MDって何の略?










「やったぞ。森。やっとMDウォークマン買ってもらえた。」

「そう。よかったわね」

「なんだよ、森。つめたいな」

植木に勇気を出して告白をしてから、はや1年。

毎日がこんな風だ。

植木にとって、新しいものは何でも嬉しいらしい。

どんなものを買っても報告してくる。

でも、うっとおしいとは思ったことがない。

こんな植木の性格が好きだからだ。

「だって、べつにMDくらいいまどき、だれでも持ってるわよ」

「そうなのか?」

「そりゃ、そうでしょ」

とはいったが、実質、森はMDをもっていなかった。

買いたいときはあったのだが、女子というのは次々と買いたいものが出てくる。

MDに回す金はほとんどその前に使ってしまう。

「ところで、植木って、どんな音楽を聞くの?」

「ん?知りたいのか?」

「当たり前でしょ。植木のこと、ひとつでも知りたいんだから・・・」

仲はいいが、いつもはそんなそぶりは見せない二人だが、ここらへんは、まさしくバカップルといったところか・・・

植木は森に近づき、イヤホンを一本貸した。

森はそれを植木のいるほうとはぎゃくの耳に付けた。

わざわざ植木に近づくために、外の耳に付けたのだが、やっぱりバカップルだ・・・。

植木も、森がいるほうとはぎゃくのほうの耳にイヤホンを付けた。

それで二人はくっつくように、歩いていた。

植木が聞いていた歌は、演歌だった。

(意外と植木ってこういうのが好きなんだ)

また植木のことをひとつ知ることができた。

近くにいるうちに、好きな食べ物とかたくさん植木のことを知ることができる。

いつの間にか、植木の近くにいることが当たり前になっていた自分。

だからこそ、植木のことが好きになったのかもしれない。

「ねえ、植木に問題出していい?」

「なんだ?」

「CDって何の略だと思う?」

「CD?CDは・・・なんなんだ?わからねえ」

「答えはね、コンパクトディスクって言うのよ」

「よく知ってるんだな・・・」

植木よりも物知りということが少し嬉しかった。

「じゃあ、MDはなんていうか知ってる?」

「MD?MDは・・・あ、わかった!」

「なに?」

「言っていいのか?」

「あたりまえでしょ」

「なら、言うぞ」

一呼吸おいて、森のほうを真顔で見る。

(な、なんなの?植木)

植木がいきなりこっちを向いたので、顔が赤くなった。

「森のことが大好きだ!」

大声で植木が叫んだ。

「ななな、なに言ってんのよ!」

「だって、本当のことだろ。おれは森が大好きだから」

「それは嬉しいけど・・・恥ずかしいじゃない」

「いいじゃん。恥ずかしくたって、おれたち付き合ってるんだし・・・」

(こういうときだけに、付き合ってるって言葉使わないでよ。)

森は、植木の笑顔に弱い。

(ま、いっか。とっても、いま嬉しいし・・・)

いま、心の中に流れている音楽はなんだろうか?
ひょっとしたら、澄んだ音がするきれいな音かもしれない。
言葉のひとつひとつで、心は変わるものだ・・・
空のように澄んでいるかもしれない。闇のように暗いかもしれない。
自分の心の音を澄んだ音に変えてくれる人を探してみるのもいいかもしれない。

終了




あとがき
イエーイ。植木と森のバカップル小説でしたー。
MDって言うお題が難しかったんですが、Mは森、Dは大好きというのがピキーンときました。
いやー。本当に小説を書くのは楽しいですね。
以上、朔夜でしたー!

2004年12月7日