10秒前。
 
テレビから聞こえるカウントダウン。
 
「いよいよだね」
 
「ああ」
 
5秒前、4、3、2、1
 
「あけましておめでとう!」
 
ふたりは、電話越しに新年を祝った。
 
 
ずっと、いつまでも・・・
 
 
「ねえ。植木、あたしたちだけで初詣に行かない?」
 
「ああ、いいぞ」
 
新年を祝ったあと、電話越しに初詣に行く約束も交わした。
 
「じゃあ、また後でね」
 
「ああ。じゃあな」
 
二人は、電話を切った。
 
すでに、二人の頭には、初詣のことしか入っていない。
 
(植木と行けるんだ・・・初詣、どんな服着ていこうかな・・・)
 
(森と行くのか・・・楽しみだな)
 
やがて、朝を迎えた。
 
森は、起きるとすぐに着ていく服を選んでいた。
 
(なにを着ていけばいいのかな?)
 
初詣にはよくいったことがある。
 
しかし、男子と二人きりで行くのは初めてだ。
 
しかも、恋人となれば、さらに話は別。
 
相手に気にいってもらおうとするのが、常識。
 
結局、1時間くらい、服を選んでいたそうだ。
 
 
植木も起きると、着ていく服を選んでいた。
 
(森が、気にいってくれる服にしなきゃな)
 
植木も、森に気にいってもらえるような、服を選んでいたのだ。
 
とはいっても、植木は男子。
 
服がそんなにもあるわけがない。
 
(なんか、いい服がないな)
 
植木が悩んでいると、
 
ーピンポーンー
 
玄関の呼び鈴が鳴った。
 
「はい」
 
「耕ちゃん。いる?」
 
「姉ちゃん。なんか用か?」
 
たずねてきたのは、姉だった。
 
「初詣に耕ちゃんが似合う服を持ってきたんだけど・・・」
 
「え?」
 
なんという、グッドタイミング。
 
しかし、なんでこんなにもタイミングがいいのか?
 
「まあ、とにかく入って・・・」
 
植木は、姉を家の中に入れた。
 
「それでね。ジャーン。どう、この服」
 
それは、黒っぽい着物だった。
 
「耕ちゃん、似合うかな?」
 
「わかんねえ」
 
「初詣に、着ていってね」
 
「うん。わかった」
 
姉が出て行ったあと、植木はその着物を着てみた。
 
(けっこう、似合う・・・)
 
姉のファッションセンスには驚いたが、なぜ初詣に行くことを知っていたのかがなぞだった。
 
(盗聴されてんのかな?)
 
洒落にもならないことを、考えた。
 
とにかく、植木は、この着物で行くことにした。
 
 
植木は、なれない着物姿で、森の家までいった。
 
「森、いるか?」
 
「え?う、植木?ちょ、ちょっと待っててね」
 
森は、植木がきたことに驚いた。
 
なぜなら、服は決めたものの似合っているか、鏡の前でチェックしていたからだ。
 
(どうしよ。かなり悩んじゃったよ)
 
とりあえず、自分が一番気に入った服を着ていくことにした。
 
「植木、お待た・・・」
 
「森、ちょっとおそ・・・」
 
言葉が続かなかった。
 
森の着ている着物で、森がとてもかわいく見えたからだ。
 
(森、かわいい)
 
植木は、森に見とれていた。
 
一方の、森も植木に見とれていた。
 
植木の着ている着物が、みごとに植木にマッチしていたからだ。
 
それで、植木がかっこよく見える。
 
(植木、かっこいいじゃん)
 
森も植木に見とれていた。
 
「じゃ、じゃあ、行くぞ」
 
「え?う、うん」
 
植木と、森は手を繋いで、神社に向かった。
 
神社に着くと、たくさんの人でにぎわっていた。
 
「込んでるわね」
 
「ああ、そうだな」
 
とにかく、神社の賽銭箱に向かった。
 
たくさんの人でにぎわっているため、道が狭い。
 
「森、大丈夫か?」
 
「う、うん。平気・・・」
 
植木たちが、離れないのは、二人が強く手を握っているからだ。
 
やっとの思いで、賽銭箱の前に着いた。
 
二人はお金を出して、賽銭箱に投げた。
 
ーパン パンー
 
手を二回合わせ、願い事をした。
 
それからは、屋台にあるいろいろなものを、食べたりしていた。
 
すっかり、時間がたっていたので、帰ることになった。
 
「植木、楽しかったね」
 
「ああ」
 
すると、植木は森を指差した。
 
「なに?」
 
「その・・・似合ってる」
 
顔を真っ赤にさせながら、植木はいった。
 
「あ、ありがと」
 
森も顔が赤くなった。
 
「植木も似合ってるよ。その着物」
 
「せ、センキュ」
 
お互いに、照れあう二人。
 
「ところで、植木は何をお願いしたの?」
 
「な、なんでそんなこと、聞くんだ?」
 
「だって、知りたいじゃない」
 
愛しい人の願い事を知りたいと思うのは、当たり前。
 
「じゃあ、森は何を願ったんだ?」
 
「え?あ、あたし?ふ、ふつうそんなこと聞く?」
 
「だって、森だって聞いたじゃん」
 
「じゃ、じゃあさ、いっしょに言お!」
 
「あ、ああ。別にいいけど・・・」
 
ーせえのー
 
「植木とずっといっしょにいられますように」
 
「森のそばにずっといられますように」
 
少しの沈黙。
 
「ぷっ。はははははは」
 
二人は、同時に笑い出した。
 
「植木も同じこと願ったんだ」
 
「森だって、そうだろ」
 
自分たちが、同じことを願ったことが幸せだった。
 
「ねえ、植木」
 
「ん?」
 
「来年も、いっしょに来ようね!」
 
「ああ。当然だろ」
 
願い事を口にしたら、その願い事はかなわないといわれている。
でも、この二人には、関係ない。
そんなものでは、消えない絆があるから・・・
それは、いつまでも二人を守り続けるだろう・・・
 
終了
 
 
 

あとがき
久しぶりに、駄文かも・・・
以外と、正月ねたって難しい。
がんばったんだけど、だめかも・・・
次からはかんばりますね。
以上、朔夜でした。
 
2004年11月6日