市立暁中学校生徒会室。遮音設備が整っており能力者に関わる話題をするにはうってつけかもしれないそんな所。
「では第何回生徒会プライベート会議を行う。始める前に何か聞きたい事はあるか?」
 議長の水寿(みすず)がそう言うと、俺は少し手を挙げた。
「どうした析羅(さくら)会計」
「どうしようもない願いだとは解っているんだが・・・」
 ひっついてるコイツが鬱陶しい。
「席替えって出来んか、な・・・?」
 本当に鬱陶しいとしか言い様がない女、湯木邑鼎(ゆきむらかなえ)。
 お願いです、せめて、せめて隣は御勘弁を・・・(切実)。

  第十七話 でも結局は向かい側

「席替えは不可だが・・・さっき籤引きで当たったし、湯木邑、少し距離をとれ。と言うか書記としての仕事を果たしてくれ。」
 さっきから書記・湯木邑は俺にくっついて仕事をろくにこなしてない。
「えー、惚れたものはしょうがないじゃん。」
「ソイツを愛しているなら気遣いも覚えろ。物凄い憔悴してるから。」
 前略、以前の戦いにより湯木邑は俺に惚れたらしく、門下生として俺の家に居候中。無理強いで生徒会書記にもなった女。ハッキリ言って俺が最も苦手とする女のタイプに惚れられたのだ。
「ソレにそんなベタベタしてると過去にフラれた女子共全員を敵に回すぞ?」
 と紋火(あやか)。
「この学校滅茶苦茶な位陰湿な苛めを行う事で有名だから、特に女子が。」
 と信(まこと)。な感じで説得はするものの逆に奴の情熱を煽るらしく。
「大丈夫、きっと周りも二人の愛を理解してくれるわ!!」
「恋愛云々は後にして仕事をやらんかお前は」
 その後容赦ない水寿の竹刀での一撃が湯木邑の脳天を襲う。
「はぁーい・・・」

 本日の会議は「天界人」。つまり真久利(まくり)や湯木邑の事だ。
 聞くに彼女は12年前、このバトルに参加すべく天界から落とされた子供の一人らしい。しかもそう言うのが何人もいるって事だから余計に質が悪く思える。
 どうやら植木、ハイドンもその天界人に値するらしい(やっぱり人間じゃなかったか)。
 で、天界人には「神器」と言う武器があるらしく、ランクごとに一つずつ増える。(ハイドンみたいな)十ツ星神器「魔王」を持つ者はごく僅かだそうだ。
「そう言えばさ、神候補が昔こんな噂を耳にしたんだって。13,4年前バトル云々関係無しに赤ん坊を人間界に落とした家があるんだって。」
 ネグレクトかよ。

 と、まぁこんなグダグダで会議は終了し、各々の家に帰る。一緒の家に住んでいるし湯木邑よりも少し前に出て俺は早足で帰路に着く。
 土間に来ると靴が一足多かった。黒色のローファー。それだけで誰が家に上がっているのかが瞬時で理解出来た。
「あぁ 析羅帰ってたの?」
 台所からソイツは少し顔を出した。
 長身で蘇芳色の髪は肩まであり、胸さえ隠せば男でも通用する女の姿。一応制服で女と証明できるがな。
 ソイツの名は白冷彪音(びゃくれいあやね)、私立小倉学園中等部二年。家も割と近く小学校6年間はずっと同じクラス。言ってみれば「幼馴染」だ。又は俺が女を苦手となった原因の一つである。
 彪音は少し睨むように湯木邑を見る。湯木邑も負けじと睨み返す。
「あぁ、アンタがこの間から門下生として居候している湯木邑って奴?初めまして、アタイは彪音。以後お見知りおきを。」
(ベタベタベタベタひっついてんじゃねぇよ、このアマ。ソイツはアタイの遊び道具なんだよ!!)
「鼎よ、アンタとは一つ年上の中三。こちらこそよろしくね。」
(この子はアタシの将来の男よ、幼馴染だって言っても容赦しねぇぞこの野郎!!)
 何となく二人から謎の動物が見えてくる。おい、鍋の方吹き零れても知らんぞ。
「析羅君。」
 互いが睨み合ってる中、真久利が俺に話し掛けた。
「ちょっと話したい事があるんだけど、良い?」
 少し真剣な面付きで奴は客間に俺を呼んだ。

「貴方には未だ話してなかったんだけど・・・私はある目的があって神候補になったの。」
 ・・・?
「ある、目的・・・?」
「弟を探しているの。」
 弟・・・?奴は話し始めた。
「13,4年前、父がいらないと言う理由で人間界に捨てられた私の弟。神候補に選ばれ、私は弟を探すべく人間界に降りた。」
 そんな過去があったんだ。
「で?バトルを介して弟を探せと。」
 真久利は黙って頷く。
「まぁ・・・断るなんて言ったら家族にどやされるのがオチだしな、応じた。我武者羅にだが手掛かりだけでも掴みに行こう。」
 真久利は嬉し泣きをする。「有難う、有難う・・・」と、嗚咽混じりに言う。
「でも手掛かりはあるの。」
 あるのかよ。あるなら先に言ってくれ!!
 真久利はゴソゴソと服の中をあさる。出したのは一つのペンダント。
「弟が人間界に捨てられる前に、私は彼の首にコレと同じデザインの物を着けたの。ソレを持っている中学生が、恐らく私の弟よ・・・!」
 ペンダントを見て俺は背筋に悪寒を感じた。
 見た事ある。
 俺はすかさず客間を出た。
「あ!析羅君!?」

 着いた先は師父の部屋。
「何をしている析羅!!」
 見た事ある、見た事ある・・・!
 俺は師父の棚を少しあさる。
「・・・師父・・・!一つ問いたい事があります。」
 棚から何かを取り出した。
「俺は・・・両親、神剣市射(かばやいちい)と神剣浅見(かばやあざみ)の息子なんですか・・・?」
「何が言いたいんだ、析羅・・・」
 出来れば俺もそう思いたくない。でも・・・判ってしまった・・・!!
 棚から取り出したのは、一つのペンダント。
 真久利が見せた拵えと同じ、ペンダント・・・。
「この家で中学生は俺一人、教えて下さい、師父・・・!」
 俺が・・・俺が・・・
「俺は本当に『神剣析羅』なんですか・・・!?」
 真久利の弟だって事を・・・!!

  トゥービーコンティニュー・・