あなたとわたしを繋ぐもの










「なあ、森。いっしょに、明日どこか出かけないか?」

帰り道で、植木のその言葉が始まりだった。

いっしょに出かけるのは、よくあることだ。

「うん。いいわよ。それで、どこにいくの?」

「秘密だ」

「え〜。いいじゃない。教えてくれたって」

「教えたら楽しみがなくなるだろ」

「そりゃ、そうだけど・・・」

森にとっては、植木と出かけれること自体が幸せなのだが・・・

「じゃあ、明日な」

「うん。わかった」

そうして、二人は分かれた。

二人は、すでに付き合っているではないが、もうすでに、そのレベルには達している。

二人とも、相手のことが好きだし、いっしょに帰るのは当たり前だ。

あとは、告白だけといったところだ。

森と植木は、それぞれ家で、明日を楽しみにしながら、眠りについた。

翌日・・・

森が起きた時刻は、なんと11:00だった。

「あ、待ち合わせ時間。とっくに過ぎてる」

待ち合わせ時間は、8:00である。

もう、3時間もたっている。

(どうしよ。いまからいっても、いてくれるかな?)

寝巻き姿で、困っているとそとでチリンチリンという音が聞こえた。

(?。なに?)

外をのぞいてみると、そこにいたのは植木だった。

自転車に乗って、待っている。

(植木、ひょっとして待ってても来ないから、あたしの家の前に来たの?)

すると、それまで道路側を向いていた植木の視線がこっちに向いた。

顔が、少しだが赤く染まった。

自分が遅れたことや、寝巻き姿ということもあるが、やはり好きな人なのだ。

あまり、目線をあわすことができない。

「森!はやく、着替えてくれ」

「う、うん。わかった」

そのとき、植木の頬が赤く染まっていたことに森は気づかなかった。

森は急いで着替えて、部屋を出ようとした。

すると、外から

「森、そこから降りろ!」

という植木の声が聞こえてきた。

再び外をみると、自分の部屋の真下に、植木が立っているのだ。

「え?で、でも・・・」

「絶対に、受け止めるから」

「で、でも、やっぱり・・・」

植木を信頼していないわけではない。

いや、植木が受け止めてくれないとは微塵も思っていない。

しかし、さすがに二階から飛び降りるというのは、恐い。

「森!」

「わ、わかったわよ。でも、絶対に受け止めてよ」

「ああ」

すると、森は二階から飛び降りた。

最初は少し恐かったが、飛んでみるとあまり恐くなかった。

それは、植木が受け止めてくれるとわかっていたからだ。

やがて、落下が止まった。

植木が受け止めてくれたからだ。

しかし、そこで予想外のことが起きた。

それは、植木の顔が度アップだったことと、自分がお姫様抱っこになっていることだった。

しばらく、動こうとしない、植木と森。

「ちょ、ちょっとそろそろ離してよ」

「あ、ああ」

植木はすぐに下ろしてくれたが、森は少し未練があった。

(本当は、いやだ!って、いって欲しかったな)

別に、お姫様抱っこされるのはいやではないし、植木の顔が度アップのことも、ぎゃくに嬉しいことだ。

まあ、恥ずかしくてそんなことはいえないのだが・・・

しばらくその場で立ち尽くしていると、植木が自転車に乗ってこっちにきた。

「ん」

植木は、自分の自転車の後ろを指差す。

(なに?二人乗りしようって言ってるの?)

「もしかして、二人乗りするの?」

「ん」

植木は、うなずいた。

森にとっては恥ずかしいだけなので、断る理由も無い。

静かに、植木の後ろに座った。

「んじゃ、行くぞ」

すると、植木は自転車をこぎ始めた。

目に飛び込んでくるのは、いつも見る景色。

しかし、植木と見ると、なぜかそうは思えなかった。

自転車が、不意に止まる。

いきなりだったので、植木の背中にぶつかった。

「ちょ、どうしたのよ?」

「坂道。だから、しっかりつかまってろよ」

「え?ちょ、わっ」

いきなり、はやくなる。

思わず、植木の腰に手を回す。

自分で行った行動にもかかわらず、鼓動が早くなる。

自分の鼓動が植木に伝わらないかと不安になる。

―トクン トクンー

(え?)

なぜか聞こえてくる鼓動の音に耳をかたむける。

(これって、わたしの?ううん。違う。じゃあ、もしかして・・・)

自分と、植木以外、近くにはいない。

つまり、その鼓動の音は、植木からしているということだ。

(植木も、ドキドキしてるの?)

森は植木の腰に手を回して、背中に体を倒した。

「森!?」

植木は、いきなりの出来事に驚いているようだ。

「しばらく、このままでいさせて・・・」

「あ、ああ」

できるなら、このまま離れたくないと、森は思っていた。

自分から聞こえる鼓動の音も、植木から聞こえる鼓動の音も早い。

(やっぱり、あたしたち、ドキドキしてるね)

植木も自分と同じことを思っていると考えると、嬉しくなった。

やがて、大きな丘に着いた。

とても見わたしがよくて、きれいだった。

自然に、植木と森は手を繋いだ。

「ねえ。あたしに、これを見せようとしてくれたの?」

「ああ。おれだけで、来てもつまんないしな」

「植木・・・ありがとう」

自然に、二人の手は強くつながる。

「森・・・おれと付き合ってくれるか?」

「え?」

その言葉があまりにいきなりだったため、嬉しいことよりも、驚きのほうが強かった。

「おれ・・・森のことが好きなんだ。おれ、こんな景色よりも、おまえを見ていたいんだ。ずっと・・・だから、おれのそばにいつまでもいてくれ」

「植木・・・あたしもだよ」

やっと、思いを伝え合った二人。
付き合いだしたばかりの二人だけど、
その絆は、二人を繋いでいる手よりも強くて、
いつまでも離れない。

終了



あとがき
いや、書いてみました。
こういうのもやっぱりいいですね。
もう少しで、植木終わってしまいますけど、小説を書くのを止める気はありません
ですので、安心してくださいね
以上、朔夜でした。

2004年12月7日