制限時間は、12時間。
 少年は鬼気迫る形相で森を駆け抜ける。
 目指すは舞台の道。
 しかし、彼にも一握りの不安があった。その不安が彼の足を止める。
「・・・・・・神器無しで、奴に勝てるか?」
 少年の足を止めた一つの不安。
 が、悩む余裕は彼にはなく、再び、道へ向かって駆け出した。

  第三十五話 覚醒

「・・・ここが道か・・・」
 走って数十分、森を抜けると巨大な建造物がある。
 目の前には「C」と刻まれた入り口があった。
 少年が覚悟を決めて階段を上ろうとした瞬間、声がした。
「・・・い・オーイ、聞こえるか析羅(さくら)ー」
 右?左?後ろか?
 ・・・いや、違う。
 析羅は顔を上に上げ、星も瞬く夜空を仰ぐ。
 そしてその夜空に瞬く星を妨げる影があった。
 巨大な龍。そう・・・
「お前等か。」
 残りの俊足閃光の面々が龍に変身した信(まこと)に乗って現れた。地上に降りると3人降りた後、龍は人の姿に戻る。
「探したぞー?」
 いや、地上数十メートルで人は探す事は無理だと思うが。
「とりあえず上るぞ、まず上らないと参加権利は消えてしまうからな。」
 そう言って水寿(みすず)は階段を上り始める。他の連中も後について上り始める。

 長い階段を上り終え、道に着く。
「アノンは・・・いないな。」
「上っちまったしこの段差上がって行かんとな。」
 キョロキョロと辺りを見渡し、ルールを確認、作戦を練り始めた。
「道は二つ・・・二、三人に分かれてどちらかの道を進むか。」
 「と言う訳で二年三年で分かれよう。」と、勝手に水寿が決める。まぁ、反論は何一つないので(否、4人が彼の本性を知っている為恐ろしくて反論が出来ない)、三年組は右へ、二年組は左へ進んだ。

「いたぞ」
 しばらく道の段差を上り下りするとアノンを見つける。その時には李崩が気絶し、佐野、鈴子、バン、ディエゴスターの四人が結束してアノンと戦っていた。
 アノンはまるで楽しんでいるかのように傷つける。
 止めをさそうとした瞬間、析羅は思わず能力を使って奴等を守っていた。
「・・・アレ?」
「君は・・・」
 それでアノンは三人に気付く。バレたら仕方がないとばかりに段差を飛び降りて姿を現す。
「戦えない者に止めを刺そうとはどれだけ愚か極まりない奴なんだ貴様は・・・!」
「オイ人の事言えるのか?」
「アイツキレるとその時の記憶が綺麗に消えるから。」
 佐野のツッコミに対して彪音(あやね)が補足してくれた。
「それで?君は勝てるのかい?神器も使えないのに。」
 アノンは彼が気にしている所を言う。析羅は苛立つ様な目をしていたが、次第に落ち着き、首に下げていたペンダントに少し触れ、深呼吸する。
「勝てるかどうかは判らん、戦わずに勝敗は決められないからな。」
 再びアノンを見た時の目は随分と冷静だった。熱さを感じさせない瞳だった。
「それもそうだね、んじゃ・・・夢の為に死んで?」
「人間として・・・いや、天界人として!俺はお前に負けはせん!!」
 その瞬間、刀を出そうとしたら、別の物が現れた。
 そう、それはまるで・・・
「!!?」
 大砲。
 アノンもそれに驚いたのか、弾丸に直撃する。
「・・・ヘ?」
 その後大砲は彼の思ったとおり刀になった。
「い、今のは まさか・・・・・・」
 俺の、鉄・・・?
 己の力も、覚醒が始まった。

  トゥービーコンティニュー・・・