「うえ……」
「植木くん、ここ教えてほしいな」
「おう。任せろ」
「……」

「う……」
「植木くん、今日は暇?」
「あぁ、暇だけど」
「よかったら、図書委員の仕事手伝ってくれないかな?」
「あぁ、別にいいぞ」

 …なんで今日はこんなにもついていないんだろう。
 私が植木に話しかけようとすれば、他の女子が同じタイミングで植木に話しかける。
 狙っているようにしか、思えないんだけど…。
 しかし、それは気のせいだということは分かっている。
 単に、自分がイライラして我侭を言っているだけみたいだから。
(まぁ、今日はいっか)
 特に大した用事じゃなかった。
 今日は暇だったから、公園の掃除でも手伝ってやろうかなー。と思って話しかけただけ。
 でも、この様子だったら、今日植木は公園の掃除は出来そうもない。
 図書委員の仕事は、小学校のときにやったことがあるから分かるけど、結構時間がかかる。
 しかも、小学校よりも図書館は大きいから、余計に時間が増える。
 きっと、植木の仕事が終わった頃はあたりは暗くなっている頃だと思う。
「…帰ろうかな」
 私は小さく呟いて、鞄を背中に背負う。
 と…。
「森。ちょっといいか?」
 私はびっくりした。
 珍しく植木から私に話しかけてきたからだった。
「何? 待ってろ、とか言うんじゃないでしょうね?」
 実際は言って欲しい…なんて願っていないわけじゃなかった。
 でも、それは口には出さない。
「今日、公園の掃除、頼めるか?」
「え?」
 確かに元々から手伝うつもりだった。
 しかし、頼まれるとは…。
 さすがに、植木も自分で行けないということが分かるのだろう。
「俺は図書委員の人の手伝いがあるから、ちょっと遅れるからさ、その間、森がやっていてくれないか?」
 …まったく、こいつは…。
 普通の人だったら、絶対にめんどくさいって答えるのを分かって聞いているのか…。
 しかし、私には断る理由もなかった。
「…まぁ、いいわ。その代わり、6時までには来なさいよ」
「おう。センキュ、森。悪いな」
「ほら。仕事があるんでしょ? さっさと行ってきなさいよ」
「おう」
 植木は図書館へと自分の荷物を持って向かった。
「…仕方ない。めんどくさいけど、約束は約束だからね」
 私は走って公園へと向かう。
 たとえ、植木が来なくても、公園をとっても綺麗にしてやろう。と私は思った。

終了