「こ、こうか?」
「ぁんっ……。う…ん。そん…な感じ」
大きなベッドの上で行為を行う二つの影。
一人は、植木耕助という名の少年で、もう一人はその彼女である、森あいという名の少女だった。
だが、この二人の光景を見ていると、どこからどう見ても、森という少女がリードしているようにしか見えなかった。
同い年のはずなのに、何故こんな現象が起きているのか、それは数分前にさかのぼる。
どっちがどっち?
数時間前、森は植木の家を訪れていた。
理由は、一緒に公園の掃除をしようぜ。と植木に誘われたからだ。
そして、数分前、この植木の家に戻ってきたばかりだった。
(ホント、植木ってばいつまで経っても変わらないもんね)
森がはじめて植木に会ったのは学校だったが、まともに喋ったのは公園だった。
そのときも、植木は自分の能力を使って公園に木を植えていた。
とりあえず、植木はボランティアが好きな人間だった。
恐らく、専属の神候補だったコバセンの思想も影響しているのだろうが。
(でもね……)
確かに、掃除なのに熱心なことはとってもいいことである。
だが、それは自分たちに何にも関係がなければの話だ。
そう。一向に植木は、“あっち”関係のことをしようとしないのである。
自分としては恋人同士になった以上、してほしいという願いもあるし、やはりそれが大切なことだということは知っている。
でも、今の森たちは初めて会ったときからあまり変わらないのである。
それは植木が森を大切にしているからなのかもしれないし、気を使っているのかもいるのかもしれない。
だが、森としてはそろそろそれ以上の関係になってみたいのである。
(今日も、一応覚悟してきたんだけどね……)
恋人同士が相手の家に行くということは、つまり“そういうこと”である。
毎回、いつされてもいいように覚悟しているというのに、やはり今日も植木に裏はなかった。
(いつになったら、進展できるのかな……)
ひょっとしたら、植木は私のことを恋人と思っていないのか?
そんな不安も、森の頭にはよぎった。
「ほら、森。麦茶」
そんな森の心境など知る由もないかのように、植木は運んできた麦茶を森へと差し出す。
「ありがと……」
森は自分の心境を表すことなく、植木から麦茶を受け取った。
そしてゆっくりと麦茶を喉へと流し込む。
冷たい……。かなり、冷蔵庫で冷やされていたようだ。
「森。今日はありがとな」
嬉しそうに笑いながら植木は森にそう言う。
しかし、森には植木の“今日は”の部分しか聞こえていなかった。
今日は。ということは、もう特に何かをするわけではないということだ。
「はぁ……」
今日もまた何もしずに終わるのか。と森は思い、小さくため息をついた。
でも、これで確信した。
このままでは、きっと何も進まないだろうということに。
だからこそ、森は心の中である決心をする。
「ん? どうかしたのか?」
ため息をついた理由が分からないのか、植木は問いかける。
だが、問いかけると森は真剣な表情をして、植木のほうへと視線を向けた。
「植木……」
何かを決心したかのような森の視線に、思わず植木にも緊張が走った。
「キスしてくれない?」
「え?」
森の言葉は、植木を硬直させるには充分な言葉だった。
「な、何言ってんだよ!」
「やっぱりしてくれないのね……」
思っていた通りの植木の反応に、思わず森はガックリと肩を落とす。
そして俯いてしまった森を、心配したのか植木が再び話しかける。
「あ、あのな。や、やっぱそういうのは、大切なことだと思うし、森だって急にやられたら嫌だろ?」
植木の言葉は、ちゃんと森を大切にしてくれている証拠でもあった。
しかし、森はそれを一言で跳ね除ける。
「植木だから、してほしいの……。」
「え?」
一向に埒のあかないことに少し腹立ってきた森は、ゆっくりと植木へと近づいていった。
そして、ゆっくりと自らの唇を植木の唇へと重ねる。
「!?」
思わず植木の顔が見開いた。
そんな植木の反応を知る由もなく、森はすぐさま自らの舌を植木の口内へと滑り込ませる。
「……ん、ぅ……」
植木の口から声が漏れる。
森はすぐさま唇を離すと、森は再び植木と視線を合わせる。
「ホントは……あんたからしてほしいのよ。それにホントはこれだけじゃ、足りないの」
息を乱しながらも、植木は疑問に思ったことを問う。
「……これ…だけ?」
まったく意味を理解していない植木。
森は、そんな植木の片腕の手首を掴むと、ゆっくりと自らの体のほうへと動かしていった。
そしてその手をゆっくりと自らの胸の上へと置かせる。
「なっ!? なっ!?」
手から伝わってくる柔らかい感触に、思わず植木は動揺を隠せなかった。
そんな植木を上目遣いで見つめながら、森は言った。
「ホントは、こんなことだってしてほしいの……」
(そ、そんなこと言われても……)
植木の心情は、まったく落ち着かなかった。
手元から伝わってくる感触は、植木にとってははじめてのものだし、それに森からやられるとは夢にも思っていなかったからだ。
それに、こんな状況に陥っていると、自然とムラムラとしたものがこみ上げてくる。
それを必死に押さえ込もうとするが、そんな感情は徐々に植木の体中へと広まっていった。
「してくれないの?」
森の言葉に、植木の心は揺れ動いていた。
このまま指を動かせば、森はどういった反応をするだろうか。
気になってはいけないはずなのに、知ってみたくなる。
「でもな……」
未だに口を濁す植木に、森は一言。
「意気地なし……」
と、言った。
さすがに植木も、そこまで言われて何もしずに終わることはできなかった。
「分かったよ……」
そして植木はあっけなく敗北を認めた。
(でも、どうすればいいんだ?)
植木にとって、女性の体というものは初めてのものだった。
しかし、そんな植木の心情を読んだかのように、森が答える。
「私が教えるから……」
と言った。
(何で、そんなこと知ってんだ?)
聞いた瞬間、植木は疑問に思ったが、こんな状況でそんなことを考えている暇はなかった。
とりあえず、今回は森に従うしかなさそうだ。
森が植木をリードするなんて、滅多にないことだが。
そう決心した植木はゆっくりと指を動かし始めていった。
初めて知る女性の体と、そしてその反応を身に感じながら……。
終了
あとがき
ま、またまた年齢制限ですか……。
15までとは行かないですけど、12はいってるでしょうなぁ。
またまた年齢制限をしかないといけないとは……。
次、ほのぼのでも書きますよ。
みんなに楽しんでもらえる作品を書かねば!!