きみのために









「植木っ!」

その声が聞こえたときには、おれはアノンに魔王を叩き込んでいた。

これがアノンに当たれば、まちがいなくアノンは倒れる。

しかし、おれも・・・消える。

でも・・・おれは後悔しない!

仲間を守るために消えてもいい。

森を守るためなら、たとえ死んだっていい。

「これで終わりだ!魔王ォオオ!」

自分ではなった技なのに、少しだけ後悔した。

おれに見せた森の涙。

『一人でだめなら私だっている!!!』

『みんなだっている!!!』

『あんたは一人じゃない!!!』

『だから・・・だから消えないでよ・・・』

嬉しかった・・・

ぎゃくにそれが戸惑いにもなった。

このまま死んでもいいのだろうか?

おれは、森を悲しませている。

森に笑っていて欲しい。

でも・・・おれが消えたら、森はどう思うだろうか?

あいつの涙は見たくなかった。

だから・・・いつまでも、守っていてやりたかった。

この戦いが始まる前、森にお守りを渡した。

(森・・・あのお守りの効力は、効いたのか?)

森にお守りを渡した理由は、森に生きていて欲しいから。

そのためなら、たとえ神にでも、頼りたかった。

あいつに言いたいことは、いくらでもある。

感謝の言葉も言い尽くせないほどある。

もっとかまって欲しかった。

もっと笑った顔を見ていたかった。

(でも・・・これで世界が救えるなら!)

いくらでも後悔することはある。

森との約束を果たせなかったこと・・・

心配している父親の元に帰れないこと・・・

戦っている間にできた仲間たち・・・

(森・・・ごめん。おれ・・・約束守れそうもない・・・)

森に会えなくなると思うと、涙がこみ上げる。

でも・・・そんな顔を見せたら森がもっと悲しむ。

だから・・・最後くらいは笑っていようと思うんだ。

アノンに魔王が当たる瞬間、おれは森の顔を見た。

泣いていた・・・

最後くらいは、森の笑っている顔を見たかった・・・

でも・・・こんな状況で笑っていられるわけがないか・・・

もっとそばにいてやりたかった・・・

そばにいて欲しかった・・・

でも、その願いももう届かない・・・

たとえ、このことばが最後になってもいい。

言い尽くせないけど、これだけは言いたい。

「ありがとう・・・みんなと会えてよかった」

(森・・・おまえに会えたのは偶然じゃないよな・・・おれは信じてるから・・・)

もう一度、あのお守りに願いたかった。

(おまえと、ずっといっしょに居たかった・・・)

無理だとわかっていても、いい。

この願いは届かない。

でも・・・この願いは、本当の思いだから・・・

きみだけが、おれの勇気(ちから)なんだ

「うえき・・・」

震えた森の声がおれの耳に届いた。

終了




あとがき
サンデー45号の植木を読んで、すぐにこの小説を書きました。
とっても気に入ったので、すぐに書きました。
もう、自分でも涙しましたから・・・
すいませんね。
以上、朔夜でした・・・

2004年12月7日