笑顔

 

 

ふと思い出す。

彼女のあの笑顔を。

どんなに辛くても、どんなに悩んでいても……、彼女の笑顔は全てを洗い流してくれた。

 それを感じるのは何も俺だけじゃない。

 鈴子、佐野、ヒデヨシ、きっとテンコだってそうだ。

 彼女の笑顔を見れば、どこか安心できる。

 たとえ無理だと分かっていることでも、やれる。と思える。

 ただ、一つだけ困ることがある……。

 それは、俺たち以外にもその笑顔を向けていることだ。

 彼女が俺たち以外に笑顔を向けていると……、何だかイライラする。

 何でかは、わかんないけど。

 でも、きっと彼女の笑顔はたくさんの人を惹きつける何かがあるような気がする。

 だから、俺は……。

 彼女のその笑顔を絶やさせない。

 彼女を失うわけにはいかない。

 この命に代えても、守ってみせると言い切れる。

 でも、彼女にはそんなことは言えない。

 言えば、きっとあのおせっかいな性格が自分のことを止めるだろうから。

 何も言わず……、無関心で……、彼女のことを守ってみせる。

 やがては、ばれてしまうかもしれない。

 でも、それならそれでいい。

 ばれることに何ら抵抗なんか感じない。

 それで嫌われることだって何ら抵抗を感じない。

 一番怖いことは彼女を失うことだから。

 そして、それが……唯一、彼女のために俺が出来ることだから。

 だから、きっと守ってみせる。

 いや、絶対に守ってみせる。

 どれだけの時間が経っても……。

 

終了

 

あとがき

植木の語りっぽいものを書いてみました。うーむ、微妙かな?

というか、これは語りかな? とか、書いて思います。

しかも、短いし……。長編を書けと言われそうです。

と、とりあえず描いてみましたです。