家に着く。すると門の前に人が立っていた。
季節にそぐわない、厚手のコートを着た少年が・・・。
「あ、やっと来た。待ち焦がれたよ析羅(さくら)君。」
知り合いにこんな金髪碧眼の野郎いたっけ・・・?
確認の為に問うた。
「どちら様ですか?」
しばらく間が空き、コートの男は手を合わせた。
「あぁ、紹介が遅れたね。初めまして、ボクはロベルト・ハイドン・・・」
男は赤いシャボン玉と青いシャボン玉を何処からか出し始める。
「最大最強の能力者です。」
第十三話 最大最強の能力者・ロベルト
夕暮れに等しい空の下で、二人は会話をしている。
「最大最強の、能力者・・・?」
顔を少々しかめて俺は言う。
「自分で最大最強なんて言う莫迦が何処にいる?普通そう言うのは世間の評価で謳われるもので、自分で堂々と言うのはどうかと思うぞ。」
「確かにそうだね。」
ハイドンと言う男はハハハ、と笑う。
「でも強さとか云々は、君でも判るだろう?」
笑顔のままでハイドンは俺の方を見る。
確かに、笑顔のままでいるが強大な殺気は俺の手の平に汗を浮かばせる。実力の差じゃ、逃げる事も立ち向かう事も恐らくは不可能。法螺吹きではないのは、事実だな。
「で?態々家の方まで来て、俺に何の用だ。自称最強の能力者よ。」
己の弱さを否定すべく、俺は顔に汗を浮かべようとしなかった。
「スカウト、さ。」
ハイドンは右手を出し俺に向ける。顔は未だ笑顔のままだ。
「ロベルト十団に、入らないかい?」
「ロベルト・・・十団?何だソレは。」
聞いた事ない言葉だと思い、問う。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。
「ボクが統率する十人の能力者集団。そして・・・ボクを優勝させる為に他の能力者を潰す能力者さ。」
一瞬、背筋にゾクリと寒気を感じた。
「君は素晴らしい人材だと思うよ?物心ついた頃から鍛えられた技術、直感、そして体力!あらゆる才を持つ君を是非仲間にしたいんだ。一緒に世界を滅ぼそうよ。この世の為に・・・」
滅ぼす?この世界、を?
何考えてんだコイツは。ソレは遠回しに自分も死ぬって事だろ?
しかもこの世の為だと?馬鹿抜かすな。世界を滅ぼして欲しいと誰が言った?
俺の考えはとうに決まっている。覚悟はついた。
俺の答えは・・・
「断る。」
ハイドンは少し顔をしかめる。
「何で?君にとって得な物はないだろう?」
「確かに賢い者は強い者についていく。が、俺は生憎そう言った面では愚の骨頂だからな。信じる者にしかついていかんのだ。」
汗も液体だ、今此処でペットボトルを開けなくとも、戦える。
家族知られず逝くのなら本望だ。
が、次の言葉は
「そうか、ソレは残念だ。今日はこの辺にしとこうかな。」
俺の予想を大幅に裏切った。
「な、戦わないのか?」
「うん、君が望むのならばそうするけど・・・同世代と言う所で大目に見てあげる。でも・・・」
通り過ぎようとすると、俺の耳元で囁いた。
「次断ったら、家族の方がただじゃ済まないから 覚えておいてね?」
そうして俺の横を通り過ぎた。
「入団したかったら、いつでも良いからねー。」
角を通り、奴の足音が徐々に消えていく。
完全に消えた所で今まで溜め込んでいた汗がドッと顔中に流れた。
「くそっ 何だアレは!!」
思わず近くの壁に八つ当たりする。
「あの殺気・・・あそこまで行くともう人じゃない、ソレに家族を盾にしやがった・・・!」
俺が最も執着している存在に、目をつけやがった!!
だが・・・確かに人じゃないと勘付いたが、同族の様にも思えた・・・。
って、俺はまごう事なき人間じゃないか。
ロベルト・ハイドンか・・・。
その名だけは、覚えてやる。
トゥービーコンティニュー・・