ステージには鬱蒼と生い茂る森が現れた。
「うわ、こりゃ凄いな。」
「あぁ、凄いな。」
 俺達は感銘を受けた。
「もう次回でこの話も30話に突入するのだからな」
「そこっ!?」

  第二十九話 サドと温泉好きと動物好きと自殺癖

「試合、開始!!」
 死角だらけの森で試合は始まった。
「って言われてもなぁ、こんな草だらけの所じゃ敵を見つける事も出来んわ。」
「そうですわね・・」
 相手・佐野と鈴子は困ったように言う。
「でもソレは相手も同じ事だろ?なら良いんじゃないか?」
「そ、そうですわね。そんな簡単に遭遇する訳・・・ !!?」
 気がつけば紋火(あやか)は鈴子に話しかけていた。
「な・・・何時からそこにいたんや!?」
「今しがた。いやーモバイル常備していて良かった良かった」
 そう言って紋火はモバイルを見せる。
「にしてもこんな森の中にいると・・・昔の事を思い出すなー」
 紋火は友好的に二人に話しかける。
「何度も山奥へ行っては縄を枝に下げて自殺図ろうとしてたっけ・・・」
 小声で(と言っても二人に聞こえる程度の音量だが)ポツリと紋火がそう言うと二人は引いた。
「あ、今のは聞かなかった事にしといてくれ。」
 いや、普通の人は聞き流せれないと思う話題だぞ?
「んじゃ、本番行きますか」
 相手の10秒間を・・・
「相手の1秒間に、変える能力ぁッ!!」
 即座に二人を蹴り上げる。
「言っとくがオレはスイッチ入っちまうと紳士じゃないんで、気をつけてな?」
 戦いを楽しんでいるかのように紋火は口元を綻ばせた。

「あぁ、なるほど。マリリンの能力を駆使しても引き分けに出来た訳だ。」
 観客席にいたマシューはマリリンに話しかける。
「えぇ、彼は私の能力を無効化する能力者・・・そして、レベル2に至っては私を負かす事が可能ですわ・・・!」
 悔しそうに、マリリンは声を震わせて言葉を紡ぐ。

「よく避けるなぁ。」
 能力を使っても二人のコンビネーションで避け、反撃する。
 が、ブーメランも爆弾も、彼は容易く回避する。佐野はレベル2を駆使しても、簡単に逃げられてしまうのだ。
 ふと彼は足を止め、顎に指を置く。
「お前等の手の内はよーっく解った。」
 そう言うと彼は右手を二人の前に翳す。
「相手の10秒間を相手の1秒間に変える能力・・・レベル2!!」
 途端に二人の動きは鈍くなる。
「!?」
「な・・・」
 即座に紋火は佐野の鳩尾目掛けて拳を振るう。
 殴った手は少し赤い。
「腹の辺りに手拭巻いてるのか。レベル2で相手の身体能力を四分の一にしても意味がない訳だ。」
 「おーイテテ」と赤い拳に息をかける。
「・・・が、コレで終わりだな。」
 紋火の一言で二人は目を丸くする。
「今までオレがただ逃げ回っていたと思っていたのか?違うな。オレは・・・」
 ガサ、と草の音を立てて血に塗れた水寿(みすず)が現れた。
「コイツの能力が使えるようにしたんだよ。」
 「んじゃあとヨロシクー。」と紋火は気だるそうに言って森に消えた。
「相手の仲間を・・・」
 相手の敵の姿に、変える能力。

 森となっていた木々はみるみる縮まり元の石造りの舞台と化す。
 森が消えると傷と火傷だらけの佐野、鈴子が気絶していた。
「!! 佐野・・・」
「鈴子!?」
「佐野、鈴子ちゃん!!」
 植木チームの面々がその惨状を目の当たりにする。
「第一試合・・・勝者、俊足閃光チーム!!」
「先ずは、一勝。」

「凄いわね。あの子達・・・斎(いつき)と如月(きさらぎ)の担当中学生だっけ?」
 神候補席では捺谷木斎(なつやぎいつき・それで一つの名前です)が二人に問いかける。二人は嬉しそうに頷いた。
「凄いでしょ?」
「美しい試合だった」
 如月の所だけはやけに華やかなオーラがある。
「コレで、俊足選考一点リードか・・・」

「では次のルーレットを回します。ルーレット・・・スタート!!」
 掛け声と同時にルーレットは回り始める。しばらくするとソレも止まった。
 戦いのジャンル:一対一 植木チーム:宗屋ヒデヨシ 俊足閃光チーム:白冷彪音(はくりょうあやね) 場所:草原
「! アタイか」
「オレー!!?」
 叫び声は空しく空気に消え、戦いは始まる。

  トゥービーコンティニュー・・