〜植木視点〜
そう、あれはもう、7年も前の話だ。
植木は、タキシード姿をして、相手の登場を待っていた。
7年前の約束を果たしてくれた、花嫁を待って・・・
癒される場所
「おれはお前が好きだ」
「うん。あたしも・・・」
7年前、自分は神を決める闘いに勝利した。
そのとき、一番好きだった人に自分は告白したのだ。
返事は、OKだった。
おれは、とっても嬉しかった。
「いつまでも、そばにいてくれるか?」
「当然でしょ。だって、いたいんだもん」
いつまでも一緒・・・それは、植木にとって一番願っていたことだった。
どんな人間でもいつかは、別れてしまう。
植木にとって、そんなことはいやだった。
どうせなら、告白して、自分の気持ちに整理を付けたかった。
(断られたのなら、それでいい。おれは、お前が一番好きだから・・・)
それから、2人は同じ高校、同じ大学に通い、いつも一緒に帰っていた。
戦いが終わってからはすべての才能がもとにもどったので、中学のころとちがい、女子に好かれていたため、たびたび誤解されることがあったが、それも2人で乗り越えることができた。
(7年ってけっこう長いんだな)
7年の間にいろいろなことがあった。
佐野と鈴子が付き合ったとか、ヒデヨシは保育園の先生になったとか。
自分もずいぶんと格好が変わった。
けっこうのびた背丈。りりしくなった顔。
中学のころの思い出も、いまではいい経験だ。
あの戦いがあったからこそ、あいつと深くかかわることができたのかもしれない。
あいつはいつもそばにいてくれて、おれに勇気と元気をくれた。
あいつがいたからこそ、今の自分があるのかもしれない。
(いまでも、あいつには恩を返しきれてないんだよな)
自分が、あいつを助けたことでも、足りない。
おれは、一瞬だけだが、あいつは、一生のことを助けてくれた。
そんなことからだろう。おれがあいつに、興味をいだいたのは。
それまで、そういう話には、全然興味がなかったおれが、あいつ一人に今は夢中である。
(やっぱり、おれ。あいつが大好きなんだなー)
いまは、あのころの能力はない。
でも、いまおれたちを結んでいる糸は、そんなものよりももっと強力で、決して切れない糸だ。
おれにとって、あいつが一番居心地のいい場所だ。
たとえ、だれに言われようと、その場所を譲らない。
もう、離したりしない。
「新婦さまの入場です」
植木は、入場してくる森の姿を見て、かすかな笑みを浮かべた。
〜森視点〜
森は、ウェディングドレスに、着替えながら、思い出していた。
あれは、もう7年前の話だっけ
戦いが終わって、一息ついたら、いきなり、あいつに告白されて。
あたしも、あいつのことは気になっていたから、嬉しかった。
あたしは、意地っ張りだから自分から言うことはできなかったけど、あいつはそんなあたしの性格も考えてくれたんだと思う。
あいつに、“いつまでもそばにいてくれ”っていわれた瞬間は、とっても嬉しくて。
あたしも、あいつのそばにいつまでもいたかったから、“いたいんだもん”といえた。
あいつは、瞬く間に身長が伸びて、あたしは見上げなきゃ顔が見えないほどに成長した。
(あいつの成長振りには佐野たちもびっくりしてたもんね)
戦いのときなくなった才能が全部もとにもどったのには、よかった反面、困ったこともあった。
それは、“女子に好かれる才”がもとにもどったことだった。
たくさんの女子に、告白される日々に植木が戻って、あたしは何回も嫉妬した。
そういう時は、自分の意地っ張りな性格に後悔したことがあった。
なんで、素直に“あんただけが好きなのよ”といえなかったのか。
(やっぱり、あたしは、植木が大好き)
でも、植木は断るとき“おれには森がいるから”といつも言ってくれた。
とっても、そのことばを聞くたびに嬉しかった。
自分は、こんなにも愛されているのかと思って
同じ高校、大学に進んで、一緒に帰れたのはとっても嬉しかった。
いつも、植木のそばにいることができた。
いつも、植木が落ち込んでいるときに励ましてあげれた。
だから、とっても今の状態に後悔しないんだ。
だって、本当にこれからは、ずっと植木のそばにいれるんだもん。
あたしは、いつも疲れて帰ってくる植木を癒してあげたい。
それで、いつまでもずっと一緒にいたい。
「新婦さまの入場です」
森は、ウェディングドレスを着飾って、先に待っている植木のもとへと進んだ。
終了
あとがき
どうでしょうか。なんか安心って聞いたら、結婚のときぐらいしか思いつかなくてごめんなさい。
こんな未来のことを書くのはいけないですね、でも、たくさん書きたいです。
また、よろしくお願いします。
以上、朔夜でしたー
2004年12月7日