クレヨン










植木たちは、神を決める闘いのわずかな休みを利用し、鈴子の別荘に来ていた。

「うわー。きれー」

そこは、ベランダから海が見えるという、まさしくゴージャスな別荘だった。

植木たちは、せっかく海の近くに来たのだからということで、みんなで泳ぎに行った。

植木は、海は久しぶりなのか、佐野やヒデヨシと競争をしていた。

「よーし、佐野、勝負だ!」

「いいで。なら、負けたら、なにする?」

「なら・・・」

植木と佐野は、負けたほうがあることをすると約束をして、勝負をした。

結果は見事に佐野の勝ち。

「やったで。わいの勝ちや。じゃ、植木、約束守れよ!」

「な、なあ。もう一度勝負しねえか?」

「あかん。負けは負けや。男に二言はないやろ」

「うぅー」

植木は、少しはなれたところで泳いでいる森のところに向かった。

森は、こっちに来る植木に気づいたのか、声をかけた。

「植木?どうしたの?」

植木は、森の水着姿を見て、一瞬くらっとした。

(な、か、かわいい!)

植木は、森の姿に見とれて、ボーっとしていた。

「植木?どうしたのよ?」

森がまた話しかけてきたので、正気に戻った。

(やべぇ。おれ一瞬、見とれてた)

植木がそんな風に見ているとは思わず、森は聞いた。

「なんか用なの?」

「い、いや。べ、別に」

明らかに、植木は動揺している。森は不審に思い、また聞いてみた。

「植木。さっきからあんた変よ。どうしちゃったの?」

「な、なんでもない!」

森が近づいてきたので、植木は急いで、佐野たちのもとに走っていった。

(変なの。植木、どうしたのかしら)

森は、植木の様子に疑問ばかり持った。

植木は、佐野たちのもとにもどった。

「おい、森と話してきたんか?」

佐野が聞いてきた。

「は、話せなかった・・・」

すると、佐野が言った。

「なんやー。ちゃんと約束は守らなあかんやん。ちゃんと約束したやろ。負けたほうが、好きなやつに告白するって」

「い、いざとなると、緊張して。それで、森が近づいてきたから、余計に恥ずかしくなって、それで・・・」

「おまえ、それでも男か!」

「だって、あいつ、とてもかわいくて。それで、少し見とれて・・・」

佐野はポカーンとあごを開けていた。

まさか、こいつがそんなことを言うとは思わなかった。

まず、あの植木が、女子に見とれるということはありえないと思っていた。

それだけではない。

こいつが、ふつうにかわいいとかを使うとも思わなかった。

(こいつもけっこう純粋なんやな)

佐野はそう思った。

「まあ、今すぐとは言わん。今日中に言えばいい」

「お、おう。わかった。」

夕食の時間が過ぎ、少し時間ができた。

植木は決心した。

(よし、いまなら・・・)

そう思うと、森を呼んだ。

「おい。森、ちょっと話したいことがある」

「なに?植木」

「だから、外に出てくれ」

「うん。わかった」

とうぜん、森はその話したいことは何かを知らない。

佐野は、となりで休んでいた、鈴子に、今日のことについて話した。

「まあ、植木君が。青春ですわね」

「そうやろ。あいつらが戻ってくるのが楽しみや」

佐野たちはひそかに笑っていた。

一方、植木に呼び出された、森は、一人考えていた。

(何だろ。用って。ひょっとして、昼間のことかな。あいつ、おかしかったし)

森の考えは確かに少しは当たっているが、ほとんどがはずれである。

「森!」

考えながら歩いていたため、目の前で植木が止まっていたのに気がつかなかった。

「植木?どうしたの?今日なんか、あんた変よ」

「あ、あのな、お前に言いたいことがあるんだ」

ほのかに植木の顔が赤くなっているのに、森は気づいた。

(どうしたんだろ)

「実はな、その、あの・・・」

「なに?」

「そのな、あの・・・」

「あー、もう、いい加減にしてよ。なにが言いたいのよ」

「つ、つまり、おれは、お、おまえのことが・・・」

植木は、もう顔が真っ赤だった。

「好きだ!」

「え!?」

森の顔も真っ赤になっていく。

「な、なにいってんのよ。あんた・・・」

「いままで隠してきたけど、もう抑えられねえ。おれは、お前だけが好きだ!お前以外は好きになれない。いつも、そばにいてくれたのは、お前だけだ!おれに1番必要な人間は、お前なんだ!だから・・・」

「ちょ、ちょっと待ってよ。あ、あたしは」

「お前がいやならそれでいい。でも、おれが好きなのはお前だけだ。それだけが言いたかった。じゃあな」

植木は、鈴子の別荘に戻ろうとするが、後ろから森に抱きしめられた。

「森!?」

「か、勝手に決めないでよ。あ、あたしだって、あんたのこと、好きよ!でも、あんたは好きな人がいるっていってたから、言えなかったの。あたしだって、1番大切な人は、植木だよ!」

「森・・・」

「だ、だから、いつまでも、いっしょにいてよ」

「ああ、当然だ!お前もだぞ!」

「うん!」

それだけを言うと、2人は自然に抱きしめあった。

君への恋しさも、愛しさも、クレヨンではあらわせない。
それだけ、ぼくにとっては、とても複雑なものだから。



あとがき
はっきり言います。クレヨン関係ないじゃん。クレヨン出てきたのは最後だけだし、それに、色も関係ない。
でも、今回も甘いものを書かせていただきました。今度も甘い作品を書くぞ!!!
朔夜でしたー

2004年12月7日