ハイドンが俺のスカウトに来てから早数日経過。
 ハッキリ言おう、今俺は機嫌と気分が悪い。ソレは何故か?

 A(答). 電車の中で揺さぶられているから。

  第十四話 傍には酔い止め薬が数十錠

 事の始まりは水寿(みすず)の一言。
「お前等二人には少し隣町まで行ってもらう。」
 突然そんな事を言われたものだから、俺と信(まこと)は呆れ半分に声を漏らす。
「実は今度の日曜に隣町で生徒会同士の交流会があるんだが、俺も紋火(あやか)も都合がつかなくてな。お前等だけで行ってもらう。」
「交通費は一応経費で出してくれるから。電車で行ってくれ。」
 ・・・・・・
「・・・徒歩じゃ、駄目か・・・?」
「着くまでには交流会が終わってると思うけど、それでも良いなら。」
「その分暁中学の敵が増えるが、それでも良いならどうぞどうぞ。」
「・・・・・・」

 と、言う訳で。
 今電車の中にいます。ハッキリ言おう・・・気持ち悪い。
 心配そうな面つきで信がこちらを窺う。
(二人から「析羅(さくら)が自転車に1分乗っただけで簡単に酔える乗り物酔い体質だ」とは聞いてたけど、まさか此処までいくとはな・・・。)
 その時俺は何一つ解っていなかった。
 植木と五段の君も同じ電車にいると言う事に。

 やっと目的地に着く。気分が悪くてしょうがない。
 近辺でシャカシャカ煩い曲が聞こえるが、完全に無視だ。(元々他人だが)他人のフリ他人のフリ・・・。
「あ、あの時いた奴だ。」
 は?
「あー!!アンタが何でココに!?」
 この声は・・・
 振り向くと予想通りの二人+αがいた。
「植木と五段の君!!と、・・・ジ○ン・・・?」
「違う!!作品からまず違う!!」
 知ってる奴がいるのかは置いといて・・・信が三人を見て俺に問う。
「誰?この茶色いブラッシングされてないプーリーと愉快な仲間達は。」
(((プーリーと愉快な仲間達!!?)))
「せめて人間扱いしろ貴様は。」
 ちなみにプーリーは犬の種類で(珍しいそうだ)、ブラッシングされてないとモップみたいな毛になってしまうのだ。
 こいつ等の御陰で酔いも醒めてきたわ。
「まさかこんな所でも会うとは思ってなかったぞ。」
「そりゃこっちのセリフよ!!何でアンタがココにいるのよ!」
「この町で生徒会同士の交流会があるんだよ。うち等は暁中として来てんだ。」
「げ、アンタ生徒会役員なの!!?」
 俺と五段の君が口論している最中、信が男二人と話している。
「俺は澄飼信(すみかいまこと)。宜しくなプーリーとリュック君!」
「植木耕助。中一。」
「B・Jだ、ヨロシク!!」
 三人は和気藹々(そうか?)と会話している。
「おーい析羅、そろそろ行かんと遅刻になるぞー。」
「そうか、んじゃぁなー五段の君と植木とモップ頭。」
「おー」
「二度と顔を見せんな!!」
「誰がモップだ!!」
 喧嘩別れでその場を立ち去った。
 二人が能力者だって事を知ってておきながら、な・・・。

 交流場所まではもう目と鼻の先、と言う所で俺達二人の前に能力者が来た。
「見つけたわ、俊足閃光!」
「私達が優勝する為の魁になりなさい!!」
 何処かでこのポーズ見た事あるな・・・、何処でだっけ・・・
 あぁ そうだ。
「南○キ○ンデ○ースか。」
 俺の開口一番に一同は引く。でもポーズがソレに似てるんだからしょうがない。
「あ・・・デカイ女とメガネの男と一緒にしないでよ!!」
「そうよ、私達はこの辺りで名を馳せてる“北海ドロップス”って言う能力者コンビだっつーの!!」
 パクリじゃん。
「ネットで調べたらあんた等がこの辺りに来るって聞いたからね。」
 ネットで調べられるのか。
「覚悟しな、俊足閃光!!」
 いやだから「俊足閃光」って何?
「“飴玉”を“手榴弾”に・・・」
「“水飴”を“ムチ”に・・・」
 二人が出した飴が光りだす。
「「変える能力!!!」」
 その時には二人の視界に俺達の影がなかった。
 あるのは真上に掛かる、龍となった信の影。
「パクリ風情が、思い上がるな。」
 上から落とす水の雫は槍の雨と化した。

 二人に当たらないギリギリの所で水に戻す。
「これでトラウマになって襲えまい。」
「鬼だなお前・・・」
 待ち合わせの公民館まであと少し。
「行くぞ、暁を背負う物が遅刻とは情けないからな。」
「おぅ!」
 二人は駆け出し、目的地へ進む。

 勿論その後巨大な影があったとか云々で話題になったのは言うまでもないが。

  トゥービーコンティニュー・・・