おまえといるだけで・・・
『女子に好かれる才』がなくなってから、おれは女子たちには相手をされなくなった。
『走りの才』がなくなってから、陸上部から、期待の声が上がらなくなった。
『勉強の才』がなくなってから、先生にあきれられるようになった。
はっきりいって、最悪な人生。
でも、そんな人生でも、救ってくれる人間がいれば、大丈夫なんだなー、と思う。
まるで、だれにも相手をされずに、いじめを受けるようになった毎日。
そんな日常でも、いつもそばにいてくれる人間がいるだけで、学校に行こうと思える。
どれだけ、一人になっても、お前がそばにいてくれるだけで、すべてよくなってしまう。
あいつにとっては、なにげない行動なのかもしれない。
でも、おれにとっては、一つひとつが、とっても暖かいんだ。
おれに向かって、話しかけてくれること。
おれに向かって、笑ってくれること。
おれに向かって、怒ってくれること。
おれのことを心配してくれること。
こんな当たり前のことでも、おれには、暖かいことなんだ。
そばにいるだけで、これだけ癒されるのは、幸せなのかもしれない。
もし、お前がいなかったと思うと、ぞっとする。
いなかったら、おれは今ごろこんなに元気ではないだろう。
コバセンが地獄に堕ちたときも、いままで、危険になったときも、お前が励ましてくれたから、今の俺がいる。
だから、おれにとって、一番大事なお前が危険な目にあうと、俺はなにがなんでも、守って見せる。
たとえ、おれがお前をかばって死んだって悔いはない。
おまえが、救ってくれたことは、そんなことじゃ、返しきれないから。
たとえ、あいつを救うために自分が犠牲になることになっても、喜んでそれを受け入れる。
死ぬことは確かに怖いけど、お前が死ぬことが一番怖いんだ。
お前が、笑っていてくれれば、おれは、それだけでいいんだ。
おまえが、けがをしたり、泣いたりするのは、見たくない。
それは、すべて自分のせいだと思ってしまう。
『守りきれなかったのはおれのせいだ。』『おれが近くにいれば』と。
おれのこの思いは、一生自分の中にしまっておくつもりだ。
おれが、気持ちを伝えたって、あいつが幸せになるわけじゃない。
他の男とのほうが、絶対に幸せになれるはずだ。
でも、おれは、永遠にあいつの笑顔が見れるのなら、それでもいい。
だって、おれにとっては、あいつが生きていてくれるだけで、満足だから。
あいつが、いまおれのそばにいてくれるだけで、幸せだから。
終了
あとがき
どうでしたでしょう。このページの2本目のシリアス小説。
植木視点の森に対する思いや、感謝を書いて見ました。
なぜか、甘い作品よりもこっちのほうが得意だね。俺。
でも、こういう話も好きだけど、甘いのはもっと好きだから。
がんばるぞーーーーー。以上、朔夜で
2004年12月7日