勘違いの三角関係











今日、植木の家に鈴子がお礼を言いに、植木に会いにきていた。

「植木くん。いらっしゃいますか?」

「ん?鈴子か?」

「この前の闘いではありがとうございます。今日はお礼を言いにきたんですの」

「そっか、じゃあ、ここで話すのもなんだから公園でも行くか?」

「そうですわね。では、お言葉に甘えて・・・」

すると、植木と鈴子は公園に向かった。

公園に到着した植木と鈴子はしばらくベンチに座って話していた。

鈴子は植木に伝えた。いままでのお礼と自分が佐野と付き合いだしたことを。

「ふーん。鈴子は佐野と付き合ってたのか?」

「ところで、植木くんは、あいちゃんと、つきあっていらっしゃるので?」

「まだ・・・」

痛いところをつかれた植木は、言葉をにごらせた。

「まあ、そうでしたの?植木くんがあいちゃんのことが好きということはすぐにわかるのですが、あいちゃんは、鈍感ですわね」

「まあ、おれはあいつに、思いを伝える気はないし、それにそっちのほうがあいつが幸せだろ。」

「なんでですの?」

「おれは、人間じゃない。天界人なんだ。そんなやつと、付き合うよりもふつうのやつと付き合ったほうがあいつも幸せだろ」

そのことばを聞いて、鈴子は何もいえなかった。

植木は人間ではない。天界で生まれた天界人なのだ。

そんな得体の知れないやつと付き合うよりも一般人と付き合ったほうがいいと植木は思っていた。

「でも、植木くんは、人間ですわ。そんなに優しい心を持っていらっしゃるのですから」

「そっか・・・ありがと」

植木は鈴子にかすかな笑みをおくった。

「じゃあ、そろそろ行きますわね」

「おう、ありがとな。話し聞いてくれて・・・」

と、鈴子が立ち上がったとき、鈴子がつまずいてこけそうになった。

「あぶねえ!」

植木は急いで立ち上がって、鈴子を抱きとめた。

「あ、ありがとうございます」

すると、鈴子は去っていった。

(おれは、優しい心を持っている。か・・・)

植木はしばらくその場に立っていた。

その最後のシーンを見ている人がいた。

森だった。偶然にも公園に探し物をしていて、きていたのだ。

植木と鈴子が、抱き合ってた。それだけが、森の頭から離れなかった。

“ここに居たくない”と森は思っていたが、思ったどおりに体が動かなかった。

あまりにショックが大きすぎたからだ。

森も植木のことが好きだった。でも、意地っ張りな性格のせいで思いを伝えれなかったのだ。

「パキッ」

森が不意に近くにあった木の枝をふんでしまった。

植木が森のほうを向いた。

「だれだ?」

植木が近づいてくる。森は逃げたかったが、もう遅かった。

「森!?」

森は答えようとしない。

しばらく会話がなくなる。

「なんでここにいるんだ?」

「え、えっとね。探し物してたの・・・それで偶然ここにいて・・・」

「見てたのか?」

「うん。ごめんね。邪魔しちゃって」

見られていたことは仕方がなかった。しかし、邪魔とはどういうことなのか。

「鈴子ちゃんと付き合ってるんでしょ」

「は?」

とんだ誤解だった。どうやら、森は勘違いをしているらしい。

「あのな。森・・・」

「来ないで!」

「え?」

森に拒絶されたことが何よりもいやだった。

「だから、森・・・」

植木は森の肩に触れた。

パシッ

「触らないでよ!」

「森・・・」

「もう、植木なんか知らない!」

植木は何もいえなかった。

たとえ勘違いだろうと、決定権は森にある。

自分が強制することはできない。

「そっか。ごめんな、森・・・じゃあな」

植木は悲しそうな目で森を見て、公園を出て行った。

森はあとで自分の言ったことに後悔した。

(あたしは本当はあんなことが言いたいんじゃなかったの。でも、植木が鈴子ちゃんと抱きしめあってるのが許せなかったの)

森は、植木の去るときの悲しそうな目を見て、自分の言ったことがどれだけひどいことかわかった。

(植木、ごめんね。本当にごめんね!)

森の目からは自然に涙が流れていた。

あんなことを言っても、やっぱり森は植木のことが好きだった。

一方の植木は、放心状態のまま家に向かっていた。

(やっぱり、おれは森の近くにいるべきじゃなかったんだな。森にとって、いいきっかけだったのかもしれない。)

「あぶない!」

その声が聞こえたのは、もう横断歩道を出ていたときだった。

キキー ドンッ

何かにあたった音がして、植木は気を失った。

一方の森は、今度植木に謝ろうと思って、家に帰っていた。

すると、自分の携帯がなった。

(なんだろ?こんなときに?)

あまり森は出たくなかった。しかし、自分の父からだったので出ることにした。

「どうしたの。お父さん」

「あいか?おまえ、知ってるか?」

「え?なにが?」

「植木くんがトラックにひかれたそうだ」

「え?」

一瞬で、血の気が引いていくのがわかる。

「なにやら、ボーっとしていたようだったよ。悲しそうな顔をしててね」

植木がボーっとする。それはいつものことだった。

でも、悲しそうな顔というのはあまりない。

その瞬間、ふたつの様子がひとつのまとめになった。

(植木がショックを受けたとしたら、あたしにあんなことを言われたからだ。きっと、それで植木はショックを受けてて。あたしのせいだ。あたしがあんなこといったから)

「あい?」

「お父さん。植木が運ばれたところってどこの病院?」

植木はここらへんで、一番大きな病院に運ばれたことがわかった。

森は急いで、その病院に向かった。

どうやら、植木の治療は終わっていたらしく、病室に植木は眠っていた。

先にきていた植木の姉と父親は涙を流していた。

「植木は、植木は大丈夫なんですか?」

「もう、意識が戻らないかもしれないだと、医者は言っていたよ。戻ったとしても、何か後遺症は必ず残るだろうだって・・・」

父親は涙ながらに話していた。

静かに眠る植木。

まるで、先ほどまで元気でいたとは思えなかった。

「植木、ごめんね。あたしがあんなこといったから、こんなことになったんだよね・・・」

植木の手は、少し冷たかった。

それからというもの、森は毎日病院に通いつめていた。

やがて、2ヶ月がたった。

森はいつものように、植木の手をにぎっていた。

「もう、2ヶ月か。植木がいなきゃ、つまんないよ。学校なんて・・・」

そのとき、かすかに森の手がにぎり返された感じがした。

(え?)

おそるおそる植木の顔を見る。

すると、植木は目を開けていた。

「うえっ・・・」

「森?」

もう、涙が止まらなかった。

「植木!!!」

言い尽くせない謝罪の言葉よりも、植木が目を覚ましてくれたことが嬉しかった。

森は思い切り植木に抱きついた。

植木は、あまり動かない体を不器用に使って、森を抱きとめた。

「森!?」

「植木、ごめんね。あたしのせいだよね。こんなことになったのは。あたしがあんたのこと“嫌い”っていったからだよね。」

「べつに、おれが気をつけてなかったからこうなっただけだろ。森のせいじゃない」

こんなことになっていても、植木は優しかった。

「ううん。そんなことない。悪いのはあたしよ。あたしが鈴子ちゃんに嫉妬しなきゃ、こんなことにならなかったもん。」

「森・・・ごめんな。心配させて・・・」

体を動かそうとするが、立つことができない。

いや、左足に力が入らない。

(あれ?)

まったく動けなかった。左足が麻痺していた。

「植木、あたしね。言いたいことがあるの・・・」

「なんだ?」

「あたしは、あのとき言ったのは、本当の気持ちじゃないの。あたしは、本当は植木のことが好き」

「森・・・」

「ずっと言いたかったの。でも、あたし意地っ張りだから、言うのが恥ずかしくて、それに植木が困らないように黙ってたの。あたしなんかじゃ、だめだとおもって・・・」

植木は森をさらに強く抱きしめた。

「おれが、学校に来ようと思う理由はおまえがいたからだ。おまえいがい、おれを助けてくれるやつはいないだろ。ずっと、森には助けられてばっかりだったから。それで、おれも言えなかったんだ。」

「おれも、おまえのことが好きだ。」

しばらく2人は時間を忘れて、抱きしめあっていた。

後遺症はやっぱりあった。

それは、一時的な左足の麻痺。

それで、森は植木を看病することにした。

それは、頼まれたからではない。自主的にやろうと思ったからだ。

「森、悪いな。おまえに、手間かけちまって・・・」

「ううん。植木の体調が元に戻って欲しいだけだから・・・それに・・・」

「?」

「あたしは、やりたいからやるだけ。ううん。やらせて欲しいの。植木がいやでも、やりたいの!」

「おまえに頼まれて断るわけないだろ・・・」

たとえ、この後遺症が治って元にもどっても、君にずっと見守っていて欲しい。
たとえ、後遺症が戻っても、ずっとそばにいたい。それがわがままでも・・・
勘違いにより、起こった事故、しかし、勘違いによって、また二人の絆が深まった

終了



あとがき
はい。やっと終わりました。ながかったー
シリアスな部分が多いですが、まあ許してください。
これは、ハスラーワンさんと協力して作りました。
ありがとうございます。
以上、朔夜でしたー

2004年12月7日