「植木チーム、植木耕助選手、森あい選手。俊足閃光チーム、神剣析羅(かばやさくら)選手、前へ!!」
念願の戦いの幕が開かれる。
第三十一話 鬼神を通り越して修羅と化す
「ず〜りぃ〜」
涙目で俺を睨み付ける信(まこと)。
「何で二対一ってのがあるんだよぅーこれじゃ俺活躍できないじゃんかぁ〜」
そんな事言われてもな。
「んじゃこうしよう、お前は植木にのみ攻撃して良い。その代わり五段の君には手を出すな?アレは、俺の獲物だ。」
そう言って荒野と化した大地に降りると、二人を見る。
悲願の戦いを行えるんだ、楽しみでしょうがない。
「試合・・・開始!」
一方植木サイド
植木とテンコは心の中で?会話をしている。
「そう言えばコースケ、何であの時神器出せたんだ?今神器の方はオレに封印されているのに・・・」
「説明の中にな、一ツ星以上の天界人は例え神器を封印されていても神器が使えるようになってるんだと。」
その内容にテンコは納得。
そう言う訳で試合開始。
先ず俺はペットボトルから少量の水を取り出し、能力で木刀に変えると、五段の君に渡す。
「?何・・・?」
「得物がないと何かと不便だろう?俺としては五段の者と戦えるし、実力をこの身で感じたいのだ。良くないのか?」
俺がそう言うと五段の君は呆れたようにこう言った。
「はぁ?アンタ、まさか・・・あの時の嘘未だ本気にしてんの?」
う、そ・・・?
「ヤバイ、今の言葉訂正しろ嬢ちゃん!!」
長い付き合いである紋火(あやか)は森に訂正を勧める。
訂正しなければ、カプーショ戦の様に鬼神と化す可能性があるからだ。
が、次の析羅の行動は、周りの目を丸くするものだった。
「・・・っあはははは!」
笑っている、普通に笑っている。
「まぁよくよく考えればそうだよなぁ!別に、キレる事は無いさ。人間誰もが一度は嘘を吐くものだからな!!それに植木には少し借りがあるしな、それでチャラにしてやる。」
ソレを見て俊足閃光側は少し安心する。
「一線、乗り越えたみたいだな。」
「いや、安心は出来んぞ?嵐の前の静けさの可能性は、十分にある・・・!」
水寿(みすず)の瞳には、未だに不安の色があった。
「そ、そうよねー。人間誰もが一度は嘘吐いた事あるものねー。」
ソレを聞いて緊張をほぐす森。ふと、何かに気付いた。
「アンタ・・・年上なのに背低いわね。」
近くに来て背比べを始める森、その一言に析羅の表情は鉄仮面と化した。
「「「「「「あ。」」」」」」
その場にいた俊足閃光、観客席で見ている真久利(まくり)、鼎(かなえ)は思わず声を上げる。
「小さい小さい、見た目も華奢だし。私でも勝てるかもー。」
「戻れ。」
「え?」
そう言われると森の手にあったはずの木刀が液体に戻る。
「誰が小さい?誰が華奢?誰が弱い?」
再び析羅の表情は豹変する。良い意味ではない。その目は間違いなく、憎悪の炎を激しく燃やすようなものだった。
まるで、修羅のように。
「殺す!!」
「え!?きゃあぁああぁ!?」
「森!!」
容赦ない析羅の一方的な殺陣が始まる。
「く、鉄!!」
「邪魔だ」
鉄の砲弾を一刀両断する。流石にそれを見ると周りはポカーンと口を開ける。
「俺達も援護するで、鈴子!!」
「ハイ!!」
佐野達も慌てて援護するが意味がなく、矛先は観客席に向く。
植木チームの三人がいる所に。
「液体を道具に変える能力、モード未使用鉛筆。余計な茶々を、入れんじゃねぇ!!」
投げた鉛筆は3人の頭部に直撃し、気絶する。
「佐野、鈴子!」
「ヒデヨシー!!」
液体から日本刀を作り出し、切っ先を森に向ける。
「次は・・・貴様か?」
瞳は黒く澱み、強大な殺気を帯びている。
「クソッ くろが・・・ !?」
「そう言えば、真久利。彼は無意識の内にレベル2を使っているって・・・どういう事だい?」
如月(きさらぎ)が意味深な事を言った真久利に問う。
「えぇ、無意識と言っても、今みたいにキレている時なんだけど・・・現に今も使っているわ。」
「「「「え?」」」」
その一言に4人は目を丸くする。
「彼のレベル2はね・・・」
「道具に囲まれた人は身動きも取れず、能力も無効化されるの。」
「な・・・!?」
(能力が、使えない!?)
何度挑戦してもゴミはゴミのまま、神器にも、木にもならない。
「やだ、動けない!!」
どうやら二人はいつの間にか彼の領域に入ってしまったらしい。
「止めだ。」
「・・・ん、大丈夫か鈴子、ヒデヨシ?」
しばらくすると気絶していた3人は目覚める。
「試合の方はどうなって・・・ !」
3人はステージを見ると仰天する。
其処はまるで戦場の跡の様に、血は飛び散り、析羅の顔や服にこびり付いている。
壁には散々攻撃されたかのように倒れている植木と森の姿があった。
「しょ、勝者・・・俊足閃光チーム!四次選考進出です!!」
「!? 植木・・・!!」
「あいちゃん!!」
その姿は鬼神の如く、その瞳は修羅の如く、その心は悪魔の如く、澱んでいる・・・。
トゥービーコンティニュー・・