安心できるから










「今日も、なにごともないといいわね」

ある日、森は一人で学校に登校していた。

植木はというと、寝坊したらしい。

そのため、一人で先に行くことに決めたのだ。

(植木がいないと、不安・・・)

いつもは、植木がとなりにいるから安心して登校できる。

いままで、何度も登下校中に襲われたことがある。

しかし、いつも植木が倒してくれた。

だが、今日はその植木がいない

(こんなときに、襲われたら・・・)

そう思っていると、後ろから・・・

『トイレットペーパーをガムテープに変える能力!』(笑

「え!?」

気づいたときには、体をガムテープでぐるぐる巻きにされてしまっていた。

「な、なによ!これ」

森は、必死にガムテープをはずそうとするが、粘着力があるようで、まったくはずれない。

「貴様は、植木耕助を呼び出す餌になってもらう」

森に能力を使った男は、ニヤリと、笑った。

そして、森を連れて行く。

(植木、助けて・・・)

その願いが届くわけがなく、森は男につれてかれてしまった。


「やべー。寝坊した。学校に間に合うか?」

かなりの寝坊をした植木は、急いで学校に向かった。

電光石火を使えるようになってからは、寝坊しても、遅刻が一度もしなくなった。

「よし。ギリギリセーフ」

なんとか、時間ぎりぎりで、学校についた植木。

しかし、ある異変に気づく。

靴箱に森の靴がない。

(あれ?森、先に行くって言ってたのにな・・・なにかあったのか?)

不安になりながらも、自分の靴箱を覗く。

その瞬間、不安は確信になる。

「これは・・・」

一つの手紙が入っていた。

そこには・・・

「森あいはあずかった。返して欲しかったら、いますぐ13丁目倉庫に来い!」

その手紙を読んだ瞬間、急いで植木は学校をとびだした。

(森は、おれが遅刻したから捕まったんだ!くそ!なんで、おれは寝坊をしたんだ!)

自分が寝坊をして、そのせいで森がつかまってしまったという事実に、後悔をしていた。

(森・・・無事でいてくれ!)

電光石火を使って、森の捕まっているという倉庫に向かった。

13丁目は、決して遠くない。

電光石火を使えば、3分でつく。

(こうしているうちにも、森が・・・)

植木の頭には、森が倒れている姿が思い浮かんだ。

そんなことはいやだ!

植木は天界力を加え、さらにスピードを上げた。


やがて、倉庫の前に着いた。

(森、無事でいてくれ!)

森の無事を願いながら、倉庫の中に入る。

倉庫の中は真っ暗で何も見えない。

おそらく、植木がきたことはばれているだろう。

植木は、足を速め、森を探した。

とはいっても、なにも見えないし、音もしない。

(くそ!森、どこにいるんだ!)

苛立ちばかり、募っていく。

そのとき

ーカタンッー

近いところで、何かが落ちる音がした。

音がしたほうに急いで向かう。

音がしたところにいたのは・・・

「ん〜ん〜」

「森!」

ガムテープでぐるぐる巻きにされている森の姿だった。

ーベリッー

とにかく、植木は森の口のガムテープをはずした。

「森、大丈夫か?」

「う、うん。平気・・・」

森は、とくに外傷もなかったので、安心した。

ホッとしたのもつかの間。

電気がつき、誰かの気配がする。

「!!!」

気配に気づき、植木は戦闘態勢にはいる。

森が体を震わせている。

先ほど、自分を誘拐した相手だ。

恐怖するのもおかしくはない。

そんな森の様子を見て、植木は森の頭の上に手を置いて、声をかけた。

「大丈夫だ。おれが絶対森を守ってやるから!」

すると、森の体の震えが止まった。

「植木・・・気をつけてね」

「ああ!」

森からの言葉をもらってやる気が出た植木。

ついに、敵を見つけた。

「そこか!」

植木は、電光石火で近づく。

しかし、森はそいつがトイレットペーパーをもっていることに気づく。

「植木、離れて!」

「え!?」

言われたときにはもう遅かった。

『トイレットペーパーをガムテープに変える能力』

案の定、植木も捕まってしまった。

「貴様さえ消しておけば、あとは楽になる」

ードスッー

「ゴフッ」

植木の腹に、蹴りが入る。

思わず、植木は吐血する。

容赦なく、植木をボコボコにする。

「やめて!植木が、死んじゃうじゃない!」

森の必死の言葉にも、当然耳を貸さない。

「ゲホッ ゲホッ」

植木の体は、もうボロボロである。

ードサッー

植木は、ついに倒れてしまった。

「さて・・・」

そして、敵は森に標的を合わせる。

徐々に森のほうに近寄ってくる。

「やだ・・・来ないで!」

先ほどの恐怖がよみがえってくる。

動くこともできない。

「森!はやく逃げろ!」

植木に言われても、森は体が震えて動くことができない。

もう、森と敵との間は1mもない。

「やめろーーーーーー!!!!!」

植木は叫びながら、必死に残っている力を振り絞った。

すると・・・

ーベリッー

ついに、ガムテープが取れた。

どうやら、蹴られたりしていたため、粘着力が消えたようだ。

「なに!?」

「電光石火!」

敵が驚いている間に、森のもとに駆け寄り、森を持ち上げる。

「くっ!『トイレットペーパーをガムテープに変える能力』」

「花鳥風月!」

植木は、森を胸に抱きながら、空を飛び、ガムテープ攻撃をよけた。

胸の中にいる森は、体が震えたままだ。

森の体のガムテープをはがし、地上に下ろした。

「植木・・・」

「森、絶対に勝ってくるから!絶対に、ここで待ってろよ!」

「うん・・・」

森がうなずいたのを確認すると、ふたたび花鳥風月で、敵に近づく。

「あの女との、お別れは済んだか?」

「おまえは、絶対にゆるさねえ!!!」

『トイレットペーパーをガムテープに変える能力』

しかし、植木は花鳥風月で、かわす。

そして・・・

「十ッ星神器、魔王!!!」

魔王を呼び出し、敵のすぐとなりを攻撃させた。

建物が跡形もなく、吹き飛ぶ。

「次は、当てるぞ・・・」

「ヒ、ヒィッーーー」

敵は、魔王の威力がわかったとたん、急いで逃げ出した。

植木は、森の元へと戻る。

「なんで、魔王を使ったの?」

「あいつが、森を殺そうとしたから・・・そう考えたら、許せなくて・・・」

魔王は、一撃でも、喰らったら死んでしまうような技だ。

たとえ、どれだけいらだっても、植木は使おうとはしなかった。

しかし、今回は植木を怒らせすぎたようだ。

「ごめん・・・」

「今度からは、使わないでね・・・」

「ああ」

「じゃあ、いこっか・・・」

「森・・・」

「なに?」

振り向いた森を、植木は抱きしめた。

「え!?う、植木!?」

「無事で、よかった・・・」

植木は涙を流していた。

「おれ・・・森が捕まったとき、恐かった。もしかしたら、森は殺されてるかもしれないって考えたら、森が倒れている場面ばかり浮かんだ。だから、森が生きていてくれたとき、本当に安心した」

森は抱きしめられながら、話した。

「植木・・・あたしね、恐かった・・・殺されるかもしれないって、考えたら恐かった。でも、植木が見つけてくれたとき、本当に安心したの」

森は、植木の胸に顔を埋めた。

「これからは、いつもいっしょに登校する!・・・絶対に寝坊したりしないから!森を不安にさせないから!」

植木の言葉に森は涙が出た。

「植木・・・ありがと・・・」

あなたがとなりにいないといつも不安になる。
きみがいつもとなりにいてくれないと不安になる。
だって、心の安らぎをくれる唯一の人だから・・・
だから、もう不安にならないで・・・

終了



あとがき
シリアスが多いですねーー。というか、初めてくらいの戦闘シーンを書いてみました。
駄作かな?これは・・・
まあ、いろんな人に読んでもらいましょう。
以上、朔夜でしたー!

2004年12月7日