第十二話 頑なに肉弾戦

 失礼の無い様、扉にあるインターホンを鳴らす。
 足音が次第に近付いていく。
「あーい?」
 扉が開くと同時に声がする。
 三十路過ぎだと判る外観、白髪と言うべきか、銀髪と言うべきかの髪はボサボサとしている。
「あ・・・、隣に住んでいる秋川さんの代理で見舞いに来ました、神剣析羅(かばやさくら)と申します。」
 果物を前に出して自己紹介をする。
「おーぉー、ありがとさん。」
 小林と言う男は果物が入った袋を手に取る。
「小林殿、ワシはこれで・・・」
「あーはいはい」
 客人がいたのか?
 客人はヨボヨボな爺さん、死に装束の合わせで着物を着ている。
「おや?この子はー・・・」
 客人は俺をまじまじと見る。そこまで可笑しい外観をしているのか?
「巷で“俊足閃光”と謳われている能力者の一人、析羅殿ではないのか?」
「!?」
 結構勘が鋭いな、この爺さん・・・!
「安心せぃ、ワシ等は神候補じゃ。植木殿と、李崩の担当を務める、な・・・」
 李崩・・・?あぁ、さっきの異国人か。と言っても顔なんて殆ど覚えてない。
「析羅殿、二人の戦いを見てみたいとは思わんか?」
「・・・!?」

 ガンジって言う爺さんに引かれて着いたのは草原(此処、関東地方じゃないのか・・・?)。
 植木と李崩が戦っており、離れた所に五段の君がいた。
「誰!?」
「ほっほっ!ワシは李崩の担当神候補のガンジという者じゃ。ちと様子を見に来ただけじゃて。」
「五段の君、再び合間見えるとは思ってなかったぞ!植木と何時も一緒にいるんだなお前は!!」
「あ!アンタはあの時の!!(剣道五段の嘘を今も信じてる馬鹿男!!)」
「何か言ったか?」
 神剣析羅・肝心な時に才を駆使しない中学二年生。
「べ、別に・・・」
 ガンジの爺さんは李崩が何故頑なに能力を使わないのか、彼の過去を語り始めた。ぶっちゃけた話、興味ない。
「・・・じゃあ、アイツが能力使わない理由って・・・このバトルで自分自身を鍛えるためってコト!?」
 話の流れでなんとなく解るだろう?結構鈍いなこの女。
 未だ嘘に気付かない男・神剣析羅(十三歳)。
 それに、李崩は能力を使わない事に拘るから、飽くまで肉弾戦のみになる。対する植木は能力を使えて尚、木の種類をイメージする事により、欠けた所を補う。
 どちらかがギブアップするか引き分けぐらいだろう。
 戦いの流れが読めてくると下らないなと思い始め、人知れずその場を去った。
 五段の君のポケットの中に、牛丼代の請求書を忍ばせて・・・。

 家に着く。すると門の前に人が立っていた。
 季節にそぐわない、厚手のコートを着た少年が・・・。
「あ、やっと来た。待ち焦がれたよ析羅君。」
 知り合いにこんな金髪碧眼の野郎いたっけ・・・?
 確認の為に問うた。
「どちら様ですか?」
 しばらく間が空き、コートの男は手を合わせた。
「あぁ、紹介が遅れたね。初めまして、ボクはロベルト・ハイドン・・・」
 男は赤いシャボン玉と青いシャボン玉を何処からか出し始める。
「最大最強の能力者です。」

  トゥービーコンティニュー・・