パチンコ












植木たち(ヒデヨシは、用事があっていない)は、休日を利用してゲームコーナーに来ていた。

「よっしゃ、遊ぶで」

先陣を切って向かったのは、パンチ力計測器だった。

「佐野、お前、いきなりなにやろうとしてるんだ?」

「当然、パンチ力を測るんや。いつどこで戦闘があるかわからんしな。これで、日々どれくらいつようなったのか、調べへんと」

だからといって、いきなりパンチ力を測るやつがいるのか?と植木は思う。

「そうや、植木、どっちが殴る力が強いか勝負や!」

植木はあまり乗り気ではなかったが、森が

「植木、勝負してやんなさいよ」

というので、やることになった。

「じゃ、いくでー」

といって、出た佐野のパンチ力は、140だった。

「まあまあやな。この前よりも4増えとる」

ふつう、中学生で、140も取るやつがいるか?とは思わないでください。

今度は、植木の番だった。

(めんどくさいなー)

植木はそう思っていたのだが、

「植木、負けんじゃないわよー」

という森の応援があるので、少しはやる気が出た。

「ドゴッ」

植木のパンチ力は、135だった。

(くっそー。負けた)

「おれの勝ちやな。ま、この中で一番強いのは俺やし」

すると、そのことばを聞いていた森が、言った。

「だれが一番強いですって!」

その言葉は、少し怒っているようにも思えた。

「だって、わいと植木以外はヒデヨシと鈴子と、お前だけやん。当然、植木が負けたら、おれがいちばんにきまっとるやんか」

森は、自分が女としてなめられていることに、少し腹が立った。

「わかったわ。あたしがやってやろうじゃないの」

「は?おまえが?無理や無理。140なんて、女子の出る数値やないで」

しかし、植木は違っていた。

「佐野。あんまり、森の力をなめると、怖い目にあうぞ」

グローブをにぎって、森は、思い切って、なぐった。

出た数値に、みなが唖然としていた。

「ひゃ、170!?」

これには、もともと予想していた植木も、あなどっていた佐野も唖然。

「どう!あんたがいちばん強いわけじゃないのよ」

森は、自信満々に言う。

(これから、植木は苦労しそうやな)

佐野はそう思った。

いろいろなゲームをしていたのだが、ひときわ目をひいたのは、エアホッケーだった。

(よし、今度はこれでやるか)

すると、佐野はいった。

「じゃあ、今度はこれで勝負や」

そのエアホッケーは、2人ペアでやるものだった。

「別にいいけど・・・」

植木は、答える。

「じゃあ、おれと、鈴子チーム。そして、植木と、森チームでええな」

それにはみんな納得した。

「じゃあいくで」

佐野が打つショットが一発で、植木たちのゴールに入る。

「ちょっと、植木。ちゃんと止めなさいよ」

「だって、はやいじゃん・・・」

植木たちは、コンビネーションがあるのかないのか、微妙なところだ。

負けたので、当然植木たちのほうにパックが来る。

植木がうったが、とてつもなく弱い。

ふつうにとられると思ったのだが、向こうは、ちょうど取りに行った二人の間を抜けた。

「おい、鈴子。ちゃんと取れや」

「佐野くんが、取ろうとするからいけないんですわ」

「なんやとー・・・そういうお前こそ取りに来るからいけないんや」

「なんですって」

向こうは、まったく持ってコンビネーションのかけらもない。

それから、なぜかホッケーだというのに、一発うっただけで決まるのが続いた。

「ちょっと・・・ちゃんと取りなさいよ」

「だって、取れねえじゃん」

植木たちは、相手の打つスピードが早すぎて取れないのだが、向こうは、パックは遅いのに、コンビネーションがなく、いつも、間を抜けている。

「だ・か・ら。わいがとるから、鈴子はちゃんと守れっていうとるんや」

「佐野君だって、わたしが取れるパックを取りに来るからいけないんですわ」

あいかわらず、コンビネーションが芽生える気配もない。

結果は、植木たちの勝利になった。

最後に、5枚くらいが一斉に出てきたのだが、全部、佐野たちのほうに入ったからである。

「あー。負けてもうた。鈴子がちゃんととらんからや」

「佐野君が、私のほうばっかり取るからですわ」

「だ・か・ら。その“ですわ”口調はやめろ」

「そっちだって、手ぬぐいをいつも巻いてるのはおやめなさい」

この二人は、いつになったら、仲よくなれるのか。

一方の植木たちは・・・

「植木、あんた、最後のとき、全部からぶったわよね」

「ああ、そうだったな」

「そのせいで、あたしが、全部とるはめになったじゃない」

「いいじゃねえか。別に」

「よくないわよ」

こっちは、喧嘩というほどではないが、まあ、けんかするほど仲がいいといったところか。

最後はメダルゲームをすることになった。

「もうお金もないし、ここで、最後にするか」

「そうですわね」

「賛成!」

だれも異論はない。

さっそくメダルゲームのコーナーに入ったのだが、人それぞれになっていた。

佐野は、競馬のゲームの席に座ってるし、鈴子は、ポーカーの席に座っている。

森は、すこし、幼い子供がやるようなコーナーにいる。

植木はというと、大人ばかりが座っている、パチンコのコーナーにいた。

「くっそー。でないな」

子供なのに、大人のような言葉を使っている植木。

植木は、さきほどから、7のリーチはたくさん出ているのだが、当たりはしない。

くじ引きの才はあるのだが、さすがにパチンコの才はない。

一方で、佐野や、鈴子、森はガッポガッポだった。

「なんや、植木。まだ、あたってないんか?」

植木は、集中して、パチンコ台を見ている。

(こいつ、他の視点から見たら、完璧な大人やで)

佐野は、そう考えた。

2時間ほどたって、やっと全員のメダルがなくなった。

だが、植木自体は、もう30分でおわっていた。

植木は、森や、佐野たちから、メダルを貸してもらっていた。

帰り道、佐野たちと別れ、森と帰っていた。

「でも、今日は植木は運が悪かったわね」

「そうか?」

「そうよ。だって、1度も当たらなかったじゃない」

たしかに、2時間もゲームコーナーで遊んでいて、一度もあたりがこないはずがない。

運が悪いのも相当なものだ。

すると、植木が思い出したようにいった。

「じつはおれ、佐野からメダルかしてもらうときに、ある約束をしたんだ」

「なに?約束って?」

「おれが好きなやつに告白するっていう約束」

「え!?」

森は少々驚いた。植木に好きな人がいるのは、最初から知っていた。

しかし、今となって聞くと、ちょっと、不安になってしまう。

(植木の好きな人って誰なんだろ?)

「植木の好きな人って、どんな人?」

森は、少し期待をしてかしないでか、植木に聞いてみた。

「えっと、いいやつで、優しくて、怒ると怖いんだけど、それで、おれがそいつを一番守りたい」

一番守りたいという言葉で、森はショックを受けた。

(そうだよね。あたしは、バトルに参加してるんだから、守ってくれるだけだもんね。本当に、植木が守りたい人は他にいるんだ・・・)

心の奥底が、ズキッと痛む。

「それで・・・」

植木がまだ続きを言おうとした。

「一番おれの近くにいるやつ」

「え!?」

植木の視線はこっちを向いていた。

(ど、どういうこと?)

森は、疑問に思いながらも植木の話の続きを待った。

「つまりそいつは・・・森。おまえだよ」

「え!?ほ、本当なの?」

「こんなときに、嘘なんかつかない」

森の目から涙が落ちた

「森!?」

一瞬、植木は、森はいやだったのかと思った。

「どうしたんだ?いやだったのか?」

すると森は、思い切り首を横に振った。

「ううん。うれしいの。植木が好きな人が私で、そう思ったらなんか涙が出てきて」

そのことばを聞いて、植木はホッと胸をなでおろした。

そして、森を自分の胸の中に、いざなう。

「森、大好きだ。これからも一緒にいてくれるか」

すると、森はいった。

「当然でしょ。あたしがいなきゃ、何にもできないんだから。あんたは・・・」

2人は抱きしめあった。

終了


後日談

「おい。植木、ちゃんと約束どおり、いったんやろうな」

「ああ、言ったけど・・・」

「んで、どうやったんや」

「OKもらえた」

「そうか・・・よかったやないか」

そして、佐野は右ポケットから、写真を出した。その写真は、植木と森が抱き合っている写真だった。

「は!?な、なんだこれ!」

「おまえらのや。あの後こっそりつけたんやで。これで、おまえらの関係はすぐにばれるなー」

「そ、それを渡せ」

「やだね。お前の弱みのものを簡単に渡せるかい」

あとで、佐野を電光石火で追いかけ、写真を奪った植木だった。



あとがき
途中までは、甘くはないのですが、最後は甘くしてみました。
どうでしょうか。僕の作品はこういうものばっかりですが、許してください。
甘いものしかかけないんですよ。
これからも、がんばります。
以上、朔夜でした

2004年12月7日