・
だいたい、デートなどは森から誘うのだ。
(でも、植木の部屋に入るの楽しみ・・・)
男の子の部屋に入るのは初めてだ。
しかも、相手が付き合っている人となれば、わくわくするのが当たり前。
はやる気持ちを抑えて、植木の家に着いた。
―ピンポーンー
「はい」
「植木?あたし・・・」
「森か?じゃあ、入ってくれ・・・」
ーガチャー
森は、植木の家に入った。
入り口では、植木が立っていた。
「おれの部屋、こっちだから・・・」
すると、植木はそそくさと、自分の部屋があるというほうに向かった。
「あ、ちょっと待ってよ・・・」
森は急いで追いかけた。
「おれの部屋、ここ」
ある部屋の前で立ち止まって、植木は説明した。
どうやら、ここが植木の部屋らしい。
森は、植木の部屋に入った。
自分の部屋とは、また違う雰囲気を持っている。
(やっぱり、男の子なんだよね・・・)
部屋は、以外と片付いており、きちんと整理整頓されていた。
男子っぽく、漫画や、ゲームなどが置いてある。
そして、大きなベッド。
(植木は、ここで寝てるんだ・・・)
森は、そのベッドで寝そべりたくなる気持ちを抑えながら、床に座った。
沈黙が続く。
(なにを話せばいいんだろ?)
植木の家に来たのはいいが、話すことが見当たらない。
「なあ、森。ゲームでもするか?」
植木が話を切り出した。
「え?う、うん。でも、あたしゲームやったことないよ・・・」
「やり方ぐらい教えてやるから・・・」
「あ、それならいいよ・・・」
森にとって、ゲームは初体験である。
自分には友達がたくさんいるが、だれもゲームを持っていない。
植木が出してきたのは、対戦ゲームだった。
やり方を説明され、さっそくやりだしたのだが、まったくわからない。
植木は、森のキャラをこてんぱんに倒している。
「ちょっとは、手加減しなさいよ」
「手加減してるだろ・・・」
男子にしかわからないのだが、対戦ゲームにはだいたい一人ひとり必殺技がある。
それを植木は使っていないのだが、森はいつも負けているのだ。
まあ、手加減といえば、かなりの手加減だろう。
ちっとも面白くないので、案を出してみた。
「ねえ。負けたほうが相手の言うことを聞くってことにしない?」
「いいぞ。べつに・・・」
植木にとっては、好都合である。
なぜなら、いままでずっと勝っているからだ。
「でも、当然ハンデはありね・・・」
「ま、べつにいいけど、どれくらいいるんだ?」
「あんたのキャラの最初の体力が、70%無くなっている状態で戦わない?」
「な、70%?」
いくらなんでも、ハンデが大きすぎる。
勝つ見込みが少ししかない。
「なに?負けるのが恐いの?」
「わ、わかった。それで勝負だ・・・」
負けたほうは言うことを聞かないといけないので、二人は真剣になった。
植木はというと、必殺技を使うようになった。
「ちょ、ちょっと、それせこいんじゃないの?」
「これも、戦法だ・・・」
「なによ、それ〜」
結果は、必殺技をたくさん使った植木の勝ち。
「森の負けだな・・・」
「だって、植木ずるいじゃん」
森は、必殺技のコマンドをまだ完全に覚えていない。
「でも、負けは負け。じゃあ、おれの言うこと聞いてくれるんだな?」
「そ、そうね。一応、負けたんだし・・・」
思わず口ごもってしまう。
「なんでも、聞いてくれるのか?」
「え?ま、まあ、限界はあるけど・・・」
すると、森は植木のベッドの上に押し倒された。
そして、その上に、植木が覆いかぶさる。
(え?な、なに?)
いきなりの植木の行動に、驚くばかりの森。
「こういうことでも、いいんだろ・・・」
「ちょ、ちょっとま・・・んっ」
いきなり、植木に口付けされる。
しばらくして、唇を離された。
「いきなり、なにするのよ・・・」
「だって、言うこと聞いてくれるっていってたじゃん」
たしかに、植木のいっていることは間違っていない。
「だからって、急に・・・」
「森・・・おれとするのが、いやだったのか?」
思わぬところをつかれ、口ごもってしまう。
「そ、それは・・・」
(いやじゃないけど・・・だけど、いきなりは・・・)
植木の視線からのがれるように、視線をうろうろさせる森。
そんな森の様子を見て、植木はニヤッっと笑った。
そして、ふたたび口付けを落とす。
「んっ・・・ちょ、ちょっとま・・・んっ」
植木は、森の唇の感触を確かめるように、じっくりと口付けをする。
「んんっ。植木・・・」
しつこく、唇を求める植木からのがれることができない。
少し、植木が離れてもすぐに口付けされる。
「いいかげんに・・・」
その続きを言おうとしたときだった。
わずかに森の口が開くと、そこに植木の舌が入ってきた。
「!!!」
徐々に植木の舌が、口の奥へと侵入してくる。
一転して、深くなっていくキス。
「んんっ・・・んっ・・・」
森は、力が抜けて、もはや抵抗することができない。
植木とのディープキスの経験は、何度もあった。
しかし、何度やられても、抵抗することができない。
力が徐々に吸い取られていくのだ。
やがて、植木の舌と、森の舌が絡む。
「ふっ・・・んんっ・・・」
植木は森の腰に手を回し、森を固定する。
「んっ・・・植木・・・」
当然、逃げることはかなわない。
植木のなすがままになっていた。
ーチュパッー
植木の唇がようやくはなれる。
そして、森のほうに視線を向ける。
(な、なに?植木・・・)
森は、植木に見つめられながらも荒くなった呼吸を整えていた。
「森・・・辛かったか?」
「え?う、ううん。べつに、慣れてるし・・・それに、植木だから、べつにいいの!」
「森・・・」
しばらく、その状態が続いた。
「ところで、植木。あんた、お父さんはいないの?」
「ああ、父ちゃんか?父ちゃんなら今日は帰ってこないけど・・・」
森が、いまの状況を理解するのは、はやかった。
植木の父は今日、帰ってこない。
つまり、二人きり。
しかも、いま、自分は植木に押し倒されている。
しかも、上には植木がいて、逃げることができない。
(ちょ、ちょっと待って!も、もしかして、あたし、いまとてつもなく、やばい状況にいるんじゃ・・・)
すると、植木がニヤリと、笑ったのが見えた。
「森、おれたち二人きりだよな・・・」
「う、うん。そ、そうなるわね」
「じゃあ、もう一度、ゲームするか?当然、負けたほうは相手のいうことを聞くルールで」
このままではあぶないと、森は思い、逃げようとするが、両手を植木につかまれた。
これでは、逃げることができない。
「逃げようとしたら、こうするぞ」
「ちょ、んっ・・・」
ふたたび、植木に口づけをされた。
そして、少しだけだが、口の中に植木の舌が入ってきた。
「どうする?このまま、進んでもいいんだぞ・・・」
「わ、わかったわよ。だ、だから、離れてよ・・・」
植木は、唇を離し、体を起こす。
そして、ふたたびあの格闘ゲームを取り出す。
「じゃあ、勝負だ」
「う、うん・・・」
(結局、あたしが負けることは分かってるくせに・・・どうせ、負けたらさっきと同じことされるんでしょ・・・)
結果、森はまた負けた。
「じゃあ、おれのいうこと聞いてもらおうか?」
そして、口づけをする。
「んっ・・・んんっ。う、植木・・・んっ」
そんな言葉が届くわけもなく、ふたたび舌を入れられる。
ディープキスをされながらも、森は思っていた。
(植木ってば、こんなことになると、違う人になっちゃうんだから・・・)
控えめな植木。
積極的な植木。
そんなことは、どっちでもいい。
だって、植木は植木だから・・・
終了
あとがき
ああ、最後が意味分からないかも・・・
甘いです。かなり・・・
覚悟がいりますね。これは・・・
キャラが変わってるし・・・
以上、朔夜でしたー。
2004年11月29日