わかってる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

植木と森は、中学1年のときから、付き合いだした。

 

いま、中学3年生になるまで、とっても仲良しだ。

 

当然、いまもその仲良さは深まっているといったほうがいいだろう。

 

夏休みの、とある日。

 

佐野から、はがきでペアの温泉旅行券が植木の家に届いた。

 

なかには

 

「森と楽しんできてくれ」

 

と書いてある紙が入っていた。

 

植木は何も怪しむこともなく、森にそのことを話した。

 

「へぇー。佐野もいいところがあるのね」

 

「そうだな・・・」

 

佐野からのプレゼントとは珍しい。

 

それは草津温泉への招待状だった。

 

「あたし、草津温泉いったことないのよね」

 

「おれもだな・・・」

 

温泉ということは、ゆっくりできると思って、二人は楽しみにしていた。

 

当日、電車に乗って、草津に向かった。

 

といっても、とてつもない長旅である。

 

なにせ、群馬だからだ・・・

 

電車の中では、すでに植木が酔っていた。

 

「ちょっと、大丈夫?」

 

「う!?ちょ、ちょっと、助けてくれ・・・」

 

植木はとにかく、酔いやすい。

 

そのことは、森は知っていたのだが、予想よりも早く酔ってしまった。

 

植木の背中をさすりながら、森は外の景色を見ていた。

 

徐々に、東京のような都会ではなく、田んぼや畑がある景色が見える。

 

「ほら、見てよ。植木」

 

森が指差したのは、大きな滝だった。

 

「すごーい」

 

「すげえー」

 

東京に住んでいるため、こんな景色はめったに見れない。

 

温泉に入りにいったが、こういうことも悪くないと思った。

 

やがて、森は眠くなり、植木にもたれて寝てしまった。

 

さすがに、2時間近くたつと、眠くなるだろう。

 

植木も、眠くなって、森のほうに頭を傾け、眠りに入った。

 

電車の外では、都会では見ることができない景色が広がっていた。

 

 

 

時間がたち、森が先に目を覚ました。

 

起きたと同時くらいに、車内アナウンスが流れる。

 

「まもなく、草津。草津です」

 

森は、いそいでとなりの植木を起こした。

 

「植木、おきて!」

 

「ん・・・なんだ?」

 

「もう少しで、草津だって・・・」

 

「ん。わかった」

 

すると、植木は眠そうに、起き上がって、上においてある荷物を取った。

 

しばらく立つと、草津のホームに電車が止まり、森たちは電車から降りた。

 

駅からすぐ近くのところに、温泉旅館はあった。

 

植木たちは、荷物を持って、旅館に入った。

 

その背後を二人の影が追っていた。

 

「植木たちを、黙ってみておくわけにはいかんからな」

 

「ふふふ。そうですわね」

 

そう、佐野と鈴子である。

 

この二人は、植木と森が温泉旅行券で、草津に来るとわかっていたので、同じ電車に乗って、追いかけてきたのだ。

 

そんなことはつゆ知らず、植木たちは、手続きを済ませ、部屋にいた。

 

「やっぱり、草津っていいわね」

 

「そうだな」

 

部屋のガラス越しに見える景色を見ながら、森と植木は話した。

 

東京とは、まったくといっていいほど、違う景色。

 

温泉街という人がたくさんいるところでは、東京に似ているかもしれないが、やっぱり会社だらけの東京とは違う。

 

温泉旅行は、2泊3日。

 

佐野に、そんなお金があったのか?と思いながら、植木たちはくつろいでいた。

 

ひとまず、この温泉旅行を存分に楽しもうと、考えている二人だった。

 

一方の二人は・・・

 

「植木さんたち、いい雰囲気ですわー」

 

「なんや、植木。もっと、アピールしんかい」

 

と、ドアをわずかに開けて、なかの様子を伺っていた。

 

この旅館はオートロックではない。

 

しかも、植木たちは、ドアにロックをかけていないため、中を見ようとすればみれるのだ。

 

しかし、廊下から見れば、ただの怪しい人。

 

さすがに、長時間いることもできないので、佐野たちも部屋にもどった。

 

夕方くらいになった。

 

「ねえ、植木。温泉に行かない?」

 

「そうだな・・・」

 

ということで、二人は大浴場に行くことになった。

 

部屋の鍵はいちおう、森が持っていることになった。

 

さて、大浴場前についた。

 

当然、二人は別々の更衣室に入った。

 

しかし、ここの温泉は、ふつうのところと少し違った。

 

植木は着替え終わって、中に入った。

 

しかし、それまでに気づくことがあった。

 

それは、自分のほかに客がいないことだった。

 

(ここって人気ねえのかな?)

 

まあ、佐野が用意したところだから、それくらいなんだろと思っていた。

 

ひとまず、体を洗って、浴槽につかっていた。

 

すると、入り口が開いた。

 

そこからでてきたのは・・・

 

「も、森!?」

 

「う、植木!?」

 

そう、ここの温泉は混浴だったのだ。

 

しばらく二人の間に沈黙が続く。

 

しばらくすると、

 

「キャーーーー!!!!!!」

 

と、森が叫んだ。(当たり前)

 

真っ赤になって、急いで、自分の体をタオルで隠した。

 

しかし、時すでに遅し・・・

 

植木も急いで、森とは反対側を向いた。

 

とはいっても、かなり動揺してしまう。

 

なにせ、森の裸体を、湯気で見えにくかったものの、しっかりみてしまったからだ。

 

またもや続く沈黙

 

しばらくすると、植木が口を開いた。

 

「すまん」

 

「え?」

 

「森のその・・・見ちまって」

 

「やっぱり、見えた?」

 

「うん」

 

森に背を向け、植木は話している。

 

すると

 

―バシャー

 

と、浴槽の中に入ってくる音がした。

 

(え?)

 

思わず、植木は後ろを向いてしまった。

 

すぐ後ろに、森が温泉につかっていた。

 

おもわず、植木はすぐに後ろを向いた。

 

「ねえ、植木。こっち向いてよ」

 

森からの言葉。

 

植木は、耳を疑った。

 

(も、森、なにいってんだ・・・)

 

植木は、顔を真っ赤にさせている。

 

その赤は、照れているの以外にもありそうだった。

 

「あたし、別に、植木に見られたのはいやじゃないよ」

 

「な!?」

 

森からの言葉に、顔がさらに赤くなってしまう。

 

めったにこんな顔を植木はしない。

 

「だって、植木はあたしの好きな人だもん」

 

そういう問題か?という考えは植木の頭には入ってこなかった。

 

すると、視線がグラっとする感じがした。

 

(あれ?)

 

植木は、顔を真っ赤にさせて、気絶してしまった。

 

「植木?」

 

先ほどから、返事もしないので、森が不振に思い植木のほうを見た。

 

「ちょ、ちょっと植木、大丈夫?のぼせてるじゃない」

 

そう、植木はお風呂につかりすぎて、のぼせてしまったのだ。

 

しかし、森も、植木の裸を見るわけにはいかない。

 

しかし、仕方のないことだ。

 

森は、目をつぶりながら、植木を運んだ。

 

しかし、ここで問題が起こった。

 

そう、着替えをどうするかだ。

 

なんとか、更衣室までは運んできたのだが、着替えさせる方法がわからない。

 

(どうするのよ?この状況)

 

自分も裸であるため、いま誰か入ってきたら、どうなるかわからない。

 

ひとまず、植木にバスタオルをかけて、自分は服を着にいった。

 

森が更衣室を抜けてから、しばらくすると、佐野が入ってきた。

 

「ん?だれや?」

 

佐野が不思議に思って、近づくと、だれかわかる。

 

「植木やないか。どうしたんや?まさか、のぼせたんか?」

 

とりあえず、植木に浴衣を着させた。

 

しかし、このままだと、植木に見つかってしまうかもしれないので、植木を着替えさせると、その場を離れた。

 

佐野が去ってから、しばらくすると、また森が入ってきた。

 

「あ、植木が浴衣を着てる。だれが着せてくれたんだろ?」

 

植木は完全にのぼせているのは、見るだけでわかる。

 

「とにかく、植木を運ばなきゃ・・・」

 

しかし、こういうとき、男子は重いので、植木を持ち上げることができない。

 

たまに、植木は森をおんぶしてくれたりしてくれるのに、森はそんなことができない。

 

植木をおんぶするのは、ちょっとした夢だったのだが、そんなことは無理だと実感した。

 

(植木って、体格いいわよね・・・って、なに考えてんの。あたし・・・)

 

浴衣姿の植木を見ていて、おもわず見とれてしまう。

 

自分を守ってくれる腕。

 

自分を受け止めてくれる胸。

 

のぼせている植木の姿をジッと見ていると、自分だけの人にしたくなる。

 

(あたしって、以外と独占欲強いのね・・・)

 

そんなことを思いながら、どうやって運ぶかを考えていた。

 

とりあえず、引きずりながら行くことにした。

 

店員が、手伝いましょうか?といわれたが、思わず断ってしまった。

 

途中までは、順調だったのだが、問題は階段。

 

引きずったままでは、植木がかわいそうだ。

 

しかたなく、少しの間だけだが、力を入れて植木を持ち上げた。

 

なんとか、1階から3階までは大丈夫だったのだが、森たちの部屋は6階。

 

6階までは、まだまだある。

 

(なんで、旅行しに来て疲れなきゃいけないのよ)

 

愚痴を言いながら、植木を運ぶ。

 

なんとか、自分たちの部屋に戻ってきたが、思わず森は地べたに倒れた。

 

「はぁー。疲れたー」

 

そして、植木を自分のひざの上に寝かせた。

 

(さすがに、ほおっておけないもんね。それに・・・一度やってみたかったんだ)

 

植木は、絶対といっていいほど、膝枕をしてくれなんて、いわないからである。

 

植木の寝顔を見ている森は、思った。

 

(いまなら、してもばれないよね)

 

すると、森は植木の唇に、自分の唇を近づけた。

 

―バタンー

 

いきなり聞こえてきた大きな音に驚き、森は音のしたほうを向く。

 

ドアが開いており、そこで倒れていたのは・・・

 

「佐野!?鈴子ちゃん!?」

 

「あちゃー。ばれてしもうたか」

 

「そうですわね。せっかく、いいところでしたのに・・・」

 

先ほどと同じく、佐野たちは部屋をのぞいていたのだが、森の行動に驚き、もっと見やすくなるように、ドアに身を寄せたのが、いまの状況に至る原因になった。

 

「佐野・・・鈴子ちゃん・・・あなたたちね!!!」

 

森からは、いまのことを見られていた恥ずかしさと、邪魔されたことでの、怒りが混じり、まるで阿修羅のようなオーラが出ていた。

 

(こ、恐い!!!)

 

(恐いですわ。あいちゃん)

 

森は、二人に向かって走り出した。

 

つかまれば、命がない。(笑

 

佐野たちは、急いで部屋に戻った。

 

佐野たちが部屋に戻ったのを確認すると、森は再び部屋に戻った。

 

「ったく、恥ずかしいところ見られちゃったじゃない。でも、わたしも植木の寝込みを襲うなんてどうかしてたわ」

 

部屋に戻ると、植木がつらそうな顔をして起きていた。

 

「お、森か。」

 

「植木、起きてたんだ」

 

「!?。森、ど、どこかにいってたのか?」

 

森のほうを見ると驚いた顔をして、植木は聞いてきた。

 

(植木、どうかしたのかな?)

 

驚きようが、尋常ではない。

 

「べつに・・・佐野や、鈴子ちゃんがいたから、追いかけていたの」

 

「佐野たちがいたのか!?」

 

「うん」

 

まあ、この驚きようは当たり前だろう。

 

「森・・・おまえ、そこから、ここに来るまで、だれにも合わなかったか?」

 

思いもよらない質問。

 

ふつうだったら、佐野たちは何をしてたんだ?とか聞いてくると思っていた。

 

「うん。でも、植木。なんでそんなこと聞くの?」

 

「だって、その姿・・・」

 

「え?」

 

植木が指を指すところを見ると、自分の太ももがあらわになっていた。

 

「!?。キャーーーーー!!!!」

 

森は急いで、浴衣で隠した。

 

「う、植木のバカ!!!!」

 

森は、植木を思い切り殴った。

 

「な、なんでだ?」

 

すると、植木はまた、倒れてしまった。

 

「あれ?植木、どうしたの?」

 

植木は、また気を失っていた。

 

「植木!?ちょ、そんなに強く叩いてないでしょ」

 

あまり、力を入れなかったつもりだが、かなり力を入れたらしい。

 

しかも、もともと体調が悪かったので、それで倒れてしまったのだ。

 

またもや、森は植木を見守ることになった。

 

 

 

植木が再び目を覚ましたのは、布団のなかだった。

 

時刻は、午後9時。

 

自分は飯を食べていないが、机の上に、飯がおいてあった。

 

森は、どうやら植木が起きたことに気づいていないらしく、テレビに集中していた。

 

(そうだ!いいこと思いついたぞ)

 

静かに忍び寄って、うしろから抱きしめた。

 

「ひゃ!」

 

驚いたようで、森は変な声を出す。

 

わざと、沈黙をしていた。

 

「ねえ。植木。そろそろ、離してくれない?」

 

その言葉を待っていましたとばかりに、しゃべりだす。

 

「森・・・いやなのか?」

 

「え?べ、べつに、いやじゃないけど・・・」

 

いつも、植木がいやなのか?と聞くと、森はなにも言えなくなる。

 

植木は、森の髪の匂いなどをかいでいた。

 

(森の髪。いい匂いだな・・・)

 

女子など、あまり興味がなかったが、これだけ好いている人間は、ほかにいないだろう。

 

森の顔が真っ赤になっているだろうと思いながら、抱きしめていた。

 

浴衣のため、肌に触れているような感じになる。

 

「なあ、さっき。森、おれを殴ったよな」

 

「え?あ、ああ。あのときはごめんね」

 

「許さない」

 

怒っているような植木の様子に、森は少々驚いているようだ。

 

「ね。お願いだから、許して・・・あたしにできることなら、してあげるから」

 

「なんでもか?」

 

その植木の質問を、疑問に思いながら答えた。

 

「う、うん。あたしにできるならね・・・」

 

そのことばを聞くと、植木は、森を布団に倒した。

 

「ちょ、ちょっとなに?」

 

「おまえにできることならいいんだろ・・・」

 

「で、でも・・・」

 

「いやなのか?」

 

「い、いやじゃないけど、恥ずかしいの」

 

植木の目から、目をそらしながら、森は答えた。

 

「じゃあ、いいんだな」

 

「え?んっ」

 

不意打ちのように、口付けを落とす、植木。

 

そして、森の口の中に、舌を入れる。

 

「ん、んん」

 

植木は、徐々に森の口の奥に、自分の舌を入れていく。

 

「ふっ。ん」

 

そして、森の舌を自分の舌と絡める。

 

「ふっ、ん。うえ・・・」

 

しばらくして、植木は離れようとする。

 

すると、森は、植木の首に手を回す。

 

「森?」

 

「やめないでよ・・・」

 

「え?」

 

まだ、息苦しいのだろう。つらそうな顔をして森は言った。

 

「お風呂のときもいったでしょ。植木ならいいって・・・だから」

 

「森・・・」

 

森は、思っていることをすべていった。

 

すると、また植木は森に口づけをした。

 

「んっ。植木・・・」

 

そして、再び舌を入れる。

 

「ん。ふっ、ん」

 

つらいのだろう、首に回した手が強くなる。

 

「森、好きだ」

 

「うん・・・わかってる」

 

その夜、二人は、何度も思いを伝え合った。

 

その後、温泉旅行は、何事もなく終了した。

 

混浴だったが、ふつうに二人で入っていたし、夜などは、同じ布団で寝ていたくらいだ。

 

森は、電車の外を見ながら言った。

 

「草津って、温泉以外もいいわね」

 

「ああ、そうかもな・・・」

 

そんな、あつあつぶりを見ていた佐野たちは、大きなため息をついたのだった。

 

終了

 

 

 

あとがき

ああ、中学生で限界を書いて見ました。

甘すぎるぞ。やばいっす。これは完全プレゼントにしますね。

だから、もらえた人、ラッキーかも・・・

自分で書いてて、かなり恥ずかしいっす。

ページ数も一番多かったかも。

以上、朔夜でした!!!

2004年11月29日