アクシデント
植木は、休日家族が全員どこかに行くため、暇をつぶすためにビデオショップに来ていた。
「なんか、いいビデオねえかな」
とはいっても、なかなか気に入るビデオがない。そこらへんにおいてあったホラーの映画でも借りることにした。
レジに向かっていると、偶然にも森に出くわした。
「いよっ」
「う、植木!?なんでここにいるの?」
いつもと違う反応だ。なにやら、森もビデオを持っている。それも3本。
(なに借りるんだ?こいつ)
気になってタイトルを読もうとしたが、森がとっさに隠した。
「う、植木は、なに借りるの?」
あきらかに、自分への話題をなくそうとしている。
なにやら面白くないので、からかってみることにした。
「おれか?おれは、これ」
といって、見せたホラー映画のビデオ。
「なあ、明日、おれの家でみようぜ」
森が、ホラーやおばけなどが苦手なことを知りながら、言ってみた。
この前の遊園地のときで、わかったことだ。
「な、なんであたしが、植木の家で、それを見なきゃいけないのよ」
「もしかして、恐いのか?」
「あ、あたしは、明日用事があるの!」
間違いなくうそ。なぜなら、森が出てきたコーナーはたった1日しか借りられない新品のコーナーだったからだ。
明日用事があるのだったら、ビデオなんて借りるわけがない。
今回は、植木の頭の回転が速かった。
「なら、なんでビデオ借りるんだ?」
「え!?そ、それは、ひまなときに見ようかなー。と、思って」
まあ、嘘のことはすっかりわかっているのだが、何を借りたいのかを知りたい。
「なら、森は何のビデオを借りたいんだ?」
「え!?」
「だ・か・ら。その手に持ってるビデオを教えてくれってこと」
森は、やっぱり植木に見られたくないらしく、ビデオを後ろに回した。
(こいつがこんなにムキになるなんて、そんなに知られたくないのか?)
森は、目線を動かして、なにやら考えているようだった。
(まあ、この新品のコーナーを見ればわかることか・・・)
と思って、植木は新品のコーナーに足を入れようとした。
「あ、ダメ!」
手を持って、植木を止めようとする森。
「なんでだ!」
「なんでって、それは・・・」
森が、言葉を考えているうちにコーナーを見てみた。
(なんにも、変なとこなんか。ん!?)
最初は、なんともないと思っていた。
だが、ビデオのタイトルを見ると、
『好きな男の子に気持ちを伝える方法』とか『好きな男の子に自分をアピールする方法』などが、置いてあった。
さすがの植木もこれには開いた口がふさがらないといったところか。
よく見てみると、今回は、どうやら恋愛系のビデオしか置いてないらしい。
「も、森!?」
森は、顔を真っ赤にさせてうつむいていた。
(なんで、森がこんなビデオを借りるんだ?)
森が恋愛のビデオを借りるとは思っていなかった植木は、首をかしげた。
そのうちに、森が
「あ、あたしにだって、好きな人はいるんだから・・・」
と言った。
まあ、その言葉は、ふつうだが、ビデオをわざわざ借りなくてもいいのではないかと思った。
植木は、まったく、森がビデオを借りた理由がわからなかった。
「森。好きなやつがいるなら、好きって言えばいいじゃねえか」
植木はマイペースである。女子のそんな心はわかるわけがない。
「だってあたし、その人にとってどんな存在かわからないから、不安なの」
「別に、お前が好きならいいじゃねえか。相手のことなんて考えなくたって」
そんなことを言うと、森がいらいらしてきたようだ。
「あぁーもう。いい加減にして!」
植木は、なぜ怒られたのかはわからない。
「どうしたんだ?森」
「あんたのことで困ってるのに、あんたが気づいてくれないから・・・」
「え!?」
森は、自分の言ったことで顔が真っ赤になった。
「あ!?あたし・・・」
森は、顔を伏せたまま、走っていった。
「お、おい。森!?」
そんな植木の声を無視するように、森は視界から消えた。
「森・・・」
植木はしばらく、ビデオショップの中に立ちつくしていた。
家に走って帰ってきた森は、体育すわりで自分の部屋にいた。
(あ、あたし。告白しちゃった。どうしよう。これからふつうに会えないよ)
勢いのあまりに言ってしまったことの後悔と恥ずかしさを思い出して、森はため息をついた。
(きちんとした場で植木に伝えたかったのにな。なんでこんな風になっちゃうんだろ)
やがて、眠くなり、瞼を下ろして深い眠りについた。
森が再び目を覚ましたのは、午後8時すぎだった。
(あたし、こんなにも寝てたんだ・・・)
すると、窓からコンコンという音が聞こえる。
(なんだろ?)
と思って、外を見てみると、そこにいたのは・・・
「森!」
「植木!?」
森は、恥ずかしさのあまりに、顔を向けることができない。
「森、いつもの場所に来てくれ!」
いつもの場所とは、植木と森がよく一緒に掃除をしている公園だった。
それを言うと、植木は走っていってしまった。
森は、急いで外に出て公園に向かった。
公園に着くと、ベンチに座っている植木がいた。
「森、こっちにきてくれ!」
といって、手招きをしてベンチに森をよんだ。
植木に言われるまま、植木のとなりに座る森。
しばしの沈黙・・・
やがて、植木が口を開いた。
「あのさ、今日のことだけど・・・」
「あ、いやだったらいいの。聞かなかったことにして」
植木から答えを聞くことが恐かった。答えを聞いたら、近くにいれなくなると思ったから
「なに言ってんだ?なんで、おれがいやって言うんだ?」
「え?」
森は驚き、植木のほうに向いた。
「やっと向いてくれた」
植木は、嬉しそうに笑った。
「おれの側にいてくれたのは、お前だけなのに、おまえのことを嫌いって言うわけないだろ。それに、森にはこれからも側にいて欲しいんだ」
「植木!」
森は、目に涙を浮かべながら植木に抱きついた。
「森・・・」
植木は、優しく森を抱きしめる。
「そばにいていいの?」
「ああ、当然だろ。それに、森以外なんて、おれはいやだ」
森は涙を拭いて、植木のほうにむいた。
「ありがとう。植木」
「ああ」
やがて、植木の顔が近づいてきた。
森はそれを素直に認める。
やがて、二人の影がひとつに重なった。
これから始まる、二人の運命の恋物語・・・
終了
あとがき
さあ、100のお題。記念すべき、10本目は、森からのドタバタ告白です。
どうでしたでしょうか。自分で書いた小説の中でもいいと思います。
小説って書くと、うまくなるんでしょうか?わかりませんね。
でも、小説かいてると、徐々に同じ表現を使うようになりますね。(笑
まあ、たくさん書いていきましょう。
以上、朔夜でした
2004年12月7日