第二話・神候補
「私、実は天界と言う所から来た天界人と言う者でして。」
 客間にお茶を啜る音がする。
「私含めて100人の神候補と言う次の神になる資格を持つ天界人は今、次の神になろうと競争しております。」
 20代後半かと思われる真久利(まくり)と名乗る女は煎餅を口に銜える。
「その為には一人の中学生に能力を与え、戦わせ、その中学生を優勝させなければなりません。」
「ふぅ〜ん・・・大変だなー(棒読み)」
 俺こと、神剣析羅(かばやさくら)はお茶を飲みながら適当に相槌を打っていた。
「私もブラブラと情報収集をしていたのですが、見つからなくて・・・ある日そのチュウガッコウとやらに忍び込んだのです。」
 犯罪だろ。
「そう・・・其処で私は貴方を見つけたのです。析羅君!」
「前回さん付けで呼んでなかったか?」
「(無視)とても素敵でした!あの瞬時に間合いを詰め、一本を取った所に私は感動し、近くの町に貴方について伺いました。遂に住所も手に入れ、門の前まで来たは良いが、体力が尽き果て、行き倒れていたのです。」
「俺が仕切りを越えようとした時には意識があったんじゃ?」
 真久利は知らないフリをする。析羅も煎餅を銜えてパキ、と良い音を立てて割る。
「析羅君、お願いです!能力を貰って下さい・・・!!」
 少量だが真久利は涙を流す。俺は急須に入っているお茶を湯飲みに入れる。
「・・・其処まで俺にこだわらなくても、他を当たれば良いだろう?それにお前には得があっても、俺には無い。ハイリスクローリターンで人が動くと思ったら大間違いだ。」
「勿論、参加した中学生には優勝した暁には空白の才が贈呈されます。」
「・・・空白の、才・・・・・・?」
 聞き慣れない言葉に俺は問う。
「才と言うのは才能の事で、空白の才とは、自分が求める才が一つ手に入ると言う権利です。」
 俺は二つ目の煎餅に手を伸ばす。
「・・・生憎俺は才能を求めた事が一回も無いんでな・・・悪いが他を当たって頂きたい。」
「・・・ッ」
「あんまりですよ兄様!!」
 客間の襖が勢い良く開く。その向こうにはランドセルを背負った少年がいた。
「志爛(しらん)・・・?」
 神剣志爛(かばやしらん)、析羅の弟。7歳・小学2年生。
「兄様が冷酷非道なのは重々承知ですが・・・」
「お前そんな目で俺を見ていたのか・・・」
「(無視)涙を流している女性にもそんな冷たい言葉で返すなんて、信じられません!」
 志爛は口元に手を置いて貰い泣きをする。
「そうだそうだ、この女泣かせ!」
 次に現れたのはスーツ姿のパッと見は真面目な男性。神剣蒼伊(かばやあおい)、析羅の兄。26歳・数学教師。
 そして最後には父親と祖父まで現れて俺にブーイングをする。
「〜・・・ッ だぁー!やりゃぁ良いんだろ!?やりゃぁ!!受けて立ってやる!!」
「有り難う!析羅君!!」
「流石です、兄様!」
『男だぁー!!』
 歓声みたいな声の中から、俺のある意味地獄の毎日が、始まるのだった・・・。

  トゥービーコンティニュー・・・