以前(と言うか三日前)俺は真久利(まくり)の弟=天界人(兎に角人間ではない)と言う事を知った。一応本人に話したが「やっと会えた」と手厚い抱擁を食らいそうになったがナイスタイミング、彪音(あやね)が「御飯できたよー」と部屋を訪れた。
 俺はと言うと?バケモノと称される種族でありながらも平気で日々を過ごしている。
 そりゃぁ最初は根暗で衝撃を受けた事はよく判るほどのネガティブ状態だったが、冷静に考えれば能力者も世間一般で「バケモノ」と称される立場なんだから今更云々言ってもしょうがない。
 と言う訳で夏休みです。

  第十九話 いよいよこの話も夏休みに

「そうは言ってもなぁー、お前の夏休みって・・・・・・」
 いきなり説教たれているのは言うまでもなく兄であり高校で数学教師をやっている蒼伊(あおい)・26歳。未婚、と言うか女癖が悪すぎる。
 「何か言ったか?」と言った感じで俺を睨んでいるが、完全無視。蒼伊は続ける。
「一に宿題二に部活、三四にバイトで五に休息!現代中学生でそんな夏休みの過ごし方ってアリか!?」
「何を言うか、生徒会で宿題を少し免除されてる分バイト(或いは内職)をして何が悪い。」
「俺が言いたいのはそんなんじゃなくてぇ〜・・・10代って言ったら青春だろ?女ナンパしたり海行ったりなんつぅかこう・・・、言えない事をしても大丈夫みたいな?」
「お前と一緒にするな、穀潰し。」
 穀潰し(ごくつぶし)・・・食事は人並みにするのに、仕事はしない人。
「ヒドイ・・・俺働いてるのに・・・!」
「その九割はタバコや女で消えていると思うが?」
 析羅(さくら)のセリフ一つ一つが蒼伊の身体に突き刺さった。
「だぁ〜ッ とにかく今日は遊べ!青春を味わえ!!コレは兄としての命令だ!!!」
 遂に蒼伊は涙目で俺に言い捨て、部屋から出て行った。部屋を出て行った途端俺は宿題のワークを取り出す。自分より上だと認めた者にしか従わない、ソレが俺・神剣析羅(かばやさくら)。

「・・・暇だ・・・」
 宿題も終え、内職も済み(仕事は迅速かつ丁寧に。ソレが俺・神剣析羅)、ハッキリ言ってやる事がない。何か落ち着かない。
 そう言えば俺って刹那主義だったっけ・・・。
 友人と呼べる者は生徒会の男子オンリーだし、かと言って一緒に遊ぶ事はない。たまに遊びに来ては頼んどいたバラエティ番組を見に来るぐらいだ(どんな人間関係だ)。
「・・・・・・」
 少し、外に出るか」

 と言う訳で少し遠い所まで散歩、と思ったが・・・
「・・・迷った。」
 忘れていた、俺は近辺とは何も関係がなくなると極度の方向音痴になると言う事を・・・!!よく考えたら交流会の時は地図書いてもらったな、バイトの時もタウンマップを手放していなかったし・・・。
 少しお腹の音がする。
「は「腹が減ったぞぉー!!!」
 は?
 妙な雄叫びが聞こえ、音を頼りに走ってみる。どんどん音は大きくなった。
「・・・な・・・?」
 デカ。
 何て言うか、そのー・・・角生えた犬のような鶏みたいな手足の巨大な未確認生物が人捕まえて微妙に憤っております。
 ・・・信(まこと)が見たら興奮しているだろうな(動物オタクの血が騒ぐぜ、みたいな・・・?)。
 そして捕まっていた人間は植木。久し振りと言いたい所だが多分(いや、確実に)忘れられているだろう(恐らく五段の君も忘れている)。
 聞くにデカブツ(植木曰く「ニワトリ」)は天界人を食らう(逃げた方が良いんじゃないか?)天界獣と言うものらしく、何か罪で地獄に囚われていたらしい。
 で、小林とか言う囚人に騙された。
 向かい側の男は「在り得ない」と言う表情で現状を傍観している。まぁ大半はビビるだろう。
 夏休みだと言うのに、久し振りの外出がこんなのってアリですかね・・・?

  トゥービーコンティニュー・・